『人形の国』!劇場版アニメ『BLAME!』!弐瓶勉を体験せずして人類史上最高のSFイヤーを過ごすなかれ!

北島 歩2017年05月16日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

人形の国(1) (シリウスKC)
作者:弐瓶 勉
出版社:講談社
発売日:2017-05-09
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

 今年は映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』『ブレードランナー2049』
公開がバッティングするという、古参サイバーパンクファンにとっては
かの名言「ふたつでじゅうぶんですよ!」を感涙とともに連呼せざるを得ない
奇跡的状況のなか

まさかの「みっつめのファクター」として
わたくしのゴーストを完全に昇天させた本作。

弐瓶勉『人形の国』

デビュー作『BLAME!』から一貫して
傑作SFを描き続けてきた氏の最新作です。

弐瓶作品とは何かと問われれば
キャラクター、ガジェット、フード、ワード、ワールドの全てが
若干厳しめのSF判定員を前に「誤解を恐れず」なんて弁明が一切必要ないほどの
超高純度なサイバーパンクSFであることは言わずもがな。

体験としては
広大な世界へ読者をぽつんと投げ出し
ストーリーの断片を自発的に探索、推測させることで
体験者それぞれの物語へ誘う、ゲーム作品で言うところの
「オープンワールド型RPG」である…

…だったハズなのですが…。

今作はまるで違います。

「人間を無機質な機械に変貌させてしまう「人形病」が蔓延する人口星を舞台に
小さな集落で仲間たちとともに平和な暮らしを営んでいた青年エスローが
ふとした事件を皮切りに、星の征服を目論む軍事国家との争いに巻き込まれていく。」

という、明快なプロットを柱に
「帝国に追われるヒロイン」「皇帝」「美少女のラッキースケベ」
「男なら拳でかかってこい!!」「地底世界」

など非常にポップで馴染みある要素群がのっけから
これでもかと繰り出されるのです。

いや…弐瓶作品で、ですよ?

台詞のほぼ8割を背景が無言で語る『BLAME!』の、ですよ?

前作『シドニアの騎士』以降
「黒」から「白」へと様変わりしたアートワークとともに
システム丸ごと「オープンワールド型RPG」から「一本道シナリオ重視型RPG」へと
変革を遂げた本作は、間違いなく弐瓶作品のネクストステージであると断言できます。

さて

超未来(≒超過去)に散りばめれたノスタルジックを通じて「永遠」に想いを馳せたり
新世界における「ルール」の発明だったり、シンプルにガジェットの新鮮味だったり
などなど、SFの醍醐味を挙げだしたら軽度のタイムリープ体験が生じるくらい
膨大な時間を要するわけですが

例えば「人体拡張」を経て
「肉」が「鉄」へと置き換わってしまった瞬間。
「恋人との記憶」を「外部脳」へバックアップした瞬間。

あるいは「時間跳躍」を経て
「ヒトでは無い種の文明」を目の当たりにした瞬間。
「ヒトでは無い種」が「ヒトのなれの果て」だと理解した瞬間。

ヒトの造りが、星のしくみが、宇宙の理が
テクノロジーによってひたすらに「アップロード」されてゆく過程で生じる

「え、まじで…?これ…生命さん的に合ってる?許可とか大丈夫…?」

という根源的な不安を、不死の時間「永遠」によってとことんまで圧殺し
「ああ…これでもう完全に戻れない…」と確信した瞬間の…

「はい次~!」的な。

「ばっははーい!!」的な。

いわば「超無責任な極限の開放感」こそが
SFというジャンルが内包する、個人的最重要事項だったりします。

そして年々細分化されつつあるSFというカテゴリーのなかで
とりわけその要素を掬い取り、エンターテインメントへと昇華
させてきたのがサイバーパンクであり
つまるところ弐瓶勉氏の作品に他なりません。

代々SFのテーマとして語られ、近年ではリアルでも危惧されつつある
「ヒトと機械との境界」や「タマシイの所在」なーんて悩みはどこ吹く風。
とっくに向こう側へと歩を進めたヒトもどきたちが繰り広げる
果ての果ての果ての果ての果ての果ての物語。

100年後の人類史よりも
1兆年後の「壁のシミ」にご興味をそそられる御方には
是が非でもご一読いただきたいと願う所存です。

『人形の国』の王道ギミックが今後どういったかたちで変容し
ストーリーラインを侵食してゆくのかを戦々恐々期待しつつ…

…はい、そうです。

「ダメ押しのファクター」劇場版アニメ『BLAME!』
5月20日よりすぐさま公開という…。

え、これ現実ですよね?
今晩夢に…「電気羊」出てきませんよね?

人形の国(1) (シリウスKC)
作者:弐瓶 勉
出版社:講談社
発売日:2017-05-09
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

 

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

HONZ会員登録はこちら

人気記事