毎日謎の美女の隣で晩酌できたら。かわいい教え子や従業員に迫られたら。求む、VR化!『おとなのほうかご』

マンガサロン『トリガー』2017年04月29日 印刷向け表示
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おとなのほうかご1 (MFC)
作者:イチヒ
出版社:KADOKAWA
発売日:2016-12-23
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こんにちは、マンガサロン『トリガー』店長の兎来です。

人は完璧なものが好きで完璧を求めるようでいて、実は少し欠けた所があるものをより好む性質があります。日本では「侘び寂び」という言葉で語られる、「不足の美」の概念。清少納言は「月は、有明。東の山の端に、ほそうて出づるほどあはれなり」と言い、村田珠光は「月も雲間のなきは嫌いにて」と言っています。完璧な満月よりも、少し欠けていたり雲に隠れてはっきり見えないくらいの方がかえって趣深いのだ、と。

これを人間に置き換えると、完璧な人よりちょっと欠点があるくらいの人の方がより好かれるということになります。全てにおいて完璧すぎると一緒にいて気を張ってしまったり、劣等感に苛まれ萎縮してしまったりしますが、多少ポンコツな所があると逆に安心できて親しみが湧く、というのは実感として理解できるところではないでしょうか。

というわけで、今回紹介するのは「黙っていればかわいいのにちょっと残念、でもそれが一周回って魅力的」という女性が沢山登場する『おとなのほうかご』です。

本作は一話が3~5ページ程度の掌編となっており、それぞれの登場人物が繋がりを見せるオムニバス形式の群像コメディとなっています。残念な美人・美少女のオンパレードというのも、なかなか乙なものです。

始まりは、小学校の教師である青年と、彼が行きつけの居酒屋でよく遭遇する苗字以外が謎に包まれたのんべえの美人・天野さんのお話。天野さんは年齢も職業もよく分からず、時折言動もちょっと意味不明で、残念な行動も取ってきます。でも、かわいい。それはもう、ズルい位に。回を重ねていくごとに、破壊力の高い描写が出てきます。

「天野は最近こうして先生と飲むのがダイのお気に入りらしいですよ」

「何となく私のコトひとつ…先生に知ってもらいたい気持ちになっちゃったんです」

惚れてまうやろーーーーー!!

そしてまた、天野さんときたら口の周りをビールの泡まみれにしながら実に美味しそうに呑むんです。本の装丁もビールのようになってますし、こんな漫画を読まされたら今夜は居酒屋でとりあえず生! と行きたくなってしまいます。そして、天野さん史上最も破壊力が高く、膝から崩れ落ちそうになったのが以下のシーン。

「約束とか予約もせずふらっと寄って先生と飲むのが気に入ってまして いるかいないかわならないけど…期待をしながらお店に来てもしそれで会えたら…それだけで嬉しくなっちゃいますから!

完全に天然の魔性ッ……! 仮にこれが敵国の仕掛けた罠だと確信できる状況だったとしても、甘んじて自ら引っ掛かりに行ってしまいそうです。恐るべし、天野さん。

それにしても、この偶然に委ねる仄かな関係って良いですよね。そこに行ったら会えるかもしれないし、会えないかもしれない。素性も知らないけれど、ただ飲んで語っているその時間がとても心地よい、という。うちのお店でも「あ、そのマンガ良いですよね」から始まる出逢いの瞬間を幾度か見てきましたが、そんな素敵な関係が沢山生まれてくれたら嬉しいです。

天野さんがあまりに魅力的すぎて天野さん語りが長くなりましたが、他にも様々な魅力的な人物が登場します。

人相が悪いものの真面目で朴訥とした居酒屋の店長、そんな店長に惚れているクールなバイトの女子高生・高木さん。

先生に惚れている教え子でジュニアモデルの早川。

天野さんの後輩で、子供の頃は親に行くことを許されなかった駄菓子屋に大人になってから喜々として通うお嬢様の水野さん。

静かで不思議な雰囲気を持ちながら、時に路上で包丁を、時に電車内で下ネタ本をその手に持つ霧崎さん。

完全にストーカーと遜色のない行為に及びながら、自分はストーカーではないと思い込んでいる園田さん。

残念な彼女たちの純朴な想いに端を発する奇行や、流石に人としてどうなのかという行動の数々、巻き込まれる男性陣のリアクションに思わず笑い、和みます。

そして、たまに発せられる決めの表情の良さ。美人なだけではなく、残念なだけでもない絶妙な加減です。一枚絵で純粋にかわいいと思わされるイチヒ先生の画力による魅力も非常に大きいです。

仕事で疲れて帰って来た時にはこういう漫画が良いですね。ビール片手に頭をからっぽにしてゆるゆると楽しめることでしょう。

QOLを高めるために、隣にいる天野さんと家でも一緒に呑めるVRソフトの開発が待たれます。

 

文章:マンガサロン『トリガー』

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