東京生まれ 東京育ちの女が紹介してくれる、センスのいい住所とは。
『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』

杉田 千種2017年06月08日 印刷向け表示
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吉祥寺だけが住みたい街ですか?(4) (ヤンマガKCスペシャル)
作者:マキヒロチ
出版社:講談社
発売日:2017-04-07
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吉祥寺ってどっちかといえば「郊外」…?

私は東京で生まれた。都内の学校に通って、就職したのもぜんぶ東京の会社だったので、きちんとした一人暮らしの経験はない。

だからそもそも、自分で住む場所を選ぶ、という経験がないのだが、それにしても、吉祥寺が住みたい街ランキングの上位に必ず上がることが、ずっと不思議でならなかった。

吉祥寺をバカにしているわけじゃない。

ただ、吉祥寺は結構遠い。

渋谷と新宿から直通といったって、別にどちらとも、凄く近いわけじゃない。

そして23区ですらない。したがって、都心への通勤電車はいずれの路線も激混みだ。それなのに、人気のせいで家賃は割高。多少おしゃれな店が集まっていることはわかるけれど、そんなに特別な街なのか。たとえば代々木上原とか、清澄白河とか、五反田とか、便利で感じのいい街はほかにもたくさんあるじゃないか!


積年の疑問に答えてくれたのが本書だった。ドラマ化もされたこの人気作品は、2017年6月現在、4巻まで刊行されている。

最強! 東京生まれ東京育ちの不動産屋姉妹

舞台は吉祥寺の不動産屋。吉祥寺の物件を探すため、そのお店を訪ねる人たちの物語だ。

不動産屋を経営しているのは双子の姉妹。この姉妹が、次々にお客さんたちの要望を聞き、吉祥寺以外の街の物件を紹介していく、という構成になっている(一部、リノベーションなど、例外的なスト-リ-もある)。

おいしいお店がたくさんある、都心からちょっと離れてて安心する、映画館がある、一つの街で大体の用事がすませられる、通勤で中央線が便利...etc.

なるほど、吉祥寺が魅力的な理由は人によってさまざまだ。

でもだからこそ、吉祥寺だけがいいとは限らない。そういう思い込みを、姉妹は強引に解きほぐしていく。亡くなった親の稼業を継いで不動産屋を営む姉妹は、東京生まれ東京育ち。ご両親の不動産屋さんとしての才覚を含んだDNAに加え、東京を知り尽くした地元民としての感性で、つぎつぎにハマる街をお客たちに紹介してくれる。これが読んでいて、とても痛快だ。

どこに住むか=どう生きたいか

どこに住むか、を選ぶということは、どう生活するかを選ぶことと同意である。

けれど、「出没!アド街ック天国」をヘビ-に観たところで、山田五郎のようにほぼ東京全域の街に詳しい人には到底なれず、従って多くの人は選択肢を広く持てない。そんなとき、不動産屋姉妹の情報はどれだけありがたいものだろうか。

雑司ヶ谷、大森、駒澤大学、福生、蔵前、十条…物件をめぐって姉妹とお客さんが巡るまちのなかには、住んでいないかぎり、なかなか足が向かないところもたくさんあって、いま家さがしをしていない者にとっても、読んでいるだけで楽しめる内容となっている。

気に入った場所に住める、というのは自立して頑張っている人の勲章でもある。6~7月は引っ越しする人の少ない穴場の月とも聞く。おうち選びに迷っている人、ぜひ姉妹のナビを読んで、街選びの参考にしてみてはいかが。

 

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