愛が人を殺す。愛で人を殺す。愛しくて苦しくて激情で憎みそして愛する。『テンプリズム』のいびつさは愛。

松山 洋2017年03月01日 印刷向け表示
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テンプリズム 1 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2014-08-29
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私は学生時代に初めて『シャカリキ!』を読んで曽田正人という作家に触れました。

少年チャンピオンを愛読していた当時の私にとっては、完全に新しかった
ロードレースを舞台とした高校生の熱血少年漫画でした。

第一話から最終話までキッチリと完全に面白かった。

今でも演出や脚本やキャラクター構成の話をする際には引き合いに出すくらい
完成された面白さを持つ作品だと思っています。


その後に、『シャカリキ!』が持っていた面白さの正体ってなんだったんだろう?

と考えました。

その答えは『め組の大吾』にありました。

『シャカリキ!』の連載終了後に少年サンデーで始まった曽田正人の新しい作品。

タイトルが示す通り、消防士の青年の話。

しかし、その実は“本当に少年サンデーらしくない”作品でした。


主人公の大吾普通に見えて普通じゃない。


ある種の狂気じみた能力と性格をもったキャラクターで、当時の読者は(私も含めて)
毎週の大吾の判断や行動に驚かされ、夢中になって追いかけました。

ただ、私はそんな『め組の大吾』という作品の中に『シャカリキ!』の時に感じた
“違和感”にも似た“特殊性”に気付かされました。


『シャカリキ!』の面白さの秘密。

『め組の大吾』の面白さの秘密。

この2作品に共通した・私が感じた特殊性の正体。


それは“ライバルとの関係の特殊性”だったと思います。

 

ライバル。

 

どんな少年漫画にもどんなドラマにも必ずライバルは登場します。

で、通常、少年漫画の多くは序盤のライバル→中盤のライバル→終盤のライバル
バトンタッチしていきます。

そりゃそうですね。

序盤のライバルを倒すことで障害を乗り越え成長し、さらにそれを上回る強敵と
闘うからみんなドキドキするわけですね。

なんだってそう。

普通はそうです。

で、多くの作品が序盤のライバルはあくまで序盤のライバル。

序盤で倒した後は、次のライバルの登場によってみんな新展開におけるステゴマ扱い
になることが多いのです。

(要するにヤムチャですね。)

(序盤ではライバルだったヤムチャが中盤では最初にやられるキャラとなり、終盤では
登場すらしなくなる、なんてことはよくある話、というよりもむしろ“お約束”とすら言える。)


私が『シャカリキ!』と『め組の大吾』を読んで感じた違和感はここでした。

違うんです。

曽田正人は。

『シャカリキ!』の主人公テルの最初のライバルはユタ。

そして終盤、最後のライバルもユタ。

『め組の大吾』の主人公・大吾の最初のライバルは甘粕。

そして終盤、最後のライバルも甘粕。


もちろん、途中に様々な強敵も出てきますが、物語の途中で最初のライバルが
いなくなることもなければ、ないがしろにされることもない。

“最初のライバル”は“最後までライバル”なのです。


『シャカリキ!』と『め組の大吾』を読んで心から感銘を受けたのはこの部分でした。

 

“ああ、この曽田正人という作家は
ライバルを諦めない作家なんだ。”

 

そう感じて気付いた時から私は曽田正人という作家に惚れて、現在に至るまで
全ての連載作品を追いかけてきました。


そのあとの連載作品も特殊でした。

ビッグコミックスピリッツ連載の『昴』も。

月刊少年マガジン連載の『capeta』も。

それぞれが違う“特殊性”を発揮したやはりその時代の歴史に刻まれる名作
なりました。



そして時は流れ、2014年から最新作『テンプリズム』がスタートしました。

まさかの王道ファンタジー。

剣と魔法のファンタジー世界を曽田正人が手掛ける。


“これはただの作品にはならないな。”


第一話を読んだ時の私自身のこの感想を。予感を。

連載が完結した今だからこそ。

『テンプリズム』が持つ特殊性とはなんだったのか?を定義したいと思います。


それはやはり“ライバル”であり、同時に曽田正人が
最新型で描く“ラブロマンス(愛)”であったと思います。


曽田正人が過去に描いてきた“ライバル像”を“ラブロマンス(愛)”に昇華・変換して
描いた他に類を見ない唯一無二の作品となりました。


冒険ロマンを持つ剣と魔法のファンタジーをラブロマンスで料理する。

しかもただのラブロマンスじゃあない。

ライバルの文法に乗っ取った全く新しい“愛のカタチ”でした。

これだ。

これが曽田正人だよ。


すげえなあ。

漫画って、曽田正人って、どこまで進化するんだろう。

 

ライバル×ラブロマンス(愛)

 

このキーワードを見て“!?!?!?!?!?”となった方は、ぜひ。

ちょうど最終12巻も発売されたので。

最新で最高の進化を遂げた曽田正人の挑戦作『テンプリズム』。

一気にご覧あれ。

そして驚愕してください。


きっと、この先も、ずっと進化し続けるんだろうなあ、曽田先生。

次回作も楽しみです。

 


せっかくなので、ちょっと個人的なオススメポイントも紹介。

今までの曽田正人作品って実はヒロインがめちゃくちゃ魅力的だったのですよ。

ただ、物語の都合上あまりヒロインそのものにスポットが大きく当たることは
(『昴』の場合は逆ね、女性主人公だから)無かったのですよ。

必然性が無かったから。

しかし、『テンプリズム』はラブロマンスを描いているが故にヒロインは色濃く
というよりもほぼ中心的に描かれます。

それがまた悪魔的に可愛くて魅力的なのですが。

オススメというか注目したいのが、画風の表現というか進化というか。

間違いなく今まで見たことが無い曽田正人の描く女の子の魅力が爆発しています。

せっかくなのでいくつかカラーイラストを紹介しつつお別れしたいと思います。

 

 

 
 
、たまんないでしょ?この破壊力。
 
 

 

テンプリズム 12 (ビッグコミックス)
作者:曽田 正人
出版社:小学館
発売日:2017-02-28
  • Amazon
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