#真田丸 が面白いならこれも楽しい!『へうげもの』古田織部の「ここに至るまでの道」

菊池 健2016年11月16日 印刷向け表示
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 大河ドラマ「真田丸」も大阪冬の陣に至り大詰め、ここ数週間は、超絶キメ台詞からの異例の演出により、Twitterで話題になり過ぎて演出そのものがニュースになってしまうなど、大変な盛り上がりを見せております。

[いつも、KII-COさんのイラスト楽しみにしてます。毎週RTしてます。]


また、望楼から大阪城前に並ぶ徳川方大軍勢の中に、自軍同様真紅の部隊「井伊の赤備え」を見つけた幸村が「あちらにも、ここに至るまでに物語があろう」という、来年の大河ドラマ「おんな城主 直虎」(井伊家の物語)への振りとも取れるセリフもあり、これまた話題となりました。

真田の赤備えも井伊の赤備えも、元は武田四天王筆頭と呼ばれた山縣家の赤備えを引き継ぐものです。
この辺り、どこもかしこも脚本家三谷幸喜さんの演出はコニクイことこの上なく、歴史好きにはたまらない日曜の夜が続くわけです。

 

数寄の道で大名まで立身出世した、不思議な男の戦国アナザーストーリー

さて、そんな「あちらにも、ここに至るまでに物語があろう」ことは、なにも真田と井伊の関係だけではありません。
日本の戦国時代終焉とも言える、大阪の陣に至るまでの物語の中には、彼らが繰り広げた戦いの歴史とはまるで違う、数寄による戦いで、世に大きな影響を与えた古田織部という男がいました。

古田織部がどんな男か語る前に、「信長の野望 創造 戦国立志伝」(シリーズ最新作)における彼の能力値を見てみましょう。

統率(拠点防御力)18、武勇(攻撃力)29、、、弱い。弱いです織部。しかも、なんかちょっと顔が良くない方向にニヤけております。

 

へうげもの(22) (モーニング KC)
作者:山田 芳裕
出版社:講談社
発売日:2016-06-23
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前置きがだいぶ長くなりました『へうげもの』のお話です。「ひょうげもの」と読みます。

主人公古田織部は、第1話では織田信長の使い番という、戦場における連絡係であるところから始まります。前線で先頭に立って戦う役割ではなく、若干パシリっぽいですが、実は手柄を立てた人が付く名誉の仕事です。

でも、実際の織部は信長の野望のパラメータどおり、そんなに強い人ではありません。にもかかわらずどんどん出世していきます。なぜか、、、実は、織部には交渉術という特技がありました。調略(敵を説き伏せ、味方につけること)においては、稀有な才能を持っていたのです。

とはいえ、かっこよく人を説き伏せるばかりでもなく、数寄ものの証たる「茶器」を用いて相手を篭絡したり、時によっては大金時(まぁあれです。)を活かして、文字通り寝技で相手を口説くことが得意技だったりします。誰もが怖がる信長すら、大爆笑させるという、別の意味の才を持つ奇貨と言えましょうか。

千利休に師事し、信長の死後、秀吉に仕え、家康の時代には「御茶道頭」という、茶の世界の大臣のような地位に上り詰めます。
その間、驚くことに、戦場における槍の武功はほとんどありません。それにもかかわらず、国持ち大名にまで出世できたのは正に数寄、茶の湯の力でした。

織部には沢山の弟子や、茶の友がいます。
代表格は細川忠興、織田有楽斎、伊達政宗、佐竹義宣、2代将軍秀忠などなど、堂々たるメンバーです。
この辺りは、もちろん彼の立身出世へ大いに影響を与えています。

[引用:『へうげもの』 (モーニング KC)山田 芳裕 ]
家康公の茶席では、毒見の銀扇を茶碗に被せる緊張感。

武功がないのに出世する織部の特異点は、数寄に対する強い欲望でした。数寄者といえば茶道に明るいと説かれますが、織部のそれは市井の雅に高貴な茶道ばかりではありません。

むしろ、欲望に忠実であることを良しとして、人の業を認め、もがき苦しみながら、最後に人を笑わせる。「へうげもの」(読み:ひょうげもの)たることを究極とする考え方です。

そうしたわけでか、織部の行為は時にもうわけがわかりません。

[引用:『へうげもの』 (モーニング KC)山田 芳裕 ]
対幕府剣術指南役戦


真田丸は、戦国時代に真田家の立場に影響することだけを作品に盛り込み、他をばっさり切ったことが、新たな面白さを示しました。真田独自の戦国アナザールートの趣です。

『へうげもの』は、数寄武将古田織部の目線から見た、戦ばかりではない戦国時代の駆け引きを中心とした物語です。戦のシーンもありますが、それが全てではありません。

また、若き日に信長へ仕え、戦国3傑の常に近くにい続けた織部が、斜めにこの時代を評し、泳ぐことは、歴史に新しい光をあてました。
全ての歴史作品は、ある意味日本の戦国時代のパラレルワールドとも言えるかも知れませんが、数寄者の観点から新しい物語を紡いだのが、本作と言えましょう。

 

今回『へうげもの』を推す、もう一つの理由「大阪の陣」へ続く「ここに至るまでの道」

冒頭にも申しましたが、真田丸はクライマックスに入り、大阪冬の陣の真っ最中ですが、現在の『へうげもの』も正にそのあたりです。

[引用:『へうげもの』 (モーニング KC)山田 芳裕 ]
俺たちの受信料で作られたと話題になった、例の出丸。

大河ドラマは、これから年末に向けてクライマックスを迎えます。
『へうげもの』の単行本も、大阪冬の陣が終わり、夏の陣がこれからというまさにシンクロする丁度良いところなのです。

真田の歴史から戦国時代に興味が強くなった方にも、大河完結後に「丸ロス」状態になってしまって、何を楽しみにすれば良いか分からないという方にも、次の読み物ということで『へうげもの』をおすすめいたします。

 

 へうげもの最新刊23巻は、12/22発売予定です。大河も終わって、同じ頃にこちらも大阪がクライマックスを迎えていくという、正にぴったりのタイミングです。

へうげもの(23): モーニング
作者:山田芳裕
出版社:講談社
発売日:2016-12-22
  • Amazon
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  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

 

選書委員をつとめさせていただいている「これも学習マンガだ!」でも、『へうげもの』を選ばせていただきました!

 

 

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