美人編集者とエロマンガを描く。「それなんてエロゲ?」な作品が、なぜちょっと泣けるのか

マンガ図書館 Z2016年12月08日 印刷向け表示
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 本日、自信をもってオススメするのは、「ハナムラさんじゅっさい」です。2010年頃に会員制サイトに投稿された作品ですが、今ではWeb上で無料公開されて、全巻読むことができます。(※文末に無料サイトへのリンクがあります!

 まず目につくのは、圧倒的インパクトのある、エロい表紙。18禁のアダルト作品か…? と思わせておいて、さにあらず。作者の実体験をベースにしたラブコメであり、かつ、30歳前後のジタバタする社会人の気持ちも織り込まれた、ストーリー面でも「読ませる」作品です。

 

 この作品、筆者も大好きなのですが、世間でも高く評価されており、そのマンガアプリはApp Storeで1位をとったこともあるという名作です。なぜ、面白いのか? を考えてきました。

その1.展開が奇抜!でもちょうどいい

 本作の主人公・ハナムラは、売れないマンガ家です。連載は持っていなくて、でもマンガ家のアシスタントとしては重宝されるぐらいの、微妙なラインの実力です。このまま夢を追いかけ続けるべきか、本人も迷っているうちに、ついには交際している彼女にも、見切りをつけられる始末。

これが主人公、ハナムラ。新人コンペにも落選してしまいました

 そんな彼が心機一転、はじめた仕事が、携帯向けサイトにコミックを描くという仕事でした。聞けば、担当編集者は女性とのこと。「美人だったらどうしよう。仕事そっちのけで惚れてしまう!」と、わけの分からない心配をしたハナムラでしたが、待ち合わせに現れたのは……まさかの美人編集者!

 

 そう、この女性編集者こそが、本作のヒロインである白井理沙です。しかしまだまだ、ハナムラの驚きは止まりません。この白井さんが描いて欲しいというマンガが、なんと「エロマンガ」なのです。実はこれ、携帯向けのエロマンガサイトの仕事だったのでした。

 さあ、「美人編集者」と打ち合わせをしながら、「エロマンガを描く」という、まさに「それなんてエロゲ?」……な生活がスタートします。もちろん、エロゲではありませんから、すぐに女性が主人公に惚れて、脱ぎだすといったような、安易な展開はありません。普通に、2人でお仕事をします。このように、奇抜でありながら、読者が置いていかれないようなラインの設定が、まず絶妙なのです。

その2・白井さんが、無防備すぎる!

 続いて、この作品の「核」をなすのが、ヒロインである白井さんの魅力です。明るくて天然、ナイスバディでありながら無防備であり、「これはちょっと、誘ったら、いけるんちゃうか」という雰囲気を醸し出しています。これがいい。

 一般にヒロインは、おしとやかなお嬢様でも、男勝りの強気キャラでもいいわけですが、ハナムラのような「押しの弱い」男性が恋心を抱く相手としては、白井さんのキャラは最適といえます。明るく笑いながら、どんどん距離感を詰めてくる。こんなん惚れてまうやろー! という言動が目白押しなのです。

物理的距離が近かったり

ちょっと谷間が見えたり

痴漢されるポーズを再現しようとしたり

 白井さんは、時にはハナムラの自宅にもやって来ますし、一緒に映画を見に行ったりもします。そのたびに、軽いデート気分を味わうハナムラ。編集者として仕事にも誠実ですし、BLに興味がある(!)など意外な一面も分かり、どんどんひきこまれていきます。

 はたして、白井さんの気持ちはどうなのか。それを知ることができるのは、かなり終盤になってからなのですが……これ以上は、ネタバレになるので絶対に言えません!

その3・ハナムラへの感情移入がスゴイ

 最後に、作品の魅力をもう1つだけ。それは、「主人公への感情移入がしやすい」点です。

 たとえば「主人公が、何もしなくても最強」というマンガがあったとしましょう。確かに爽快感はあるでしょうが、「自分も同じだな」と思うことは少ないかもしれません。あるいは、主人公の性格が悪すぎる場合。「共感」や「応援したい気持ち」が減るのではないでしょうか。

 その意味で、ハナムラは不器用で、仕事も恋もうまく行っていない。「まだ、何者でもない存在」です。しかし両方とも、とにかく頑張っているのです。そのため、読み手からすると頑張れ、頑張れと感情移入がハンパナイわけです。

 個人的に注目なのは、ハナムラがマンガに対して、非常に真摯な姿勢を持っていること。やっぱり、どんな状況でも仕事=マンガを描くことが好きですし、向上心もあります。ハナムラ、うまくいったらいいのになー。と素直に思います。

 

 

 30歳というのは、微妙な年齢です。同年代で(あるいは年下で)成果を出し始めている人間がいる。仕事に注力しなければいけない一方で、そろそろ「結婚」も視野に入ってきます。恋に、仕事に、いったいどうするんだ――という時期です。

 そんなハナムラの「さんじゅっさい」を、魅力的なキャラクターとともに描き切ったのが本作です。ラストの描写で、ちょっとウルっときてしまうのは、きっと、筆者だけではないはずです。続きを読みたい方は、ぜひ下記リンクをクリックして下さい!

www.mangaz.com/book/detail/116341

(マンガ図書館Zで全巻・無料公開中!!)

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