「オレは誰だ?」3.11に被災した杜王町をめぐるジョジョの奇妙な冒険。 震災から6年が経った今こそ『ジョジョリオン』を振り返ってみませんか?

今村 亮2017年03月11日 印刷向け表示
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ジョジョは好きですか?

『ジョジョの奇妙な冒険』は時代と血統をめぐる物語です。

19世紀のイギリスから始まった物語は、星型のアザを持つジョースター家の血統者たちを主人公に、舞台をアメリカ・日本・エジプト・イタリアと移しながら進みます。世代を越え、親から子へと遺志は引き継がれながら、奇妙につながり、奇妙にねじれた時間軸の中で、シリーズは累計118巻を重ねました。

第八部にあたる最新作『ジョジョリオン』の舞台となったのは、2011年の「S市杜王町」です。これは架空の地名ですが、聞き覚えのある方も多いと思います。第四部「ダイヤモンドは砕けない」と同じ舞台だからです。モチーフは仙台市だと言われています。

この連載が始まったのは6年前、2011年5月のことでした。そう、東日本大震災の直後です。つまり『ジョジョリオン』は荒木飛呂彦さんが被災した仙台市を思い描いた物語なのです。
 


※第八部『ジョジョリオン』のネタバレについては、第四部「ダイヤモンドは砕けない」の相似性や第七部『スティール・ボール・ラン』との連関性など、こちらのサイトに詳しいので参照ください。

【随時更新】ジョジョ好き必見!ジョジョリオンの『謎』と『元ネタ』
https://matome.naver.jp/odai/2135922049562037801

荒木飛呂彦さんは仙台出身

そもそも実は作者の荒木飛呂彦さんは仙台市の出身なのだそうです。宮城県の地元紙・河北新報に下記のようなコメントを寄せています。


記事にはこう書かれています。「自分がなぜそこに生きているか。自分が存在する意味を解明していく物語。青年が自分のルーツを探し、前に進んでいく話が復興というテーマにもつながる」。それが『ジョジョリオン』なのだと。

『ジョジョリオン』第一巻は、定助が被災した海辺で発見・救出されるシーンから始まります。記憶喪失の定助は自分が誰だかわからず、そのルーツを探るように東方家と杜王町の謎に迫ります。そしてこんなモノローグが添えられます。

これは「呪い」を解く物語-
その始まり-

自分は何者なのか?

筆者は東日本大震災で被災した町を支援する教育NPOに勤務しています。

 

8割の住居が流され、1割の方が亡くなり、町並みが大きく変わってしまった町です。その町に暮らすほとんど全ての人にとって、3.11は誰かの命日です。

2011年以降、荒木飛呂彦さんが言う「自分がなぜそこに生きているか」というメッセージを、筆者もまた多くの人から投げかけられました。3.11を節目に人生が大きく変わっていくたくさんの人たちを目の当たりにしてきました。被災した者も、支援する者もそうです。当たり前の日常が当たり前でなくなるとき、私たちは自分の存在を揺さぶられます。『ジョジョリオン』は被災地で起こってきたノンフィクションドラマの延長線上にあるように感じられます。

やはり地元が被災するということは不思議な意味を持ちます。荒木飛呂彦さんは、自分が仙台市に生まれ、荒木家に育ったことを、どのように振り返ったのでしょうか?

3.11後に荒木飛呂彦さんが『ジョジョリオン』に託したのは家族と血統をたしかめ直す日常の物語です。アクションも地味ですし、世界侵略を企てる強敵も現れません。いったい誰と戦っているのかさえわからなくなるサスペンスドラマです。

自らの内面と深く深く向き合っていくポスト震災の成長譚。3.11から6年が経った今こそ、一読をおすすめしたいと思います。
 

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作者:荒木 飛呂彦
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