世界の重力が反転!?極限状況下でこそ現れる人間の本性が味わい深い『隣町のカタストロフ』 5月28日に読みたいマンガ

マンガサロン『トリガー』2017年05月25日 印刷向け表示
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隣町のカタストロフ(1) (アクションコミックス)
作者:菅原 敬太
出版社:双葉社
発売日:2017-04-28
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小学生低学年の頃、校庭で前屈運動をしていた時に足と足の間からふと空を見ました。すると、地面が上になり空が下になったような感覚になり「このまま重力が逆転してしまったら、空にどこまでもどこまでも落ちていってしまうなぁ……」と思って、少し怖くなりました。皆さんには、そんな風に思った経験はあるでしょうか。

もしかしたら、そんな誰もが一度は思ったことがあるかもしれない突飛な空想。今回紹介する『隣町のカタストロフ』は、それが現実になってしまった状況下で起こる惨劇を描いた物語です。

本作を手掛けるのは、『走馬灯株式会社』や『鉄民』など、独特のテイストを持った作品を生み出し続ける菅原敬太先生。本作は基本的にはサバイバルサスペンスですが、同じシチュエーションを基に毎話違ったキャラクターたちによって様々な人間ドラマが描かれます。

「もし、世界の重力が反転してしまったら」
作中では「地変天異」と呼ばれる、そんな恐るべき事態が限定的な空間で発生します。

事象自体は現実離れしています。しかし、命が極限の危機に瀕するシチュエーションによって剥き出しにされる人間たちの本性は非常にリアル。醜さも、高潔さも、この物語の中では等しく描かれて行きます。その意味では、『走馬灯株式会社』に少し近い部分があります。

ある者は翻弄され恐慌を来し、ある者は勇気を持って現状を打破しようとする。絶望の中に希望が生まれたと思えば、また圧倒的な不条理が襲い掛かり蹂躙される。人間の多種多様な側面を切り取ったそれぞれのエピソード単体でも面白く読める内容ですが、多様な視点から一つの事変が描かれることによって、物語の根幹にある本質的な設定が徐々に浮き彫りになっていく構成も巧みです。

果たしてこの事変の原因は何なのか。なぜ影響を受ける範囲が限定的なのか。物語が一体どこに落とし込まれるのか。続きを非常に楽しみにさせてくれます。

ちなみに、地表からどの高さまで重力が反転しているのか不明で、重力変化による気圧や酸素濃度の変化がどうなっているかも定かではないですが、通常時であれば成層圏と対流圏の境が11kmほど。人体の落下速度を約180km/hと仮定すると、1分で3kmなので成層圏に達するまでは3分半以上も高速落下し続けることになりますね。大抵はその途中で意識を失ってしまうでしょうけれども。バンジージャンプやスカイダイビングが好きな人であれば一回体験してみたいと思うんでしょうか(私は苦手なのでまっぴらごめんです)。

なお、作中で地変天異が発生しているのが5月28日。ですので、5月28日前後に読むとまた味わい深い物があるでしょう。つまり、今が読み時です。

 

走馬灯株式会社(1) (アクションコミックス)
作者:菅原 敬太
出版社:双葉社
発売日:2010-01-28
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文章:マンガサロン『トリガー』兎来栄寿

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