編集者が知らないマンガ家の姿がわかる。『あしたのジョーに憧れて』

佐渡島 庸平2017年05月29日 印刷向け表示
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作家と編集者は、かなり違う職業だ。

今、コルクでは、メンバー全員がFFSという診断テストを受けている。最近はやったm-gramのようなものだ。社外の有名な編集者やプロデューサーにも受けてもらってデータを貯めた。結果を見て、驚いた。作家と編集者、同じ「物語」という話題でこれだけ盛り上がれるのに、人格を形成する因子が全く違うのだ。作家は、保全生が高く、自分の世界観を改善によって、構築していく。一方、編集者は、拡散性が高く、常に新しい面白いことを求めて、動きつづける。全くタイプの違う2者だからこそ、補完する関係になり、協力し合えるのだ。「作家は編集者を必要とする」はよく言われることだが、データでもそれが如実に現れていて、非常に興味深かった。

編集者として新人の時代、僕はよく安野モヨコの仕事場に詰めていた。ずっといてボッとしているのも何だから、賄いをつくったりしたこともある。その時の様子は、「くいいじ」に編集者Sとして出てくる。そばにずっといながら、安野モヨコの本棚にあるマンガを読み漁っていく。そうすることで、マンガに対する考えをすり合わせて、よりよい打ち合わせができるようにしていた。また、そばにいて絵を描く様子をずっとみる。(これをされると集中できないという作家のほうが多いので、編集者としてもかなり貴重な経験だ)それで、作家がどこに、こだわるのかを理解できるようになった。

 そういう経験を積んだから、マンガ編集者としても、マンガ家の状況には詳しいほうだと思う。でも、『あしたのジョーに憧れて』に描かれていることは、知らないことだらけだった。

定規に何かが貼付けてあるのを見たことはあった。しかし、インク滲みをなくすためだなんていうのは、はじめて知った。


 スクリーントーンに使える角度と使えない角度があるということを詳しく知ったのも、初めてだった。
ちばてつや独特の「温かい絵」を生み出す方法の部分などは、マンガ家を目指す人、全員が必読な内容だ。

 
一流のマンガ家になるとはどういうことか? 現実を観察する眼が細かいということだ。その細かさがどの程度なのかということが、よく伝わってくる。

 そして、プロ集団のチームワーク、自分たちの生み出すものへの矜持も伝わってきて、そのまま、ちばてつや、川三番地のマンガを読みたい気持ちが抑えられなくなる。
 

 『あしたのジョー』という作品を、今改めて読み返しても、古びていない。最近、公開された鳥嶋さんのインタビューでも、マンガのコマ割りは、『おれは鉄兵』から学んだとあった。ちばてつやさんとその影響を受けた作家の作品を、まとめ読みして、マンガについて、語り合いをしたいと思った。 

 (画像:©川三番地/講談社)
 

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作者:川三番地
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あしたのジョーに憧れて(2) (月刊少年マガジンコミックス)
作者:川三番地
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あしたのジョーに憧れて(3) (月刊少年マガジンコミックス)
作者:川三番地
出版社:講談社
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