DQ4コマ好きだった人、注目!浅野りん先生のハートフル和菓子屋ストーリー『であいもん』が素晴らしい!!

マンガサロン『トリガー』2016年12月23日 印刷向け表示
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であいもん (1) (角川コミックス・エース)
作者:浅野りん
出版社:KADOKAWA
発売日:2016-12-03
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こんにちは。小学生の頃はケント紙やトーンを僅かなお小遣いを駆使して買い集め、キングスライム賞目指してドラゴンクエストの4コマを描いていたマンガサロン『トリガー』の兎来です。

「ドラクエ4コママンガ劇場!? 懐かしい! 昔読んでましたよ~!!」

うちのお店でドラクエ4コマを発見すると、とても強く反応して下さる方がいます。当時は各巻が数十万部売れていたらしく、想像以上に多くの人が通ってきている共通言語だと感じます。

実際ドラクエ4コマ出身の方、今現在も活躍されている作家さんも数多いです。

そして、浅野りん先生もその内の一人。高校生時代に浅野倫子名義で精力的に投稿して、番外編に掲載していた頃からのファンです。『CHOKOビースト!!』や『PON!とキマイラ』も楽しく読んでいました。

そんな浅野りん先生の最新作が先日発売。これがまた非常に良い漫画でした! ぜひともお薦めしたいです。

京都のご出身であり作中に京都由来の固有名詞が出て来ることも多い浅野りん先生の作品ですが、本作はストレートに京都が舞台。京の和菓子屋を舞台にした、温かみのある物語です。

 

家業を継ぐのは見知らぬ少女!?

主人公・納野和(いりのなごむ)は、ミュージシャンを目指して上京。しかし、10年経っても泣かず飛ばずでバンドは解散。実家の和菓子屋・緑松(りょくしょう)を継ごうと出戻ってくると、そこには跡継ぎを任された小さな居候の女の子・雪平一果(ゆきひらいつか)がいた――

小学生ながらしっかりとしており、既に緑松の看板娘としてせっせと働いている一果は、緑松の二代目である和の父親にも後継ぎとして認められています。また、家業を捨てて東京へ行ってしまった和を無責任でいい加減な男として厳しく当たります。

気勢を上げつつあくせく働く一果の姿は非常にいじましく、応援したくなります。しかし、いくらしっかりしているとはいってもまだ年端もいかない子供。父子家庭で育ち、そして父親にも置いて行かれてしまった一果は自立しようとするあまり他人に頼ることができないなどの面も。

そんな一果の父親代わりになってくれないか、と和は母親から頼まれます。和も、家を飛び出たとはいえ、元々無類の和菓子好き。

とりわけ緑松の御菓子に関しては、手間隙掛けて作っているのを間近で見続けているせいで実の娘のように深い思い入れを持っています。それでも家を出たのにはある理由があるのですが……。

いい加減に見えてその実、芯には真っ直ぐなものを持つ三十路の男と、しっかりしてはいるもののまだ未成熟で脆い部分も持つ少女。奇妙な二人の邂逅によって、緑松の物語は紡がれていきます。和は父親に認めてもらい、後を継ぐことができるのか。一果の父親は帰って来るのか。頑張る彼らには良い結末が訪れて欲しいと願います。

 

良質な群像劇としての側面

又、本作は和と一果以外の緑松で働く人物たちにも順番にスポットライトが当たり様々なエピソードが語られ、群像劇として展開していきます。

中でも、個人的には緑松でバイトする美弦の話が特に好きです。

美弦は五人姉弟の長女であり、まだ幼い弟たちの世話をしながら共働きの両親を支えるために家の手伝いも嫌な顔一つせずこなすよくできた子です。一果といい、健気な子の多い漫画ですね。

ただ、美弦には家族の誰にも言ってない秘密の趣味がありました。それは、音楽。自分で作曲をし、ネットで生配信も行っていました。本当は堂々と好きなことをやりたい。でも、家の事情があるからそれは難しい、迷惑を掛けてしまう……。そんな、美弦が壊せないと思っていた壁を壊す手伝いをするのが、和と一果です。

難しいと思っていることでも、本気で相談してみたら意外と何とかなってしまうことは現実にも往々にしてあります。我慢が必要な時はもちろんありますが、永遠に堪え続けるのではなく、心の底から溢れる気持ちを抑えられないものがあるのならば駄目で元々で話し合ってみる。まずはその一歩を踏み出すことで、拓けなかった道が拓け、より明るい未来へ進んで行けることもあるでしょう。

かつて私自身が言われたことですが、美弦はもっとわがままになってもいい。自分を押し殺しすぎなくても良いんだよ、と言ってあげたくなりました。それをしっかり一果たちが代弁してくれたので、胸がすくような思いでした。美弦の晴れやかな笑顔に、こちらも笑顔になります。

世の中には上手く立ち行かないことが非常に多くありますが、そういった自体に直面した時に戸惑いながらも周りの人の助けも得ながら前に進んで行く緑松の人々の姿に、心が整えられます。

浅野りん先生らしい、笑いと温かみに溢れた良い漫画でした。強くお薦めします。

1巻の終わりは続きが気になる展開に。実際に京都の和菓子屋さんに取材に行った時の話を描いたあとがき漫画も面白いです。ちなみに私はつぶあん派かこしあん派かで言うとどちらも好きな永世中立国です。

和菓子についての豆知識も得られるのは嬉しいですね。

今度京都に行った時には「御菓子司」の号がついたお店を探しつつ、下鴨でみたらし団子でも食べて来たいです。

試し読みはこちらから→http://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_KS02000041010000_68/
 

文:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

 

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