共同幻想を信じるホモ・サピエンスの強さがバブルを生んだ!?『ゴールデンゴールド』 マンガ新聞超新刊大賞2016 大賞記念ホリエモンVS堀尾省太 対談レポート第3回

角野 信彦2017年02月16日 印刷向け表示
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堀尾:『ゴールデンゴールド』作者

田渕:講談社モーニング編集部副編集長 『ゴールデンゴールド』担当編集

堀江:マンガHONZ代表、SNSファウンダー

菊池:トキワ荘プロジェクト

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堀江:本当にそうなんですよ。だから、ぼくの「福の神」的な部分が尾ひれはひれがついて、どんどん増殖していくんですよ。

田渕:そうですね(笑)

堀江:人間の欲望も、そういうよくわからないきっかけで、どんどん増殖していくんですよ。最近、よくこういう対談で話してるんですが、『サピエンス全史』※という本があるんです。

※ビジネス書グランプリ2017でリベラルアーツ部門賞を受賞。累計発行部数はこの記事発表時点で38万部。上下巻で600ページ近くあるサイエンス本、歴史本がここまで売れるのは快挙といえる。
サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 翻訳:柴田裕之
出版社:河出書房新社
発売日:2016-09-08
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サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 翻訳:柴田裕之
出版社:河出書房新社
発売日:2016-09-08
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ホモ・サピエンスって、現在の僕たち、現生人類ですよ。ホモ・ネアンデルターレンシスとかホモ・エレクトスとか、ホモ属のその他の種族は絶滅してしまったのに、なぜホモ・サピエンスがこれだけ繁栄しているのか。その一番の理由というのが、僕たちは共同幻想を信じられるということなんですよ。つまり、僕たちはフィクション=物語を信じられるんです。

例えば「国民国家」という物語、日本という「国民国家」を信じてるじゃないですか。でもこんなの実態は、個人個人の頭のなかにしかないわけじゃないですか。それによく言われるのが「お金」ですよね。「フクノカミ」的な話で言うと、お金っていうフィクションを信じているわけじゃないですか。お金は全世界の99%の人は信じてると思う。国民国家は多分90%ぐらいかな。

インドネシアの名もなき島に行ったら、「あなたインドネシア人ですよね」っていわれても「なにそれ」ってなることもあるかもしれないけど、「お金」は通用すると思う。そういう意味で、フィクションが増殖していくっていのは人間っぽいなあというか。人間だからこそ「フクノカミ」が信じられるんですよね。

堀尾:そうですね

堀江:妖怪なんて人間の幻想じゃないですか。妖怪なんて存在しないんだけど、存在してるって信じる能力が僕たちにはある。

田渕:うんうんうん

堀尾:そうっすね。あくまでもホラーマンガとしてやっていくつもりなので、はい。今の話はとても参考になる話で・・・・

堀江:ハハハ。ぼく、マンガが大好きなんで、マンガの原作とかやりたいんですよ。

田渕:ほうほうほう

堀江:原作もやったことあるんすけど。いまいちヒットしなかったんですけど。

田渕:やられたことありましたよね

堀尾:どんな話を書かれたんですか?

堀江:ひとつは自伝的作品というかネットバブルとかそういうのを描いた小説『拝金』※ていうのと『成金』※ていうのがあって、今度『錬金』※ていうのがでるんですけど。プロデューサー方式で量産する、本は全部そうやって作ってます。ディティールにもこだわってて、そういうのが書ける人に手伝ってもらってるんです。でも、マンガはまだ全然ノウハウがなくて、『拝金』のマンガ化もやったし、麻雀のマンガもやったんですけど。

※堀江貴文が実際に経験した、ITバブルやライブドア時代に流行していた新しい資金調達技術、ライブドア事件をもとに描かれる青春経済小説。
錬金 (文芸書)
作者:堀江貴文
出版社:徳間書店
発売日:2017-02-21
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田渕:なるほど

堀江:最近はオンラインサロンのメンバーたちと、マンガの企画がひとつ進行中です。これは時代小説なんですが、経済時代小説という新しいジャンルを切り開きたいなと思ってるんです。例えば、『JIN -仁-』※は医療時代小説ともいえるし、『天地明察』※とかって・・・

※『仁』は村上もとか作の歴史医療マンガで、現代の医師が幕末にタイムスリップしたらどうなるかというコンセプトで創作された。累計発行部数は800万部以上。
JIN-仁- 1 (集英社文庫―コミック版)
作者:村上 もとか
出版社:集英社
発売日:2010-07-16
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※『天地明察』は冲方丁による時代小説で、囲碁棋士で天文暦学者の渋川春海の生涯を描いている。第七回本屋大賞を受賞し、映画化もされた。
天地明察(上) (角川文庫)
作者:冲方 丁
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2012-05-18
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 田渕:天文時代小説!

堀江:まあ『仁』はマンガですけど、経済分野だったらぼく得意なんで。経済時代小説、元禄時代をちょっとやりたいなと。

田渕:へえー

堀江:あの頃、コメの先物取引が始まるんですよ。じつは元禄時代、堂島の米相場が世界初の先物取引所だったんですよ。今風で言うとFXみたいなものです。いまFX、めっちゃ流行ってるじゃないですか。定番でタイムスリップして、FXのトレーダーが、米相場がFXと同じだなと。

田渕:ほお。いいですね。

菊池:堀尾さん、なんか堀江さんに聞いておきたいこととかありますか?

