「セリフは自然体が一番」
ジョジョの作者がそれ言いますか!?
『荒木飛呂彦の漫画術』を漫画家が読んでみた。

小沢 高広2016年12月27日 印刷向け表示
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拙著『スティーブズ』が完結した。
漫画家にとって連載と連載の谷間は、連載期間と同じくらい大事だ。インプットなくしてアウトプットはない。だから、ここぞとばかりに気になっていた本を読んでいる。
たとえばこちら。

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)
作者:荒木 飛呂彦
出版社:集英社
発売日:2015-04-17
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 いわずとしれた『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦の漫画の書き方本である。2015年に出た本だが、わりと最近になってkindle版が出た。

「これまで独占して来たアイディアや方法論といった企業秘密を公にするのですから、僕にとっては正直、不利益な本なのです」

すばらしい。
このタイミングで読んで、次の連載にいかそう、という色気がないとは言わない。
デビュー前の戦略、編集者との攻防、そして大事なお金の話。自分の体験と照らし合わせ、うなずく部分、学ぶ部分が多々ある。

ところが、である。
具体的な創作論を語られる段になって、手が止まった。


「セリフは自然体が一番」

ええっ、ジョジョの作者がそれ言いますか!?
ジョジョといえば、名ゼリフの宝庫だ。誰がまねしても「ジョジョ!」とネタ元がすぐにわかるのは、その言い回しの独特さにある。
ジョジョ第二部が始まったときは中学生だった。村山くんが学校に隠し持ってきた『少年ジャンプ』をみんなで回し読みして、2時間目が終わったときの休み時間にはもう、ジョセフの決め台詞「おまえは次に◯◯と言う…」が校内の流行語になっていた。ちっとも自然体じゃないようなきがするんですが、荒木せんせー…。

「僕の漫画はセリフまわしが独特だと言われる」


よかったー。
荒木せんせーもご自覚はあるようだ。
 


「(でもそれは)日常的に自分がしゃべったりしていることが基本なのです」



な、なるほどー!!
荒木せんせーってば、そうなんですか! いや、そうかもしれない!
長嶋茂雄の野球論「来た球を打つ」にも通じるシンプルさと奥深さ。荒木飛呂彦という作家が、なぜ「ジョジョ」という名を受け継ぐ異端の天才たちの物語を「王道」として描き続けることができたのか。このくだりには、その答えが凝縮されているように感じた。天才とはこういうものだ。


そういえば、手塚治虫『マンガの描き方』、石ノ森章太郎『マンガ家入門』といった往年の描き方本も、正直、実用的な側面よりも、作者自らによる「作品論」という側面も大きい。漫画家による漫画の描き方本は、映像作品におけるオーディオコメンタリーのようなものだ。

つまりこれは荒木作品の特典映像といえよう。

ああ、そういえばこれも読み忘れていた。

読もう。

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