3時間でずっぽりハマれる極上クライムサスペンス 『100万円の女たち』 あの傑作『僕だけがいない街』を超える戦慄がここに

山田 義久2017年01月25日 印刷向け表示
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100万円の女たち(1) (ビッグコミックス)
作者:青野春秋
出版社:小学館
発売日:2016-03-30
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 久しぶりに背筋が凍った。全4巻の本作。独特の設定で始まるストーリー。1巻くらいまでは、ははーん、人情噺か、、、と見せて急転直下。2巻の後半あたりからすごいハンドルの切り方をしてクライムサスペンスに変容する。最近のクライムサスペンス漫画の傑作といえば『僕だけがいない街』だが、戦慄度では確実に『僕だけ』を超える。作者の青野春秋氏(代表作『俺はまだ本気出してないだけ』)の抑揚薄めな淡々としたタッチがストーリーの恐ろしさを際立たせる。

どう怖いか。
なんというか、戦慄の角度が読めない。”斜め後ろ”からの衝撃が多い。
下述のとおり、死刑囚の息子の主人公を始め、謎が多く、なに考えてるかよくわからない登場人物がそれぞれのストーリーを展開する。一人の登場人物の心理や行動を洞察して次の行動を予測してると、急に他のストーリーが衝撃的に動きだす。よって、読者は「ちょっとまて!その展開はまだ心と頭の準備ができていない!!!」と叫ぶこと多数だろう。さらに俊逸な点は、ストーリーは全体として少しずつ重たくなってくるのだが、途中「あ、ここから明るい話が広がるのかな。。」と思わせて、そこがさらなる絶望に突き落ちる起点となっているところだ。本当に心が休まる暇がなくなる。

このゾクゾク深みに沈んでいく感覚どこかで、、、あのミステリー小説の傑作として名高い『十字館の殺人』を読んでいる時のゾクゾク感と似ている、、、といえばミステリー好きの方には分かっていただけるだろうか。内容自体は全然違うけれど、話が持っている雰囲気の重さと緊張感は似ている気がする。

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
作者:綾辻 行人
出版社:講談社
発売日:2007-10-16
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登場人物とストーリー設定は一覧を作ってみたので、ちょっとこれをさらっと見てほしい。

主人公の売れない小説家、道間慎は月500万円の大金を手にしているが、そもそも、この生活が始まったのは彼の意図ではない。母が死に、父が刑務所に収監されて後、一人で住んでいた一軒家に招待状を受けた女性5人が住み着いたのだ。もうこの時点で謎だらけだ。

・どういう経緯でこの生活が始まったのか。
・彼女たちは何者か。
・彼女たちに招待状を出したのは誰か。
・なぜ彼女たちが選ばれたのか。
・そもそもなぜ彼女たちは月100万円の大金を払えるのか。

それらの謎がページをめくるごとに少しずつ明かされていく。
しかし!本作は、”父の犯罪で心に深い傷を負った主人公が、住人たちとの心のふれあいで生きる力を取り戻していく、、、、”ような、安い邦画っぽい展開でない。
あくまでも極上のクライムサスペンスだ。。。。この中で、、いち、に、さん、し、ご、、、、、、片手以上の登場人物がし、、、、、いいすぎか。

3時間3時間だ!3時間ほしい!(内訳:読むのに2時間半。呆然としながら咀嚼するのに30分)東京からだと新幹線で大阪越えて広島の手前くらいか。とりあえず、一気に読める。というか一気に読む楽しみを味わってほしいので、逆に3時間とれるまで読まないでほしい。とりあえず、その日のため今すぐ4巻すべてをインストールだ!超おススメ!

 

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
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