『不登校の17歳。』が死より進学を選択できたワケ 子どもの自殺は夏休み明けの9月1日に続き、4月8日と11日という新学期/新年度に多い。

工藤 啓2017年04月12日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

教育評論家の尾木直樹氏がブログで、学校ごときに命を投げないよう呼び掛けていることを受け、THE HUFFINGTONPOSTは“子供の自殺が多いのは、4月8日と11日 尾木ママいじめが辛い時は学校休んでいいんだよ”という記事を出した。

そこでは2014年度自殺対策白書から、子どもの自殺は夏休み明けの9月1日に続き、4月8日と11日という新学期/新年度に多いデータを出している。

新しいスタートを切りやすい時期というのは、何かしらうまくいっていなかった人間に対して周囲は妙な期待をかける。不登校児童が再び登校するきっかけになりやすいのではないか。ずっと無業であった若者が一念発起で働き始めやすいのではないか。家族や教師が本人不在で期待をインフレさせ、あたかもみんなと同じ日時に再スタートすることが既成事実であるかのごとく醸成されていく空気をもっとも冷静に見ているのが本人かもしれない。

先日、筆者は前出の尾木直樹氏とNHK第一ラジオに出演した。非常に印象に残ったのが『不登校経験のある女性が言った「好きなことに逃げろ」のメッセージ』であった。その言葉の強さが脳裏に焼き付いたのだが、それ以外にも重要な示唆が多くあった。

その不登校経験のある女性とともに、就活の失敗からひきこもり状態になった男性も体験談を語ったのだが、共通点がひとつあった。それは家族、特に親の不理解によって非常に心を痛め、身動きが取れなくなってしまったというものだ。学校に行けない自分への不理解、懸命に仕事を探している自分をことごとく攻め続ける親を前に、まさに「心が折れる」を経験していた。

『不登校の17歳。』は、いじめなどにより中学の大半を不登校で過ごした女性が高校進学を果たした後、またしても不登校になってしまったところから話が展開される。比較的おとなしめの彼女の進学先は、“ヤンキー度高め”の生徒が集う居心地の悪い場所。会話も低俗なものが多いようだ。御多分に漏れず教師はあてにならない。

もともと心配であった両親も、「やっぱりか」という気持ちで、いじめや体調不良などで登校できなくなる娘と対峙する。少し話は前後するが、小学校時代に娘は発達障害の疑いをかけられ、体調不良の原因を探すべく病名や症状名が疑われる。今回は「起立性調節障害」だった。

まさに新年度が始まったいま、子どもが学校に行けない状態の親御さんもいらっしゃるかもしれない。なぜ、本書『不登校の17歳。』を勧めたいのか。それは彼女が不登校であっても、低空飛行であっても大学進学ができた理由。学業不振であっても、いじめられても高校卒業ができた理由。その解答の一つが描かれているのだ。そう、それは親(作者)の娘を観察し、娘を信じる力。「つらかったら学校辞めてええんやで!!多くを望んでもしゃーない!!生きてるだけで大丈夫!」(帯より)という腹のくくり具合が絶妙なバランスで表現されている。

特に筆者がリアリティを感じたのが、中学に続く不登校に対し、娘と周囲の状況を把握し、徹底的にわが子を尊重、守り抜くことを決断しつつも、ちょっとした瞬間に娘を許せずに喧嘩してしまうシーンや、そういう状況になる前に友達と遊んだり、ファミレスで一息つくところである。「こうしたらうまくいきました」という属人的成功体験ではなく、むしろ、親としての不安や苦労を赤裸々にしつつも、我が子の成長や将来への期待を隠すことがない姿勢が素晴らしく、まさい不登校や無業といった状況にある若者、子どもたちとかかわる方、親に限らず、読んでほしい一冊である。

※著者の青木光恵氏は、娘の中学不登校時代についても漫画を出されている。

中学なんていらない。 不登校の娘が高校に合格するまで (メディアファクトリーのコミックエッセイ)
作者:青木 光恵
出版社:KADOKAWA/メディアファクトリー
発売日:2014-11-21
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub
記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら

人気記事