話題のサイバーエージェントで働いていた漫画家の、彼女にしか描けないリアルな仕事と恋愛事情『彼女のいる彼氏』

マンガサロン『トリガー』2016年12月10日 印刷向け表示
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彼女のいる彼氏 1 (BUNCH COMICS)
作者:矢島 光
出版社:新潮社
発売日:2016-10-08
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こんにちは。鷺沢文香さん推しのマンガサロン『トリガー』店長兎来です。文香さんに本をお薦めしてもらい、お返しにマンガを薦めたい人生でした。


Cygamesを傘下に収めるサイバーエージェント社(以下CA)の勢いが凄いですね。
広告事業やゲーム事業がすこぶる好調で、2016年4Qではそれぞれ145億円、304億円の利益計上。過去数年と比較しても右肩上がりにも程がある成長度合いであり、それはお城も建造されグレードアップされますよね、と。

更に、AbemaTVで放送事業にも参画。最近では当店のイベント各種もAbemaFreshで配信しています。個人的には麻雀が大好きなので、麻雀番組がいつでも見られたり新たにプロアマ交えた面白い大会が色々と開催される世界になったというのは喜ばしいです(いつかマンガHONZメンバーで藤田社長率いるチームCAを倒したいとも思っています)。

他方、昨日こんな記事が話題を呼びました。

炎上中のDeNAにサイバーエージェント、その根底に流れるモラル無きDNAとは(ヨッピー) - Y!ニュース

http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoppy/20161209-00065195/

DeNAのWELQだけではなくCAも、もっと言えばLINEやリクルートやYahoo!なども同様の道義に悖るやり方で利益を上げているではないか、と。これらは江戸時代の石門心学の開祖である石田梅岩の説いた「二重の利を取り、甘き毒を喰ひ、自死するやうなこと多かるべし」「実の商人は、先も立、我も立つことを 思うなり」という現代のCSRの本質にも重なる精神に真っ向から背くものです。どこもやっていること、で済まさず日本を代表する上場企業としての社会的責任をしっかり果たし、自浄作用を働かせて頂きたいと切に願います。

 

さて、今回紹介するのはそんなCAで働きながら漫画家を目指し、見事にデビューを果たしたという異色の経歴を持つ矢島光さんが実体験を基に描く『彼女のいる彼氏』です。


(参考:
「二股されている女性に読んでほしかった」『彼女のいる彼氏』矢島光先生ロングインタビュー
http://honz.jp/articles/-/42444

いつでもどこでも(会社でも)見られるWEBマンガが大好きです。『SNSポリス』『彼女のいる彼氏』
http://honz.jp/articles/-/42196

元IT大手勤務の女子が描くお仕事系恋愛マンガ『彼女のいる彼氏』は現代版の”月9”だと思った。

http://honz.jp/articles/-/43462 )


CAといえば、語る上で外せないのがキラキラ女子。

恋するフォーチュンクッキーを踊った社員たちの動画も大きな話題となりました。キラキラ女子の中でもヒエラルキー最上層に位置するのがCA女子です。仕事もオシャレもプライベートも密度濃く充実した、リア充の究極完全体のような存在。CAでは入社初年度からプロデューサーとしてバリバリだったり、31歳で新子会社の社長になったり、目覚ましい活躍をしている女性が男性より多いそうです。CA躍進の原動力はキラキラ女子にあり。

『彼女のいる彼氏』は、容姿は良い方だけどそんなキラキラ女子にはなりきれない、仕事もそこまでできるわけでもなく彼氏もいない入社四年目のUIデザイナー・小泉咲が主人公です。

主人公・小泉咲。単行本ではキャラクタープロフィールが幕間で紹介され、咲は野田凪、カレー、エヴァ、レイアースが好きだと判明しました。

広告業界のリアルな仕事漫画として読むことができる本作では、咲を始めそれぞれの人物の恋愛と仕事の悩みが作者の実体験に基づいて綴られます。矢島さんいわく半分くらいは本当にあった話ということで、どこが実でどこが虚なのか想像しつつ読むと面白いです。特に印象的な説得力溢れるシーンの多くは、やはり実際にあったことではないかな、と。

たとえば、咲がエンジニアに修正を頼んでもしてもらえなかった部分を上司に指摘され詰問されるシーン。

口頭でもメールでも二重でお願いした上で、相手が知らないと言われるシーンと併せて、社会の理不尽さが如実に表れています。それを踏まえての


画面の中の「きれい」とか「かっこいい」とか「キモチいい」って1pxの美意識でできてるんだよ


というセリフには心底同意します。たとえ1pxの差が肉眼に表れていなかったとしても、そこで問題はなかったとしても「1pxくらいズレててもいいや」というおざなりな考え方で作られたものとの根本的な差はやがて大きな違いとなって顕現してくるものです。最近では電通の事件もあったので、深夜まで過剰な業務を行うのは社会全体で控えて少しゆとりを持つべきだとは思いますが、気概はこのようにありたいです。


本作は咲以外にも様々なキャラの視点から物語が描かれ、めいめいがその人なりの苦労をしているという様子が神の視点から俯瞰して垣間見られるのが良い所です。


例えば、一見華やかに見えるキラキラ女子のプロデューサー・ルミ。


デキる二年目の佐倉に仕事を突発で振ろうとするも、断られると小声で「色白サブカルメガネ野郎め…!!」と悪態をつきます。

その一方で、いい案件が来ると佐倉の腕を掴んで声もハートマークがつくテンション。佐倉も「プロデューサーってめでたい職種だな。頭下げてモノ作らせてといて自分らは祭やってれば良いんだから」と呆れます。


調子の良い女。そんな風に対外的には思われがちでしょう。しかし、そこにはそこで鉄の努力がありました。

どんなに体調やテンションが上がらずとも毎日オシャレとメイクと笑顔で完全武装。クセの強い面々の情報を網羅して、それぞれに合ったやり方でなだめすかして頭を下げてやる気を引き出す。


CAでも実際に行われているという社員の誕生会のためのケーキを買いに行った時や、毎朝の朝会の仕切りをルミの代わりに代行する中で、絶対に自分にはできないことをルミはやっている、ということを佐倉は痛感します。


逆に咲の同期のプランナー・徳永などは、多くの人の想像力が少し及びにくい所も敏感に察してあげることができ、さり気ない気遣いや一言を平然と出せるが故に仕事でも恋愛でも非常に戦闘力が高い男。

ただ、そんな徳永は徳永で、軽口を叩いているばかりではなく苦労している瞬間がある(仕事って重なる時は本当に重なるものですし、そういう時に限ってプライベートの連絡も殺到するとかあるあるですね)。


そして、仕事にコミットしながら佐倉や徳永たちとの大人の恋愛も描かれて行きますが、そこにも非常にリアリティを感じるパートがいくつかあります。


これはまさしく矢島光さんにしか描けないという一作。


様々な仕事の裏側を覗ける職業系のマンガが好きな方にも、キュンキュンする恋愛モノを読みたいという方にもお薦めです。

 

文:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

 

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