堀尾:えっと、堀江さんがマンガをどういう風に読んでいるかを聞いてみたいです

堀江:読み方とかとくにこだわりがないんですけど、まあ、とにかく好きな作品をガッツリ読みたいという方ですね。

堀尾:注目しがちな部分とかってあるんですか?

堀江:あ、マンガのなかで注目しがちな部分ってことですか。うーん、難しい質問ですけど、例えば先程の『仁』ですが、ペニシリン※の作り方とかが入ってたりとか・・・・

※第二次大戦時に米軍が大量生産した抗生物質で、感染症での死亡率を劇的に引き下げた。『JIN-仁-』では幕末に主人公がペニシリンの大量生産に成功して梅毒やコレラの感染拡大を防いでる様子が描かれる。

田渕:『ゴールデンゴールド』でいうと、でべら飯※の作り方とかですか(ボソリ)

※『ゴールデンゴールド』1巻に登場する島の名物料理。詳しい作り方は下記の通り。
でべら飯の作り方『ゴールデンゴールド』1巻 ©堀尾省太/講談社

堀江:いや、ぜんぜん違います(キッパリ)

あの時代に、すごく制約条件が多いなか、ペニシリンが作れたかもしれないという可能性があるじゃないですか。おそらく。

田渕:フムフム

堀江:そのペニシリンをどうやって作るんだろうと。大量生産するために、銚子のお醤油屋さんが、今で言うところのバイオテクノロジーを使ってペニシリンを作っていくプロセスを描くわけですよ。マンガならではのif がありますよね。『アルキメデスの大戦』※もそうですよね。そういうのがぼく好きなんだと思いますよ。

※三田紀房が数学の天才を主人公にして第ニ次大戦を描く歴史マンガ。猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』では、「総力戦研究所」が日米開戦したらどうなるかという詳細なシミュレーションをして、正確に日本の敗戦やその負け方まで予測し、東條英機に報告していたことが書かれているが、事実を数字で理解し、それが意思決定に活かされたら日本は第二次大戦をどう戦ったのだろうかという歴史の if を扱ったマンガ。堀江も言っているがとにかく面白い。
アルキメデスの大戦(1) (ヤンマガKCスペシャル)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2016-05-06
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 もうひとつは、ぼくの好きな小説って、純然たる、小説というのではなく、ノンフィクションである要素とが大きいけど、フィクションでもあるという作品が好きです。例えば、山崎豊子さんの小説とか大好きなんですけど。『沈まぬ太陽』※とかってほぼ実話じゃないですか。でもノンフィクションだと書けないことが、フィクションという体にすると書けるじゃないですか。あれって、日本航空のことを国民航空と言い換えてたりするんですが、ぼくってほとんどそういう作品しか読まないですね。

※『沈まぬ太陽』は山崎豊子が日航機墜落事件をもとに書いた小説で、映画化・ドラマ化もされた。累計発行部数は700万部。
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
作者:山崎 豊子
出版社:新潮社
発売日:2001-11-28
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田渕:書けますよね。そのほうが。

堀尾:そう聞いていくと、ぼくのマンガは方向性がずいぶん違うのかなと思うんですが・・・・

堀江:それが、そんなことはなくて。さっきも言いましたけど、人間って、ほんとうはこんな感じだよなと

堀尾:ああー、なるほど

堀江:人間の欲望のif みたいなものを、こういう話って、たぶん「フクノカミ」っていうありえない妖怪みたいなものが、フィーチャーされてるんだけど、バブルのときとか、あれに近い話って起こるじゃないですか。

田渕:そうですね

堀江:現実の世界でも、まさに「フクノカミ」に近いものがあるってみんなが信じて何かをやっているというところが、『ゴールデンゴールド』の面白さですね。

田渕:そうですね。まさにそれは鋭い読み方で、そこが堀尾さんのなかでも大切にされている要素で

堀尾:いま改めて、そのことを忘れないで描いていこうと思いました

田渕:堀尾さんもそのことを描きたくてこの作品を描いてらっしゃると思うので

菊池:それで、最後に「貴文」がでてきて捕まったりして(笑)

堀江:いやいや(笑)もう「貴文」はでてこなくていいですよ(笑)。でも、さっきぼくの隠れ家があるみたいな話をしてましたね(疑)・・・。出てきそうな感じがするんですけど(笑)

堀尾:ちなみにそのホテル、もう無くなっちゃってるみたいですね

堀江:あー、そうですね。もう全然採算がとれないんで、やめたんだと思います。

菊池:ということで、そろそろお時間です。

堀江:この『ゴールデンゴールド』、絶対面白いんで、持ってない人は、ぜひ買って帰ってください。持ってる人も、友達にあげるために、一冊買って帰ってくださいね(笑)

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対談はこちらでおしまいです。ご愛読、ありがとうございました。ここに出てきた数々の本が好きな人は『ゴールデンゴールド』も買ってみてください。ぜったい後悔しませんよ。

ゴールデンゴールド(1) (モーニング KC)
作者:堀尾 省太
出版社:講談社
発売日:2016-06-23
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ゴールデンゴールド(2) (モーニング KC)
作者:堀尾 省太
出版社:講談社
発売日:2017-01-23
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対談第1回「もののけの異型の世界から人間が浮かび上がってくる」

対談第2回「瀬戸内の無人島に建つ村上ファンドのホテルはホリエモンの隠れ家!?」


 

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