介護について『大阪ハムレット』で家族の「つながり」から考えてみる

のまり2016年12月11日 印刷向け表示
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大阪ハムレット (1) (ACTION COMICS)
作者:森下 裕美
出版社:双葉社
発売日:2006-05-12
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2頭身キャラの4コマ漫画家イメージが強かったけど

小さい頃にゴマちゃんが大好きで読んでいた『少年アシベ』。2頭身のかわいいキャラたちが描かれている4コママンガだった。

その『少年アシベ』の作者さんが、頭身の高い絵柄でシビアなストーリーマンガを描かれていたとは。初めて読んだ時は衝撃だった。

『大阪ハムレット』は森下裕美先生が関西を舞台に描く短編ストーリー作品。
いじめ・不倫・LGBT・育児放棄・代理出産…など、シビアなテーマが多く描かれている。登場人物たちの平べったい「のぺっ」とした感じの顔の、喜怒哀楽の表情がとても印象に残る作風。

少年アシベ(1) (アクションコミックス)
作者:森下 裕美
出版社:双葉社
発売日:2016-04-01
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在宅看護について考えていたら、このマンガを思い出した

このマンガで、家族介護をテーマに扱ったエピソードもいくつかあったことを思い出した。どうしてそれを思い出してしまったのかというと。

看護師の仕事をして○年。今年度は在宅看護に関わる機会が増え、改めて家族が介護をすることについてよく考えていたからだろう。

より患者さんに適した在宅看護の提供に繋げるため、病院など施設基盤における関わり方とはまた別の目線で考えさせられる出来事が多くあった、そんな年だった。

そんな時期、このマンガの2つのエピソードを思い出した。


2つの異なった家族介護のエピソード。

『大阪ハムレット』で描かれている家族介護のエピソードを2つ紹介させていただきたい。

ひとつめは3巻掲載「テレパシー」
小さな町工場の社長。横暴な性格の社長は、家族や従業員に暴力を振るってきた。ある日突然社長は脳卒中で倒れてしまう。後遺症のため寝たきりとなり、一切の会話ができなくなってしまった。病床の社長に対し恨みを持っている子供たちが、各々の思いを吐きだしていく。

『大阪ハムレット』3巻(森下裕美・双葉社)

家族からの恨みに怯える社長は、唯一社長を信じて優しく介護する妻に対してさえ、恐怖を抱いてしまう。小学生の孫にはこの現状と心境を諭されてしまい。孫に促されて、これまでの行いを謝罪し始め、病床からのできる限りの行動に移していくが…。

『大阪ハムレット』3巻(森下裕美・双葉社)
 

ふたつめは4巻掲載「おカアさんのいた街」
(※このエピソード、2巻の「大阪踊り」とも繋がっているので、2巻を読んでいただいてから読んでいただくのもオススメ。より泣ける話として読めるかと。)
サビィちゃんは異国から大阪に嫁いできた。余命宣告されたお姑さんこと、通称「おカアさん」の自宅介護を、何の躊躇もせず引き受けてしまう。おカアさんの介護を通して、サビィちゃんはたくさんのことを考えて、知っていく。

『大阪ハムレット』4巻(森下裕美・双葉社)

サビィちゃんから見ると、滑稽に感じる日本の習慣。不思議に思ったことを可愛い親戚に聞いてみたり。

『大阪ハムレット』4巻(森下裕美・双葉社)

旦那さんが思い通りに介護ができなかったことで、自責の念に囚われてしまっても、強い言葉で旦那さんを支えていく。

どうしてサビィちゃんはこんなにも一生懸命なのか。それはサビィちゃんの、祖国でのとある出来事が理由で…。

『大阪ハムレット』4巻(森下裕美・双葉社)

 

この2つのエピソード、同じ家族介護がテーマとして描かれていても、各々の家族の関係性が全く違う所で、色々と考えさせられる。

血の繋がった子供たちから疎まれてしまう話。
血の繋がりがない異国からのお嫁さんに慕われる話。
まったく対照的。

 

そのままのご家族の思いを受け止めていく

病を患った人が在宅療養に移る前は、医師・看護師・ソーシャルワーカー・ケアマネージャーなど各専門職が連帯しながら、ご家族の意思を確認していく。その意思は様々。

「生んで育ててくれたからこそ、親を自分たちで看なくては。」「血が繋がっていても、ウチでは親を看れないよ。他のきょうだいに任せたい。」など。それぞれのご家族の出された答えから、介護は始まっていく。

介護を終えられてからは「もっと、ちゃんと看てあげればよかった。」「いずれ亡くなるのは分かっていたから、仕方なかったんだ。」「やっと終わった。」自責の念、諦め、解放感など、これも本当に様々で。

もしかしたら家族介護に正解や間違えは存在しないのかもしれないと、思うこともありながら、そのままのご家族の思いを、受け止めていった。

 

「つながり」から構築されていく家族介護のかたち

「テレパシー」「おカアさんのいた街」では各々の家族の過去から現在までを絡めて、介護がひとつのターニングポイントとして描かれている。
家族の「つながり」は、介護のしがらみにもなってしまうし、介護の糧にもなっていく。

ある日在宅看護の勉強会を終えて、移動の途中に『大阪ハムレット』を読み返しながら考えていた。

看護師としての一側面の関わりから見ることはできない、家族の「つながり」は、これまで関わらせていただいたご家族にも、もっと色々あったのだろうか、と思い返していた。

看護学生時代に、最初の実習先で教えていただいた「わたしたち看護師が教えるのではなく、患者さんに色々なことを教わっているのです。」という言葉も、改めて思い返していた。

 

大阪ハムレット 3 (アクションコミックス)
作者:森下 裕美
出版社:双葉社
発売日:2009-03-12
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大阪ハムレット(4) (アクションコミックス)
作者:森下 裕美
出版社:双葉社
発売日:2010-07-28
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作者:
出版社:中央公論新社
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