『ゴールデンボーイ』山本まさはる・昭和中期の「赤本・貸本」が、プリントオンデマンドで復刊!

角野 信彦2017年05月15日 印刷向け表示
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ゴールデン・ボーイ 「チャンピオン」 (山本まさはるシリーズ)
作者:山本まさはる
出版社:トラスト・ツー
発売日:2017-05-12
amazonオンデマンド(ペーパーバック)

昭和16年、大阪に生まれる。本名は山本正晴。姉は漫画家の新城さちこさん。矢代まさこさんとは夫婦。昭和33年(1958年)、『魔像』3集の「遺恨一太刀」でデビュー。『魔像』、『影』、『オッス!!』と日の丸文庫の貸本雑誌に多くの中編を掲載する。

 

日の丸文庫からは、山本まさはるジュニアシリーズ全7巻を刊行。引き続きひばり書房から、山本まさはる・シリーズ全40巻を刊行した。同シリーズには「ガン太郎日記」「中村君」「探偵屋NO.1」の三つの人気シリーズを中心に「ゴールデンボーイ」3部作などの名作を多く含んでいる。

 

貸本衰退後は、少年誌、青年誌と活躍の場を移して、スポーツもの、将棋などの勝負ものを中心に描いた。代表作に「ガン太郎日記」 「ゴールデンボーイ」 「竜が泣いた」 「あにおとうと」等がある。

 

 

山本まさはる漫画館( http://nishimitsu.com/2nd/yamamoto/index.htm )


 山本まさはるという漫画家の名前を知っている人間はそれほど多くないだろう。昭和33年(1958年)に日の丸文庫からデビューしていることから分かるとおり、彼は「貸本マンガ」時代に活躍した作家である。

中野晴行の『マンガ産業論』によれば、赤本・貸本というのは、ストーリー漫画家を生みだすインキュベーターの役割を担っていた。1950年代、書店で売られるマンガというのは、児童向けの雑誌の1コンテンツでしかなかった。500円以上のお小遣いをもらっていた子供が、2%から5%のあいだでしかなかった50年代後半において、120円から150円くらいの価格帯で販売された児童向け雑誌の消費者は主に親であり、親が購入するからには、内容がマンガ一辺倒というわけにはいかなかった。

その一方で、書店だけでなく、駄菓子屋や荒物屋の店頭で30円程度で売られる赤本は、子供を消費者として、自分の小遣いで購入できるものであった。また、子供たちが望むように全編がマンガで、主に64〜160ページの長編ストーリーマンガをコンテンツとしていたので、赤本という流通形態が「ストーリー漫画家」のインキュベーターになったのは当然だろう。1950年代、大手の出版社が児童向け雑誌のなかでひとりの作家に提供していたページは4ページから8ページだった。創作の自由度は赤本が圧倒的に高かったのである。

一方で貸本漫画が勃興してくるのは、朝鮮戦争の特需が終りを迎える頃からで、赤本のトップスターだった手塚治虫や横山光輝が、東京の大手出版社の月刊誌に移籍し始めた頃からである。貸本漫画も、当然エンターテイメントの中長編マンガがコンテンツの中心になり、さいとう・たかををはじめとするその後の劇画のトップスターたちなど、数多くの才能を育てていくことになる。現在はTwitterなどのウェブサービスから漫画家がたくさん生まれてきている状況と似ているのかもしれない。

こうした状況のなかで生まれてきた才能のひとりが山本まさはるである。絵に関して言えば、いかにも昭和30年代風の懐かしさを感じさせるものだが、ストーリーに関して言えば、さすが劇画の源流をつくり、平田弘史を排出した『魔像』の監修をまかされるだけあって骨太である。現代の劇画の構成要素の全ては山本まさはるのなかに見いだせるといっても過言ではない。

現在は古書店でもほとんど手にすることができない、山本まさはるの紙の本が、この度、オンデマンド出版で購入できるようになった。昭和30年代の貸本を手にとってページをめくる喜びをぜひ感じてほしい。

本シリーズをプリントオンデマンドで注文すると、上のようなイメージの実物を手にすることになります。平成の世に復活した「赤本・貸本」時代のマンガを、本棚に揃えてみるのも、平置きするのも、楽しみ方の一つとなりそうです。

マンガ産業論
作者:中野 晴行
出版社:筑摩書房
発売日:2004-07-10
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 今回のレビューを書くのにもっとも参考になったのがこの本です。ていねいに調べこまれたファクトの数々は非常に貴重なもので、マンガを産業として考えるときには外せない一冊です。

本宮ひろ志 珠玉の名編集 1
作者:本宮ひろ志
出版社:サード・ライン
発売日:2013-10-25
  • Amazon Kindle

「本宮ひろ志 / 山本まさはる 合作」とトビラに書かれている『ゴールデンボーイ』の電子書籍です。山本まさはるは原作を担当したようです。

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