オトコとオンナの裏側を二視点で楽しむ大人の恋愛劇『liar』

マンガサロン『トリガー』2017年03月21日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
liar(1) (ジュールコミックス)
作者:袴田 十莉
出版社:双葉社
発売日:2017-02-22
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

こんにちは、マンガサロン『トリガー』店長の兎来です。

私が心から愛する物語のいくつかもそういうタイプですが、同じ時系列の事柄を複数の異なる視点から描いた物語が大好きです。起こった事実は一つ。しかし、その事実からそれぞれの観測者が受け取るものは千差万別です。

ある同じ事件に対しても、そこで人物AとBが抱く印象や感情が180度違う。それは、現実において今この瞬間にも人の数だけ起きていることです。

整合性の取れない矛盾が生まれないようにするため、作家の構成力が問われる手法ではあります。それだけに、成功した時の効果は大きいものです。

そんな別視点から見た時の意外性を、恋愛ドラマと一緒に楽しめるのが今回紹介する『liar』です。

最初は、大人向けのオーソドックスなオフィス恋愛物語として始まります。

ヒロインは今年で23歳の営業職・成田美紗緒。隣の席の一つ年上の先輩・市川一哉(通称:イチさん)は、仕事はできるものの成田とは決定的にソリが合いません。しかし、成田は仕事さえスムーズに進められれば会社の人間なんてどうでもいい、と市川やモーションをかけてくる他部署の男性を気にも留めません。

しかし、唯一成田が入社以来惚れ込んでいるのが、クールで理知的な眼鏡イケメンの上条。彼に対してだけは、成田は周りから分かりやすすぎて笑われるほどストレートに好意を示しアタックしていきます。当の上条がちょっと引き気味になっても、諦めず果敢に攻める所は成田の魅力と言えます。ただ、成田はしたたかであるだけではなく年相応の弱さやその他の面でのギャップも持ち合わせており、飾らない等身大のヒロインという印象です。

そんな成田ですが、ある些細なできごとを切っ掛けに市川が見せた行動に心を乱されます。そして、徐々に上条よりも市川に惹かれていく自分がいることに気付いていきます。そんな成田に対し、市川は、そして上条は……。

タイプの違うイケメンが並び、ヒロインの恋愛感情の萌芽からが丁寧に描写され、ここまででも王道のツボをよく押さえたいい恋愛マンガです。

しかしながら、『liar』の真骨頂はそこからなのです! その後に、冒頭で述べたような他者視点による物語の展開が始まって行きます。

市川から見た、あの時の行動やその印象。そして、成田の視点の時には見えなかった、市川のみが知るある事実や、あの時に裏で起こっていた諸々……。

見方を変えた時の、ある意味でミステリにも近い意外性の妙は勿論のこと、面白いのは男女の視点の違いによる描写に、実に女性らしさ・男性らしさが溢れていることです。この構成が、恋愛マンガとしての価値を高める役割をも担っているのです。

女性は成田の言動に、男性は市川の言動に、どこかしら自分と重なる部分、共感できる部分、身に覚えのある部分を見付けることができるのではないでしょうか。個人的には彼の回想時に罪悪感を伴いながらも「わかる……わかるよ」と頷いてしまいました。

色々な意味で、オンナもオトコも「liar」なんですよね。

そして、その嘘が招く展開がまた……。冒頭の出だしからはもっとドロドロな感じを想像していましたが、意外と甘々な所もあり。ちょっと、早く、早く続きを! となること請け合いです。

イケメンが出て来る恋愛モノがお好きでしたら、強くお薦めです。

 

文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

liar(2) (ジュールコミックス)
作者:袴田 十莉
出版社:双葉社
発売日:2017-02-22
  • Amazon
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

 

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら

人気記事