相手のことを想うあまり、本当のことを言えなくなって優しい嘘をついてしまう。『とつくにの少女』

関段 曜2016年11月26日 印刷向け表示
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一般的には、嘘はついてはいけないとされている。
「嘘つきは泥棒の始まり」なんて言葉もある。
イソップ寓話でも、常日頃から嘘をついていた少年は最後には信用されなくなってしまった。
 

確かに嘘をつくことはあまり推奨されることではない。しかし「優しい嘘」というように時として嘘をつくことが必要とされることもある。それは相手にとって真実を明かすことでとても傷ついてしまうことであったり、長い目で見ると嘘をついたほうが案外よかったりすることだ。
 

たとえば、親友Aが友達Bと付き合っていたとする。自分はそのことを知っていて、AがBを心底愛しているのも知っている。しかしある時自分は見てしまうのだ。Bが同じく友達のCと一緒に出かけているところを…。二人の雰囲気からしておそらくBとCは好き合っている。自分はその場を足早に去り、Aには黙っていようと決める。
そして後日、Aと二人でランチを食べている時、Aが「もしかしたらBが浮気しているかもしれない、何か知らない?」と自分に問いかけてきた。BとCの姿を見た自分は、果たして正直に言うのか?それとも優しい嘘をつくのか?
 

優しい嘘をつく、という回答をするのが今回紹介する『とつくにの少女』という作品だ。
少女を想うあまり、本当のことを言えない人外の「せんせ」。
とつくに(外つ国)でせんせと暮らしている人間の少女の「シーヴァ」。

『とつくにの少女』第1巻より

人外であるせんせは、内と外の二つの国にわかれているなかの外の者で、異形な姿をしているが心のうちは優しく、シーヴァをとても大切に思っている。
しかし、シーヴァとのやりとりのなかでも直接触れる描写は一切ない。それは、外の国の者には直接触れると呪われてしまうとされているからだ。
大切に思っているのにも関わらず、手を繋いでやることも頭を撫でてやることもできない。そしてそれ故に、本当のことも言えず、優しい嘘をついて悩んでしまう。穏やかで優しくも残酷な時間が過ぎていく。
 

絵本のような独特な雰囲気の中で描かれる二人の優しい嘘の物語。
二人の未来が気になる方はぜひ手に取ってみてください。

 

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