歪で痛く、危うい少年と少女が織りなす黒い春。『火傷少女』

マンガサロン『トリガー』2017年04月27日 印刷向け表示
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火傷少女(1) (アクションコミックス)
作者:里見有
出版社:双葉社
発売日:2017-03-22
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そんな文言に黒く埋め尽くされたノートを、普段は元気に笑って過ごしているクラスメイトが持っていたとしたら。それをある瞬間に目撃してしまったとしたら。あなたはどうするでしょう。

見ても見なかったことにして関わりを避けるでしょうか。そんなことを書き連ねることになった原因を心配して尋ねるでしょうか。今回紹介する『火傷少女』の主人公の場合は、その黒い内容と思考に強い興味を持ち、ノートを見せて欲しいと要求します。これは、壊れた心を持つ主人公とヒロインの物語です。

日常においては相互の安全や利益のために法を遵守して理性的に生活する人間ですが、一皮剥いた部分には狂気とも呼ばれる本能・本質が備わっています。それを覆い隠して過ごしている期間の方が人類史からすれば特例とも言えます。禁忌とされるものを内包し、希求する部分が人間にはある……それもまた真理です。平時は普通に過ごしている人であっても、そんな狂気を恐ろしいと思いつつも、どこか惹かれる部分がありはしないでしょうか。『火傷少女』は、そういった人間の黒い想いを描き、日常の生活では埋まらない部分を充たしてくれる作品です。

逢崎要(あいざきかなめ)は、父親が出て行ってしまい母親と暮らす高校生。しかし、母親は要のことをいなくなった父親の名前で呼び、父親という体で接して来ます。そんな母親に対し、要は事務的に徹して対応し、日々を生きています。

普段教室では一人で大人しく過ごしている要に対して、ヒエラルキー上層のグループで快活に過ごしている少女がヒロインのシイナ。クラスメイトであること以外は接点のない二人でしたが、ある日要がシイナの「思想ノート」を見てしまったことから関係が始まります。そこに書かれていたのは「死にたい死にたい死にたい死にたい」という呪われた文字列。しかし、それを否定せず積極的に受け入れていく要と、シイナは秘密を共有していくことになります。

印象的なのは、シイナが「死というものがどういうものであるか」を知るために行なっている「ある行為」。見開きでも描かれるそのシーンが非常に鮮烈です。物語冒頭で引用される、バタイユの『内的体験』で描かれる圧倒的に酷烈な太陽のように、シイナは「断行」しています。それを発端に、要とシイナの関係が深まっていくとともに、物語は更におどろおどろしい展開へと向かっていきます。

最初から危うさを全面に出してくるシイナですが、一方で要の奥底に潜む闇もまた度し難いほど深そうであることを醸し出して来ます。歪んだ二人の、真偽のあやふやな感情や衝動。恋情に似せた、全く異質な何かであるかのような想いの向かう先はどこなのでしょうか。

インモラル街道を驀進する本作は読み手を選ぶ部分がありますが、選ばれた人にとっては救いすら感じるかもしれません。

表紙の禍々しい装丁も非常に作品にマッチしています。シイナの妖しい色彩で煌く瞳が、特定の層を引き付けて止まないでしょう。表紙のシイナに何かを感じた方は、ぜひお手に取ってみて下さい。

 

文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

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