ストーカー?いやいや、「恋の聖地巡礼」です。妄想爆発恋愛グルメ漫画『片恋グルメ日記』

マンガサロン『トリガー』2017年03月02日 印刷向け表示
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片恋グルメ日記(1) (アクションコミックス(月刊アクション))
作者:アキヤマ 香
出版社:双葉社
発売日:2017-01-12
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 こんにちは、コロッケそば大好きなマンガサロン『トリガー』店長の兎来です。汁が染みてほろほろになったコロッケ、たまらないですね。

さて、今回紹介するのは『ぼくらの17-ON!』でもおなじみのアキヤマ香先生の最新作。年の差恋愛を描いた『長閑の庭』とは雰囲気も一転。非常にエネルギッシュで、随所で笑えるラブコメ×グルメマンガとなっております。

恋愛と食。

これは三大欲求の内の二つが同時に満たされる贅沢盛り!
正に、女性向けマンガ界のフォワグラソテートリュフ添えや~!! ……と言いたい所ですが、本作に登場するグルメは牛丼や立ち食いそばなど、身近で庶民的なものが多いです。

少女マンガ雑誌『月刊ジュース』の編集者であるヒロインの所まどか(通称コロ、33歳)は彼氏いない歴=年齢。そんなまどかも、社内女性のアイドル的存在である40歳独身の八角さんに、密かに憧れを抱いていました。

『長閑の庭』でもそうですが、アキヤマ先生の描くミドルやシニアは良いですね~! 仕事ができて気配りもできる八角さんは、大人の色香を感じさせるナイスなキャラです。

まどかは一度は八角さんと食事を一緒にしてみたいものの、そんな勇気はない……。そんな彼女にお薦めされたのが、「食事ストーキング」という行為。一緒に食事できないのなら、せめてその人と同じ場所に行って同じものを食べ「彼を感じ」てみてはどうか、と。そうして、まどかは牛丼チェーン店や立ち食いそば屋など、普段一人では行かないような働く男の飯処に頻繁に足を運ぶようになります。

作中では「恋の聖地巡礼」とも称されるこの行為。私は非常に強い共感を覚えました

私はかつて『咲-Saki-阿知賀編』が好き過ぎて度重なる聖地巡礼が高じた結果、世界遺産の吉野山に住み着き就労するに至った経験があります。その空間の景色、風、匂い、音、空気、温度……実地に行ってみて初めて解る、そういった情報を五感全てを使って得た瞬間。大好きなキャラクターとの無上の一体感が生まれます。そして、自然と口に出るのです。「ここに〇〇(キャラ名)を感じる……」、と。

極限まで精度を研ぎ澄ました追体験。それによってのみ得られるインスピレーションというものが存在することも、身をもって実感しています。そう、妄想しようと思ってするのではなく、そこに行くと自然と想像が喚起されるんですよ! わかります!

だからこそ、まどかが食事ストーキングを行って、八角さんと同じものを食べた瞬間に起こる「妄想トランスフォーム」にも非常に納得してしまうのです。

普通のグルメマンガであれば、食べた後の美味しさの反応が一つの要になっていますが、本作ではその一歩先が最大の見所です。食べて美味しさを満喫した後に「ぎゅぎゅぎゅぎゅ」「ぐぐぐぐ」と瞳が開いて始まる妄想爆発タイム。これこそが肝なのです。

「これをもし八角さんと一緒に食べていたら、どんな展開になるだろう……」という妄想が、数ページにわたって甘美なイメージとして描かれて行きます。恋人同士でしかできないような所作、時にはプロポーズやそれ以上のことまで、暴走したまどかの妄想が(解除される切ない現実の瞬間とセットで)非常に愉快です。

全体的にテンションが高く、擬音などの細かい描写が面白く、楽しい気分で読み進められる一冊です。チキンハートを表しているはずのニワトリがやたら強そうだったり、心の中で繰り広げられる南の島の謎の儀式だったり、独特の心理表現が笑えて好きです。

純粋にグルメマンガとして見ても、登場する食べ物一つ一つが非常に食欲を掻き立てる描かれ方で飯テロ力が高いです。私自身もこれを書いている今、無性に牛丼をかきこみたくなっているので、次に口にするものは牛丼と決めました。さんまやナポリタンや二郎系ラーメンも食べたくなります。深夜に読むには非常に危険なマンガです。

まどかに食事ストーキングを薦めた曲家りんご先生始め濃いサブキャラが多いですが、個人的に好きなのは恩田さん。編集部でも黒髪ロングストレートでゴス服を着て、雑魚寝する時も新人の持ち込みを見る時もその服装は変わらず。バラのクロスに手作りのお弁当を包んでくる女子力、いつも波線の吹き出し。不思議な魅力があります。

まどかと八角さんの行く末は気になりますが、他のアラサー女子がどうなるのかも気になります。

良いラブコメであり、良いグルメマンガ。お薦めです。

 

文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

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