読書にハマるきっかけをマンガを通じて与える、という驚異的な離れ業をやってのけているのにあまり知られていないようなので、再度レビュー書いた 『バーナード嬢曰く。』

山田 義久2016年11月25日 印刷向け表示
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バーナード嬢曰く。: 3 (REXコミックス)
作者:施川 ユウキ
出版社:一迅社
発売日:2016-10-27
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タイトルの通り2回目のレビューです(初回はこちら)。読書家に憧れるも読書するのがめんどくさい高校生、町田さわこが図書館でガチな読書家の友人と読書についてのこだわりをぶつけ合うコメディなのですが、最近出た新刊(3巻)読んでも本当に読書好きになるきっかけをくれるおもしろかく深い良作だな~と思い、またレビュー書いた次第です(ちなみに最近アニメ化されています)。

昨今ネット社会は文字社会とはよくいったもので、ブログやFacebook、TwitterのSNS、またLINE等のメッセンジャーでも、核となる情報は文字。”活字離れ”なんてどこの絵空事やねん!ってくらい大量の文字情報が日々目の前を通過していきます。

そして、文字情報に強い人は、その人達同士で高速で質の高い情報を交換しあっているような。とはいえ、彼らは別に他者を遮断したり、情報を隠しているいるわけじゃなく、むしろ超オープンに情報を発信・交換しています。しかし結局反応するのはリテラシーの高い人だけなので、自然にそうなっている感じです。そして、まぁ、いわゆる高所得者層もそのあたりに集中している模様かと。

で、個人的な見積ですが、そういった人々の9割以上が読書家です。というのも本って、バカみたいにコストパフォーマンスが高い商品なのです。自分で文章書いてみるとわかるのですが、書くのにやたら時間もかかるし、実名で表に出すなら適当なことは書けない。著者が長い時間と熱意をかけた精度の高い情報が数百円から数千円で買える。このギャップを情報感度が高い人が無視するわけがないのです。

ただ、読書ってハマるきっかけって本当に難しいと思います。他に面白いものが溢れるなか、あの膨大な文字情報に立ち向かってみようってなかなか普通思いません。読書家が読書家になったケースで一番多いものは「両親が読書家だった」。また次点あたりが「あまりに友達がいなく暇だった」でしょうか笑。

しかし!この『バーナード嬢曰く。』は良質のきっかけを、両親が読書家でなく、友達がいっぱいいる人も含めて万人に提供してくれる本当に稀有なマンガなのです。

読書の楽しさって多面的で、よくあるただ「読んでみておもしろかった」だけでは、まったく伝わらないと思うのです。『バーナード嬢曰く。』は本当にその辺のツボをうまくついていきます。

そもそも、読書ってやたら時間とエネルギーを使います。だからこそ、同じ本を読み終えた人同士が自分の感想、理解を共有するところに無上の楽しみがあります。ちょうど同じ山を登り切った登山家同士が頂上で語り合うように、ちょっと排他的というか特権的なちょっといやらしい感じを共有して内輪で楽しむ。”作品を正確に理解した”という理詰めの達成感より、そんなちょっと人にはいいずらい感情共有の方が楽しみの核だったりします。

(出所:3巻 インスタグラムで読書家であることをアピールするためにド嬢が出した答えがロック)

また、読書って文字情報しかないぶん作品内の世界観の想像を読者側にゆだねられています。これがマンガと違うところで、マンガは作者がプロの作品としての世界観を明示してくれますが、読書の場合は読者の想像に委ねられています。だから、読者の主観や今まで経験はもちろん、その本をどんな環境で読んでいるかまでモロに影響を与えるのです。だから同じ本でも想像する世界観は読者によってまったく違うし、逆に読者同士でその”違い”を検証しあう楽しみがあるのです。そこにはこだわりや思い込み、そして歪みや偏見も混ざるので時に激しく衝突したりするのも面白かったりします(少なくともはたから見ている分には)。

(出所:3巻 「特別な状況で読んだ本は特別な本になる」は名言)

さらには、物体としても本というのはおもしろくもあったりします。よくよく考えればあんなに大量の紙を閉じた重いものを持ち歩くなんて非合理そのもの。しかし、読書家というより本マニアにとって本とは、開くことで自分だけの世界に没頭できる”扉”に近いものなので、表紙のデザイン、使われている紙の質感、紙やインクの匂いまでも愛おしく感じてしまう(たとえ電子書籍もかなり利用していたとしても)。。。内容をすっとばしてそんなところにもこだわりを持って楽しんでいたりするのです。

と、このような読書の多面的な魅力をおもしろおかしく、そして深く表現しているのが、この『バーナード嬢曰く。』なのです。もちろんその深みを作っているのが、作者の方が大変な読書家であるからで、巻末の参考文献がこの3巻だけでも60冊近くあります。紹介されている本、本当に読みたくなりますよ。

(出所3巻 ある意味本作のおもしろさを集約する一言)

作中で紹介されたSF一冊読んでみて読書にハマったとか本当にありえる話だと思います。本を読むきっかけがほしい方に超絶おススメ!

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