全ての「おっちょこちょい」と、その「周りにいる方」に贈る。『マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド』 --マンガでわかるは伊達じゃない。当事者じゃない人にも良くわかる。--

菊池 健2016年12月01日 印刷向け表示
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マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド
作者:福西 勇夫
出版社:法研
発売日:2015-11-18
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 私は自他共に認める「おっちょこちょい」です。「おっちょこちょい」こそ我が人生と言っても過言ではありません。

あまりにおっちょこちょい過ぎて、失敗を繰り返して深刻な悩みを抱え、人生の中でいくところまでいってしまった黒歴史も多々あります。今はそのことを受容し、それなりに落ち着いて暮らしていますが、そんな時に、このマンガと出会いました。

10年前、いや20年前に出会っていれば、その後の人生も変わったのではないかと思いながら、全てのおっちょこちょいと、そしてその周りにいる「なんでこの人、こんなことも出来ないんだろう?」と思ったことがある人に贈ります。

 

おっちょこちょいを研究してきた人生

ここ数週間、SNS上でこんなエントリーやマンガを見かけませんでしたか?

このマンガを見て「自分のことだ!」と思った人もいれば、「これってあの人みたい」と思った人もいることでしょう。もうちょっとテキストによると、こんなまとめも話題になりました。

なんかキテますねADHD。私はこれを見て、いつか来た道と思いながら、改めて自分を振り返ることが出来ました。

 

もう10年以上前、人生で最も忙しく働いていたであろう頃、自身をADHD(注意欠陥多動性障害)の類系、ADD(注意欠陥障害)ではないかと考え、メンタルクリニックに通ったことがあります。

当時、ITベンチャーで夜も昼も休日もない生活していた私は、失敗を繰り返し、あまりの自分の不甲斐なさに息も絶え絶え働いていました。特に致命的だったのは、大事なことや、人と話したことをすぐに忘れてしまうことです。そういうことは前からあったわけですが、ある時期よりエスカレートしていました。

ホームで電車を待ちながら、あらぬことを考え、思いとどまったこともあります。あまりに失敗が続くため、自身を疑い色々調べたところ、ADHDというものに行き着きました。

自分は病気なのかと、とりあえず都心のメンタルクリニックに通い始めましたが、先生は毎回のらりくらりと私と話し、はっきりしたことを言ってくれません。数ヶ月が経ち、なんだかよくわらないままも通院が終了となりました。丁度その頃、仕事も少し落ち着き、気持ち的にも平静になっていたと記憶しています。

最終日、結局私の診断はどうなんだと先生を問い詰めました。そこで先生から衝撃の言葉が。

「確かに菊池さんは、人よりちょっとおっちょこちょいですね。診断書?冗談言っちゃいけないよ。」

お、おっちょこちょい!
あんなに悩んで通院までしたのに、おっちょこちょいorz

先生いわく、本当に疲れたりすると、人はその特質の中でも良くない面が増幅しやすいもの。仕事で過労がたたり、おっちょこちょいが増幅したのは確かです。

おっちょこちょいにも程度があって、強まり過ぎると、それが注意欠陥障害に近い状態になることも確かです。つまり、両者は地続きにあります。そして、ADHDを研究すると、自分の特質を学ぶことになることも理解しました。対処も一緒です。

以来、私は、ADHD博士のごとく、いろんな本を読みました。そんな中でも、特筆してわかりやすいのが、今回紹介する本書です。

 


どうして自分は?どうしてあの人は?
マンガのストーリーテリングとキャラクタードリブンが、解説書としてこれ以上活きるものはない。 

まずは、彼の中で起きていることを見てみましょう。

[引用:マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド(法研)福西勇夫,福西朱美]

ありませんか?見たことありますでしょう??ある意味誰でもあるかも知れませんが、煮詰まった本人の心象風景は本人にしかわかりにくいものです。

最後のコマの吹き出しが沢山のっかる表現、マンガならではなのですが、本人にとってはこうとしか表現できないことを、代弁してくださいました。マンガの表現を正に活かすものといえると思います。

でも、意外と人生悪くなかったりもします。こんな見方も出来たりして。

[引用:マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド(法研)福西勇夫,福西朱美]

マンガにもありますが、私も幸いにして、友達には恵まれました。おっちょこちょいには、人に愛される瞬間や、初対面の人に物怖じせずに接することが出来るという特徴もあります。というか、友達や家族、仕事の仲間、私を拾ってくれた妻がいなかったら、絶対に今のような仕事も暮らしもは出来なかったと思います。

