ゾンビはカメムシと同じ方法で対処できる!?ユルいけど胸熱な『醤油を借りにいくだけで死ぬことがある世界の中級サバイバルガイド』

マンガサロン『トリガー』2017年03月23日 印刷向け表示
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 「女の子たちが他愛もない話をしているだけの日常系作品にはもう飽きたよ」
そんな人にこそ読んでみて欲しい、非日常的世界の中で繰り広げられる異色の日常系マンガがこちらです。

ゾンビが溢れ、閉鎖された町で立て篭もりを続ける三人。

長身、貧乳、非オタで基本的には常識人の浅井。
中背、巨乳、漫画ゲームアニメ好き、無鉄砲で馬鹿の吉竹。
小柄、貧乳、姫カット、腹黒で危険思想の持ち主馬場。

この非常にクセのある三人娘たちによる、サバイバル生活が描かれて行きます。

この世界のゾンビは世間一般がイメージするゾンビに近く、動きはかなり鈍いもので、知能はほぼ無いに等しいです。目標に向かっては直進しかできないので、障害物があれば永遠に突っ掛かり続けます。それ故、冒頭のシーンではテーブルをゾンビを固定して封印する始末。


ゾンビは腕力や咬筋力は非常に強いですし、噛まれたら自分もゾンビになってしまう危険性はある存在です。しかし、弱点も多く「攻略法」は存在するので、吉竹たちはそこを突いて上手くゾンビをやり過ごし救助を待つ日々です。


政府からドローンを使って生活に必要な物資を支給してもらったり、自分たちで風呂を拵えたり、限られたリソースを使って生き伸びていく彼女たち。

常に死と隣り合わせであり続けるが故に、段々麻痺して緩くなるという感覚は逆にリアルです。基本的にギャグテイストが強めで、若い読者にはきっと伝わらないであろう「白土三平の漫画に出てくる羽虫を操る音」などの細かいジャブも沢山繰り出して笑いを取ってきます。


主役の三人は、特にゾンビなどがいない世界であっても十分にマンガにできるであろう濃いキャラ(吉竹や馬場が周囲を振り回す普通の学園モノなども見てみたい位です)。彼女たちのかなり勢いのある掛け合いは思わず吹き出すこと間違いなしでしょう。

ただ、この作品の美点としては、極限状況下における緩い会話や行動がその多くを占めつつも、時折非常にシリアスな、純粋に熱く感動的なドラマも展開されて行く所が挙げられます。普段はおちゃらけているキャラクターが見せる、性質や想い。熱さ。そのギャップにグッと来ます。

日常系としてのエッセンスを有しながらも、そこから少し逸脱している。そのズレが、筆者の後書きにも書かれているように確固たるテーマ性を生み出しています。絵は荒削りですが、内容に関しては非常にセンスを感じましたし、今後も楽しみな作家です。

コミックスでは、ニコニコ静画には無かった特別編「吉竹・オブ・ザ・デッド」も収録。こちらもシリアス交じりで、しかし笑える良い話となっています。

この1巻だけで、終わらない彼女たちの日常を閉じるのもそれはそれで美しい。ですが、まだまだこの特異な日常を見守り続けたいという想いも湧き起こるのでした。

 

文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

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