「マンガの王様」が生み出した傑作時代劇が今、蘇る!
『ゴルゴ13』作者も愛したクールな必殺仕事人『買厄懸場帖 九頭竜』

マンガサロン『トリガー』2016年10月11日 印刷向け表示
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買厄懸場帖 九頭竜KUZURYU (1)
作者:宮川輝
出版社:リイド社
発売日:2015-12-26
  • Amazon Kindle

 

 「水戸黄門の面白さは、決まりきった“型”にある」ということを聞いた。誰かがトラブルに巻き込まれていて、そこに水戸黄門一行が現れ事件を解決し、さっそうと去って行くというお決まりのパターンがあることで、人々は余計な驚きや変化を感じることなく安心して作品を楽しむことができるのだそうだ。
確かに多くの作品は「型」が出来上がっているかで面白さが変わってくるように感じる。現に今、空前絶後の大ブームとなっている新海誠監督の『君の名は。』も、ストーリー自体に特別新しい要素を感じることはない。どこかで見たことあるような設定の集まりとも言える。
だがしかし、それでも『君の名は。』が面白いのは、演出が秀逸であるとか、声優さんたちのいう要素はもちろんだが、何より「親しみやすいストーリー展開」にあるのではないかと思う。つまり、「王道」的ストーリー展開をする作品だからだろう。
今回紹介する作品も、一見『必殺仕事人』のようなストーリーかと思いきや、よくよく見れば『ドラゴンボール』や『ゴールデンカムイ』と同じ王道展開をする作品である

以下、この作品のあらすじをご紹介する。

 

「厄を引き受けるお代は九十両――高いでしょうか、命の代金が…?」
“売薬人”として諸国を巡り、“買厄人”として暗躍する男あり。その名は“九頭竜”―――
九つの頭を持つ竜の前金物を携えてこれを知る者を探す“売薬人”あり!
母の亡骸の下で生き残ったその男は他者の厄介事を引き受ける“買厄人”としても暗躍しつつ仇敵の手掛かりを探し続ける――!!

 

 『必殺仕事人』+『ドラゴンボール』な新・時代劇!

 この作品の第一のテーマは「復讐劇」である。主人公の目的は、自身が幼いころに殺された母親の仇を討つことである。なので、作中には終始重苦しい空気感があるし、主人公がやっていることも、いわゆる「傭兵」や「スパイ」のようなものなので、読んでいて「諸行無常」という印象を受けるようなストーリーだ。

 

 ただ、一見そんな印象を受ける作品であるが、よくよく読んでいくと、「収集」という王道ものとして鉄板の要素が含まれており、そこがストーリーのテンポをペースアップしていってくれる。「次はどうなるのだろう?」とページを読み進めたくなるのだ。
主人公が持つ、九頭竜の前金物。この九頭竜こそ、この作品のカギとなるアイテムだ。主人公が薬売りとして各地を旅するなかで、9つある九頭竜の彫り物を集めることになる。この王道要素があるからこそ、作品にエンターテインメント性を持たせ、より面白みを感じさせる作品になっているのだ。王道が好きな人でも十分楽しめるだろう。
そして、この作品は『仮面ライダー』や『サイボーグ009』の生みの親である、あの石ノ森章太郎先生の作品がもととなっている。そして、『ゴルゴ13』で有名なさいとうたかを先生もファンであり、自らリメイク版を書き下ろすほどの人気作でもある。華麗な剣技で次々とターゲットや刺客をバッサバッサと切り捨てる様子は、読んでいて爽快感がある。

 


また、マンガが始まったときからすでに主人公がかなり強いので、努力や修行する過程とかは描かれない。ザコ敵に苦戦などせずサクサクと物語が進んでいくので、話の展開にもスピード感がある。読んでいるときはきっと気持ちよく読み進めていけるだろう。
そして何より、リメイク版であるからこそ、ぜひオリジナル版、さいとうたかを版の九頭竜との違いをこれから今作を読む皆さんには確かめて欲しい。どの作品もコマ割りや演出、セリフが違っているので、まるで別の作品を読んでいるような感覚になることもある。読み比べることによって、一番好きな「九頭竜」をぜひ見つけて欲しい。

買厄懸場帖九頭竜 (1) (Shotaro world)
作者:石ノ森 章太郎
出版社:メディアファクトリー
発売日:1998-09
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  • 紀伊國屋書店
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買厄人九頭竜―さいとう・たかを時代劇セレクション (SPコミックス)
作者:さいとう たかを
出版社:リイド社
発売日:2007-10-09
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買厄懸場帖 九頭竜KUZURYU 2 (SPコミックス)
作者:宮川輝
出版社:リイド社
発売日:2016-08-27
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出版社:中央公論新社
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