ただのギャグじゃない。人間の尊さに満ち溢れた最高の兄弟マンガなんです。『本橋兄弟』

マンガサロン『トリガー』2017年05月18日 印刷向け表示
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本橋兄弟 1 (SPコミックス torch comics)
作者:RENA
出版社:リイド社
発売日:2016-09-10
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人々の熱気と欲望が渦巻く街、渋谷。その中心であるハチ公口方面からは少し離れた場所。やや落ち着いたビジネス街にその店は存在した。マンガサロン『トリガー』。そこには日々マンガを好むゲストが訪れる。まだ見ぬ作品との出会いを、同好の士との語らいを求めて。そして、今宵も――

「いらっしゃいませ」

入ってきたのはスーツ姿の若い女性。慣れない様子で店内を見回している。どうやら初めての来店のようだ。

「本日はご来店ありがとうございます。どのようなマンガをお探しですか?」

トリガーのマンガコンシェルジュは女性を席に促しながら、尋ねる。

「実は私……『兄弟萌え』なんです。とにかく良い兄弟が出てくる最近のお薦めはありませんか? できれば、読んで楽しい気分になれるものが良いんですけど」

「兄弟ですか。それでしたら、この『本橋兄弟』はいかがでしょう」

本橋兄弟 1 (SPコミックス torch comics)
作者:RENA
出版社:リイド社
発売日:2016-09-10
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 「『本橋兄弟』? 初めて見ました。どんなマンガなんですか?」

「これは、留年中の高二の兄・貴也と、高三の弟・智也を中心に繰り広げられる群像コメディです」

「二人ともめっちゃイケメンですね。絵が好みです! 三白眼も好きなので」

「『雷神とリーマン』でもおなじみのRENA先生なので、画力はお墨付きですね」

「お兄さんの貴也の方が学年が下なんですね?」

「見た目が怖く見える兄の貴也は、バイトに明け暮れていて留年してしまったようです」

「かわいいですね。萌えます」

「中身はもっとかわいいですよ。冒頭から弟の智也がフルスロットルでボケ倒して来て、兄の貴也がそれにツッコミ続けます」

「チベットスナギツネw自分のキャラ弁wwwやばいwwwww」

「本橋兄弟の他にも、濃い人物たちが登場します。まず、彼らの良き友人であり、貴也と同じカフェバーでバイトをしている恵。彼は誰もが認める美男子です。なのに、二次元の魔法少女リルムに夢中という」

「いわゆる残念なイケメンですね。割と好きです」

「そして、ガチムチ好きの生粋の腐女子・とみちゃんこと登美江。彼女も貴也と同じバイト先で、本橋兄弟たちで日々良からぬ妄想をしています。外見的には完璧にパンピーに擬態しており、その本性をほとんどの人には隠しています」

「『男子のわちゃわちゃで今日も生かされている』って、とみちゃん完全に私なんですけど! 流石に教科書に絡み絵は描いてませんでしたけど、言動の一つ一つにわかりみしかない……」

「そんなとみちゃんの更なる妄想の標的となるのが、貴也たちが務めるカフェバーのオーナー要司さんです。基本スペックがとても高くデキるビジネスマンでありながら、貴也が好き過ぎてストーカーじみた行為に及んでしまうという」

「何それおいしい。普段は変態で余裕あるイケオジが、ちょっと弱みを見せてくるとかもう、もう……!」

「他の登場人物も、一人一人が皆愛しくてたまらないんですよね」

「想像以上に濃ゆくて良いですね」

「ところで、最初は『アホな奴らだなぁ』という印象しか抱かないであろう純粋なコメディですが、徐々に趣も変わって来ます」

「え、やだ、ウソ……二人の過去のエピソード、なにこれ……幼い兄弟尊い…………」

「そうなんですよ。少しずつ明らかになっていく登場人物たちのバックグラウンドと、それに伴って描かれる繊細な感情表現には思わず胸が詰まるシーンも沢山あります。そんな過去を秘めた上で、日常ではこんな風に明るく振る舞っているのだと思うと健気すぎますよね。一見バカバカしいコメディを装いながら、過酷な世界で強く明るく生きる人間の素晴らしさへの讃歌のような作品です

「やばい……貴也の笑顔……本橋兄弟尊い…………。すみません、今日はもう大丈夫です。これは今から自分で買って読みます」

「ありがとうございます。単行本はまだ一巻だけで、続きがトーチWebで読めますのでぜひ追いかけてみて下さい」

「はい!」


渋谷の雑踏へと消えていく女性。マンガコンシェルジュは恭しく見送った。彼女が無事に『本橋兄弟』を手に入れられることを、そして願わくばカバー下のおまけも発見して悶絶してくれることを切に祈りながら。眠らない街の鈍色の夜は更けていく。

 

雷神とリーマン (クロフネコミックス)
作者:RENA
出版社:リブレ出版
発売日:2015-10-10
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文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

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