『オークは望まない』に望むたった1つのこと

佐藤 茜2016年12月09日 印刷向け表示
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オークは望まない (ジーンピクシブシリーズ)
作者:島崎無印
出版社:KADOKAWA
発売日:2016-11-26
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 何と示唆に富む物語なのだろうか!
しかもそれがちっとも押しつけがましくなく、むしろ暖かさに満ちているだなんて。暖炉の前で孫に読み聞かせをするならこの1冊で決まりです。

王国に命を狙われる小さな魔女・リーナ。捕らえられる間際、彼女の前に現れたのは1体のオークだった。人間に命を狙われる魔女と、人間に忌み嫌われるモンスター。絶望のなかで出逢ったふたりの、不思議な共同生活が始まる――。
(紹介文より抜粋)

ともすると、ぱっと見かわいらしい萌え系少女の冒険譚に見えてしまうかもしれません。確かに主人公のリーナはかわいい。それどころかオークまでかわいく思えてくる(!)。最初、オークのヴァルダヴァは、リーナという少女を引き立てるための異形のものとしての配役かと思っていたのですが、読み進めていくほど、もう「好みのタイプはオークのヴァルダヴァさんです」と言いたくなっちゃうほど、かわいいやり取りが沢山。

ふふふ、となるやり取りが沢山。『オークは望まない』島崎無印 (著) KADOKAWA 17P

オークをキュートに魅せる手腕だけでもそんじょそこらの凡百の作品を超越しているというのに、それに加えて鋭いやりとりも随所に織り込まれています。

戦争はいつも大義の元に起こる。『オークは望まない』島崎無印 (著) KADOKAWA 42P

平和主義。『オークは望まない』島崎無印 (著) KADOKAWA 17P

罪もない人とオークなどの妖精を追い込む人類のどうしようもないエゴイスティックな側面と、虐げられながらも強く生きるモンスターたちのけなげさ。ああ、描かれている残酷さと優しさのバロメーターの幅が広すぎやしないだろうか。島崎無印先生の脳内は、確実に天使と悪魔が同居している!

なお、トント(tonttu:北欧フィンランドに古くから伝わる小柄な妖精・小人)が出てきたりと、もちろんファンタジーものとしても、もちろん楽しめます。

本作はナンバリング(巻数表示)がされていません。ですが、最後に収録された番外編では何やら続きも出そうな予感。できればシリーズ化していただいて、リーナとヴァルダヴァの暮らしを読み続けたいなぁと思っています。そう、本当に孫ができて読み聞かせができる日まで。

本の装丁も併せて童話のような一作。
オススメです。
 

怪獣の飼育委員 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
作者:島崎 無印
出版社:芳文社
発売日:2015-10-13
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前作のこちらも、少女と怪獣のやり取りに心が暖まります。島崎先生の作品は全般通して優しい世界観なので、いつも癒されています。海外ドラマ『クリミナル・マインド FBI行動分析課』で凄惨な殺人を見た後の暗い気持ちもリフレッシュ。いや、見るなよって話なんですがね。全2巻。しかし、サイトやtwitterでも掲載している作品も含め、毎回タイトルが上手すぎます。『背後の霊くん』とか。二度見不可避ですよ。

 

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