落ち込むこともあるけれど、私は元気です。周囲の皆様のおかげです。

私の場合は、長い時間かけて本を読んだり、自分や他人を観察し、人に助けられ、いろんなことに気づくことができました。でも、このマンガは一足飛びに、見事に私のたどってきた道を解説してくれました。

そして、私が長い時間をかけてみつけてきた、おぼろげながらに見えてきた現象を、「決定的瞬間」と題し、見事に説明してくださいました。

[引用:マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド(法研)福西勇夫,福西朱美]

そう、前もって対処をする必要があるのです。マンガや図解がないならば、自分に起きていることを抽象化して、原因と対処を考える必要があります。
最後の2コマ「場当たり的に、地雷を考えずに行動すること。」「いつも人に、こっちだよ!と助けてもらうこと。」この2つは、本当にそうだと思うのです。

逆に言うと、これが出来ないから同じミスを繰り返すのです。人によってはこれが当たり前というか、そもそも人生とはこの「ミス→反省→改善」の終わらない繰り返しと言えようとも思います。

その為、日々これが出来ている人には、これ以外にどうものごとを考えれば良いか判らないくらいの話と思います。しかし、それが言葉に出来ず上手く出来ない判らないが故に「おっちょこちょい」なのですよ、皆様。

そして、そんな悩みを抱える人間が、上手く生きるには、周囲の助けが命綱です。難しいのは、負い目を感じて生きている人間が周囲に助けを求めることです。

そしてそのとっかかりは、そもそも周囲に自分はがどう見えていて、具体的に何を頼めば周りは答えてくれるのか知ることです。まずは自分を受容することです。そこが難しい。

[引用:マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド(法研)福西勇夫,福西朱美]

そうして、自分の特徴を認め、周囲との関係を作り、自分の役割を作っていくことが大切です。なにも後ろめたいことばかりではありません。

この本の更に良いところは、悪いことばかりではない、おっちょこちょいがその特質を活かして成功できる事例も示してくれています。救いです。救いはあるのです。

[引用:マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド(法研)福西勇夫,福西朱美]

この、最後にポソっと「いつもは無理です」と言ってる辺り、本当に秀逸です。えぇ、いつもは無理です。 中段の「ちょっと間違いがあるけど、それはフォローします。」など、もーそれどんな天使?って感じです。

私の人生の中にも、語り尽くせないくらい沢山の失敗の中に、ほんの一部、普通の人ならやらないようなこと、短時間に実行できてしまったビジネスや取り組みがあります。もしそこだけを選んで見せたら、みんな私という人間を勘違いしてしまうのではないかというくらいに。

これらも含め、ほかにも、良いところが漫画化されています。
・発想豊か(はまれば)
・短期に集中力が働く(火事場こそ、我が活躍の場)
・新しいものをすぐ覚える(ただしざっくりと)
・土壇場に強い(あんまり準備してなくても、プレッシャーを感じにくいがゆえに、本番でなんとかしてしまう。)

芸術家や研究者、意外に起業家、営業マンにも求められる気質かもしれませんと、本書にもとかれています。

 

改めて伝えたい。本人にも、その周りの人にも。 

この心象風景の描写が秀逸です。

[引用:マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド(法研)福西勇夫,福西朱美]

繰り返しになりますが、追い込まれた側の心象風景は、なかなか本人以外には理解できません。上にあげたページのスクリーントーンによる周りに靄がかかるような気持ち、これがいかに当事者の気持ちを捉えているか?マンガで的確に表現されているか?長く屈託を抱えてきた私にとっては、感動的ですらありました。

確かに世界は暗く霞み、足下は小さな孤島だったかも知れません。

[引用:マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド(法研)福西勇夫,福西朱美]

漫画化された風景は、本人はもちろん、その人を助けたい。あるいは、その人との付き合いに苦労をしている全ての人にも、考え方を示してくれています。

改めまして、本書を、全ての「おっちょこちょい」と、その「周りにいる方」にお贈りしたいです。
このレビューでは要点を紹介しましたが、多くの様々な救い(マンガによる具象化、抽象化、言語化)が本書には詰まっていました。是非手にとって読んでいただきたいのです。

そしてやっぱり、絵と演出と構成と台詞で、自分だけではなく人の気持ちまで的確にあわらすことが出来る、マンガって素晴らしいと思うのでした。

 

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