読むと子育てしたくなるファンタジー 『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』

マンガサロン『トリガー』2017年04月28日 印刷向け表示
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近年、王道の中世ファンタジー世界を舞台にして少し軸をずらした物語が隆盛を極めています。今回紹介する『うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。』も、その潮流に乗った「小説家になろう」発の小説のコミカライズです。

冒険者の青年デイルは、魔獣の討伐依頼で訪れた森で魔人族の少女ラティナと出逢います。ラティナは角を折られており、魔人族にとってそれは罪人の証。ラティナの父親と思しき遺体を認めたデイルは、ラティナを一人にはしておけないと街に連れて帰り、保護者になることを決意します。そうして、青年と魔族の幼女の少し奇妙で温かな日常が始まります。

どこかに大冒険に出掛けるわけではなく、大きな事件が起きるでもなく、魔人族の幼女と街で生活する様子が穏やかに描かれていくのですが……そこに何とも言えない心地良さがあります。

兎にも角にも、ラティナがかわいい! かわいすぎて最早かわいさの暴力です!! 普段は特に幼女にそこまで強い興味関心を抱いているわけではない私のような人間であっても、この幼女はずるい! かわいい! と思わされてしまいました。

漫画を担当するほた。先生が巻頭コメントで「娘。の可愛さに全振りするために入稿が終わると2キロ痩せてます」と仰っているのも納得です。このかわいさを生み出すためには想像を絶するHP(MP)が必要なのでしょう。

ラティナは初登場時からはもちろんのこと、主人公が寝泊りする宿「踊る虎猫亭」に帰ってからのシーンが一段とかわいいです。

不意にお腹が鳴ってしまい、恥じらい紅潮する顔。
チーズとミルクのリゾットを食べようとしたら猫舌で熱くて食べられない様。
二口目からはふうふうと十分に息を吹き掛けて食べ、その美味しさに満面の笑みが生まれる……。

あまりのかわいさに脳がショートするかと思いました。

そして、極めつけは一話のラストシーン。ぺちっぺちっぺちっぺちっべちっぺちっ(一つだけ「べちっ」なのがポイント)と執拗に頬を叩かれて起こされたデイルに、ラティナが要求したものとは……。

「くぴゅぅぅぅ……」という寝息や、美味しいものに出会った時の瞳の輝きなど、かわいいシーンは他にも枚挙に暇がありません。人間の世界で生きるために言葉を勉強をしたり、虎猫亭で調理や給仕のお手伝いをしたり。少しずつ少しずつ色々なことを学び、覚えて成長していくラティナにほっこりし、きゅんきゅんします。

庇護欲を掻き立てられることこの上なく、普段は眠っている父性・母性が思わず覚醒してしまうかもしれません。弾けるような笑顔で「いってらっちゃい」「おきゃーりなちゃい」と言われた時の天を衝くような衝撃に、実際に立ち会ったら堪えることはできるかなと想像してしまいます。こんな娘がいたら、親バカにもなるし「うちの娘は渡さん!」という風にもなるでしょうね。

酒場でたむろする冒険者たちのツンデレ具合もたまりません。コワモテで普段は新米が現れると睨みをきかせる屈強な男たちも、ラティナの前には形無しです。ラティナがマッシュポテトを作ったとなればこぞってそれを注文し、ラティナが迷子になったと聞けばたまたまその方向に散歩したくなったと捜索に出かける。踊る虎猫亭に現れた、かわいい小さなお姫様に、皆面白いほどメロメロです。『天空の城ラピュタ』でシータがゴリアテに搭乗した時のような、何とも言えない愉快さと痛快さがあります。

思わずデイルたちと同じ目線で、ラティナの健気な奮闘を応援してしまうこと間違いなし。幼女が好きな人には勿論のこと、そうでない方にもお薦めです。

巻末には原作者のCHIROLUさんの描きおろし短編小説も収録。毎回の扉絵もかわいいのですが、カバー下にも同様のおまけがありますのでお見逃しなきよう。

 

文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

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