あなたの「お性的嗜好」は何ですか?開始1P目から試される『偏愛カフェ』

マンガサロン『トリガー』2017年02月17日 印刷向け表示
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偏愛カフェ 1 (BUNCH COMICS)
作者:有咲めいか
出版社:新潮社
発売日:2017-01-07
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こんにちは、マンガサロン『トリガー』店長の兎来です。

トリガーを始めて一年半ちょっとになりますが、物語にカフェやバーが出てくると自然とそのお店の店長に感情移入するようになってしまいました。ただ、今回紹介する物語『偏愛カフェ』の店長は少しだけ事情が異なります。

顔中に絆創膏だらけの店主・千日浩(せんにちひろ)が営むカフェ「statice(スターチス)」。そこは、様々な性的倒錯者(パラフィリアン)が集まるお店でした。

千日は来店した人間にこう言い放ちます。

「お客様はどんなお性的嗜好なんでしょうか」

お性的嗜好。
……お性的嗜好!

久しく聞いたことのない、ユニークな接頭辞の用い方です。少し気に入ってしまいましたので、今後使っていきたいと思います。

第一巻では、一話ごとに違ったお性的嗜好を持った人物たちが登場します
生理血嗜好者(メノフィリア)、妊婦性愛(メイシオフィリア)、人形性愛(アガルマトフィリア)……(こういう言葉、中学二年生の時によく調べましたよね)。

開始1ページ目から、生理血嗜好者が激しく劣情を催し、トイレのゴミ箱から使用済みナプキンを取り出して猛烈な勢いで吸引するシーンが描かれます。人によっては強く嫌悪感を催すであろう内容ですが、逆にそれを徹して描いているが故に深く突き刺さる人もいることでしょう。

嗜好は人の数だけあります。本人にとって自分の嗜好というのは極自然に備わっているものなので、それを他の多くの人が持っていないが故に「異常」と断じられてしまうのは辛い所です。

しかし、こうした形で類型化されていることで多数派の「普通」に属する人も「そういう人もいるんだな」と知識として知ることができますし、少数派の「異常」と呼ばれてしまう側の人も「自分と同じような嗜好の人は世の中にいるんだな、自分だけではないんだな」とある種の安心感を得られる効用が発生します。

例えば、表紙にも描かれている妊婦性愛の男性のお話。

妻が妊娠してから毎日写真を撮りアルバム20冊目に突入したという彼。しかし、彼も妊婦なら誰でも良いという訳ではなく、「自分と妻の愛の結晶たる子供をお腹に宿した女性」であるからこそ興奮するというのです。「妊婦に欲情する」とだけ言うとアレですが、そういうことであると、納得まではできなくとも多少理解できる部分もあるのではないでしょうか(もっとも、彼のその後の行為は断罪されて然るべきものなのですが……)。

理解できないものをただ突き放すのではなく、世界に遍く存在する多様性を受け入れる器を涵養するという意味で、一度はどんな性的倒錯者が存在するのかは知っておいて良いと思いますし、この作品はその一助になるでしょう。

ただ、繰り返しになりますが、人を選ぶことは間違いありません。

個人の抗い難いほど強烈な欲望が社会的規範や倫理と相反する場合というのは非常に難しい問題を孕みますが、この作品において性的倒錯者たちはその在り様を根底から肯定されていきます。結果的に人間が死んでいくこともままあり、インモラルでエニグマティックな作品となっています。そういうものが大好き! という方には堪らないでしょう。

まずは試し読みをして、適性を測ってみると良いと思います。

https://comic.pixiv.net/works/2267

 

文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

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