これは「30禁」作品だ――人生に失敗?した還暦女3人の同居生活「ルームメイツ」

マンガ図書館 Z2016年10月06日 印刷向け表示
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  今回ご紹介するのは、近藤ようこ先生の「ルームメイツ」。ビックコミックで1990年代に連載されていた、言ってしまえば【古いマンガ】です。

 しかし、内容は、けして古くない! 理由は、「結婚」「離婚」「介護」「育児」など、誰しもが直面する悩みがテーマだからです。あなたが30歳以上なら、どストライクに共感できるでしょう。というか、むしろ「30禁」(=30歳未満はお断り!)というぐらい、年を重ねてから味わい深く読める作品です。一話一話が、心に沁みるんです、ほんとに。

 そもそも、主人公からして凄い。なんと、還暦の女性・3人です。しかも全員、どこかしら人生に「失敗」(?)したような要素を抱えています。そんな彼女達が、同窓会で再開して、アパートで同居を始めるところから物語はスタートします。

 主人公3人。右から、ミハルさん、時世さん、待子さん

 彼女たちの人生、一つ一つが、極めて面白いコンテンツです。もちろん、ハリウッド的な「エンターテインメント」ではありません。そうではなくて、ただ、じっくりと、落ち着いた雰囲気の居酒屋で、お酒を飲みながら耳を傾けてみたい「人生物語」という感じです。ここでは簡単に、3人の経歴を振り返ってみましょう。

キャリアウーマンの「時世さん」

 まずは時世さん。未婚です。いわゆる「オールドミス」「いかず後家」というやつです(この言葉自体が、死語?)。

 父や兄が戦死、という設定には時代背景を感じさせます

 彼女が抱えているコンプレックスは、やはり「結婚しなかったこと」です。一方で、彼女は小学校の教師として、自らを養ってきたという素晴らしい経歴もあります。彼女は、いわゆる「キャリアウーマン」――すなわち「仕事はできたが、結婚運には恵まれなかった」という女性の象徴として描かれます。こうした女性は、昨今、増えてきたのではないでしょうか。

 もう若さは戻らない。それを一人、噛み締めることもあるのです

 そんな時世さんに、恋愛相談をした若い女性がいました。時世さんは、親身になって話を聞いていますが、あるとき、感情がほとばしる瞬間が訪れます。

 それは若い女性が、恋愛のチャンスにも関わらず、つまらないミエから、告白しようとしない時でした。時世さんは声を荒げるのです。

 「あなただって いつかわたしみたいに 婆さんになるのよ!」

 「シワクチャになってからじゃ遅いのよ! 時間はとりもどせないのよ!」

 時世さんの思いは伝わったのか!? 名シーンの1つです

 そんな時世さんにも、ロマンスがやってきたりします。詳しくは、実際に作品をご覧ください。(文末に、全巻無料サイトへのリンクがあります!)

主婦の「待子さん」

 続いて待子さんの紹介に移りましょう。彼女は、見合い結婚をして、主婦として暮らして来ました。子宝にも恵まれ、幸せを手にしたようにも見えますが、彼女は一つの問題を抱えていました。

 待子さんは、おっとりキャラ。「平凡な主婦」を自称します

 それは、「定年退職した主人と一緒に暮らすのが、耐えられない」ということです。結婚できなかった二人からは「主婦ってぜいたくね」と皮肉を言われてしまいますが、待子さんはこう反論するのです。

 「好きでもない男と暮らす苦痛は、あんたたちには、わからないわ!!」

 

 そう、彼女は「家庭のために自分を犠牲にしてきた主婦」の象徴として描かれます。こういう女性も、世の中に多いかもしれません。

 衝動的に家出をした待子さんは、二人が住むアパートに転がり込んできます。それから、彼女の「自分を解放する」日々がスタートするのです。ホームヘルパーの仕事にも挑戦し、自立を目指す待子さん。彼女が生き生きとよみがえっていく一方で、離婚を切り出された夫は、とまどい、ひどく落ち込んでいきます。このあたりも、本作の重要な見所です!

 待子さんは、新しい一歩を踏み出しました

愛人の「ミハルさん」

 最後に紹介したいのが、ミハルさんです。個人的には、ミハルさんがイチオシ・キャラです。彼女はなんと、芸者置屋の養女をへて、「ダンナ」の「二号さん」になったという女性です。今の若い人にはピンとこない言葉のオンパレードですが、要するに、(おそらく金持ちの)男性の契約愛人になったということです。

 現在は、長唄を教えるお師匠さんとして生活しています

 彼女は、「愛に生きた女性」の象徴として描かれます。「仕事に生きた女性」「家庭に生きた女性」と来て、最後は「愛に生きた女性」。この、三者三様の描かれ方が、素晴らしいバランスであり、また作品に深みをもたらしています。

 ミハルさんは、ダンナのことを心から愛していました。待子さんのように、時間がたつと嫌いになる、などということはありません。むしろ、ダンナが亡くなった後も、その愛の記憶をいとおしく、大切に守っているようなところがあります。

 芸者あがりの色っぽい愛人――というと、世間は色眼鏡で見るかもしれませんが、彼女の全身を貫いているのは純愛なのです。

 お正月に、愛する人は本宅で家族と過ごしている。その寂しさをかみしめるのが、愛人の生き方です

 個人的に印象に残ったのは、ミハルさんの知り合いの男性が、ダンナが亡くなった日のことを回顧するシーン。当然ながら葬式がありますが、それを取り仕切るのは本妻や、本宅の家族たちです。ミハルさんは愛人という立場上、その場に足を踏み入れることができません。

 そのとき、ミハルさんはどうしたか?

 「立場上 通夜にも葬式にもいけず」

 「ひとりで家ん中で喪服着て…」

 

 愛する人を想い、一人で家で喪服を着る。なんという切なさ……! こんなことがあるんだ、と、どこか社会勉強にすらなります。

 そんなミハルさんは、作品終盤で自分の出生の秘密について、知っていくことになります。ここは大きな山場なので、ぜひ実際に作品を読んで確認して下さい!

 「ルームメイツ」は現在、「マンガ図書館Z」で全巻無料公開しています。家族とは何か?そして、女の人生とは何なのか。様々なコンプレックスを持つ人間が、そこから解放されていく、素晴らしい名作です。人は、60歳になってからも、再び輝き出すことがあるんだな……と、そんな希望に満ち溢れています。興味を持たれた方は、ぜひ下リンクをクリックして下さい。

 www.mangaz.com/book/detail/127351

(マンガ図書館Zで全巻・無料公開中!!)

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