これぞ男子版『タラレバ娘』!恋と性欲と人生の悲哀を描いた名作『妻をめとらば』

佐伯 英毅2016年11月08日 印刷向け表示
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先日『SCOOP!』(主演:福山雅治、監督:大根仁)を観て、その面白さに感動した帰り道。大根監督のブログを読んでいたら、『妻をめとらば』という漫画がブログで「出てくる女出てくる女の描写がいちいち素晴らしい。」と絶賛されていた。(http://blog.livedoor.jp/hitoshione/archives/50794684.html

『モテキ』や『恋の渦』を撮った大根監督がそこまで言うとは!と思い、気になったので読んでみると、登場する主人公の恋人・愛人・セフレの数が多すぎることに驚いた。そして確かに、でてくる女性と恋の描写の生々しさが、胸にぐっと刺さる。社会人の恋性欲をリアリティたっぷりに描き、そこから人生の悲哀を描いたのが、この『妻をめとらば』だ。

妻をめとらば (1) 結婚への第一歩
作者:柳沢 きみお
出版社:CoMax
発売日:2016-05-31
  • Amazon Kindle

  主人公は、高根沢八一(やいち)。西北大学(おそらく『都の西北』が校歌に入ってる大学のオマージュ)を卒業し、大手証券会社に入社するところから、物語は始まる。入社してから、周りの先輩が、女装癖あり、SMバー通い、風俗狂いの果てのインポ、など荒れまくっていることに驚いた八一は、結婚相手となる恋人を探して安定を目指す。
彼は、「妻をめとらば 才たけて 見目うるわしく 情あり」という一句を胸に、「まだ見ぬ理想の相手」を求めて生活する。

 

おや、恋の予感…♡
と思ったあなた。甘い!

こんな一目惚れ、全く上手くいかない。
『妻をめとらば』で描かれる、
八一の「社会人の恋愛」は、
少女漫画のように上手くいかないのだ。

作中、八一は恋愛において、何度も二択を迫られる。
刺激か、安定か。セフレか、恋人か。恋愛か、結婚か。
そして、毎回どちらも中途半端に追い求めて、二股したりキープしたりして、ことごとく失敗する。迷いを持ったまま複数人数と恋愛することほど、愚かなことはない、と八一の人生を通して何度も描かれる。また、八一だけでなく相手の女子も、たいてい複数人と恋愛していたりするところが、この漫画のリアルなところだ。

また、色んな立場から、八一に「結婚とは何か」という答えが語られ、その結婚観によって彼が翻弄されたり悩んでいくのも、この漫画の醍醐味だ。たとえば、八一がナンパして付き合い始めた人妻が放った言葉は、かなり激しく八一を動揺させる。(HIPHOP風に言うならばパンチライン)


また、くたびれた先輩男子社員たちは、
「結婚とは何か」に対して、
どんより重たいワードで語る…。

「結婚は墓場ではなく地獄
「結婚は男と女の戦場の日々」
「結婚は老後に孤独にならないための保障
「結婚は女の中に棲む夜叉と一生付き合うこと」
「結婚は男を誑かして参加させる女の巣づくり
「結婚は体がバラバラになるくらい重くてゴツい

このような生々しいセリフが、
『東京タラレバ娘』のように、
読んでる側えぐりにえぐってくるのだ。
そして、八一は、女子高生から人妻OLまで、
数々の女性と恋に耽り、ときに酒に溺れ、
ときにストーカーになったり(!)して、

身体を壊し、孤独を感じながら、30歳を迎える…。

老け方がエグい……。
限りなくリアルに老けていて、
もうビジュアルが別のキャラのようである。
ちなみにこの主人公、
なぜ、八一、という名前だか分かるだろうか。
作中でも触れられているが…
九九(苦苦)=81だからだ。
凄いネーミングだ。
八一が恋と人生に、苦しみに苦しみぬいた結末は、
壮絶すぎるので、ぜひ、読んでみてほしい。

全巻Kindle Unlimitedに入っていたので、
登録している方は、ぜひこの機会に一気読みをどうぞ。

妻をめとらば (1) 結婚への第一歩
作者:柳沢 きみお
出版社:CoMax
発売日:2016-05-31
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妻をめとらば (2) からまわりの愛
作者:柳沢 きみお
出版社:CoMax
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妻をめとらば (3) ワンサイドラブ
作者:柳沢 きみお
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妻をめとらば (4) ドロ沼の愛
作者:柳沢 きみお
出版社:CoMax
発売日:2016-05-31
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妻をめとらば (5) 恋の袋小路
作者:柳沢 きみお
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