残酷絵に魅入られ殺人を繰り返す画家。事件の死体を見て興奮してしまったエリート刑事。女への復讐を誓いクスリ漬けにするヤクザ。それぞれの人生がSM女王の部屋で交差する。『瑠璃子女王の華麗なる日々』 SМの女王様が深イイ話をして、「悪のサドマゾ」を懲らしめる

川口 比呂樹2017年06月13日 印刷向け表示
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 ブルジョワやエグゼクティブにSM愛好家が多い。

いつからだろう。


誰に刷り込まれたかわからないが、「そうに違いない」と確信を持っている。

そうだ、そうだ。

以前に編集者がなにかの打ち上げのときにまことしやかに話していたのだった。


「何を言ってるんだろう、この人は」と。


それが本人の嗜好のことを指していたのかは、今となってはまるでわからない。

秘密の場所がある、だとか秘密のメンバーがいる、だとか。ちょっとした都市伝説のようだ。この作品「瑠璃子女王の華麗なる日々」にももちろん秘密の場所が出てくる。

瑠璃子女王の華麗なる日々 1巻
作者:巻来 功士
出版社:Beaglee
発売日:
  • Amazon Kindle

クラブSHANGRILA。そこには、見目麗しい女王、薬師瑠璃子(やくし・るりこ)とスティーブン・セガールのように強いガードマンの孝山(こうやま)がいる。そのクラブには、心に闇を抱えた人間がまるで吸い寄せられるように集まってくる。さながら「悪に堕ちかけている人ホイホイ」といったところか。

事件の死体を見て興奮してしまったエリート刑事。あちゃ~。
殺人場面を想起して夜な夜なうなされる高校の美術教師。うわちゃ~。
17歳にして極道の社会に入ってしまった少年。ありゃ~。
借金をしてまで子どもを塾の勉強漬けにする母親。ひぇ~。

自発、他発問わず、引き込まれるようにクラブと女王に関わっていく。基本的にこの悩める人たちは、まだなんとか救いようのある人達(?)で、瑠璃子女王のありがた~い教訓や身をていしての指導によって、なにかしらの形で報われる。

 

↑「BEST OF なんともいえない表情(笑)」で、指導室に引き込まれるエリート刑事。表情から4コマで「バタン」は、まさに芸術か。

↑指導室で改心して号泣する探偵。横たわる鞭がまるで疲れ切っているようだ(笑)

『瑠璃子女王の華麗なる日々』より引用 ©巻来功士/Beaglee

SMがテーマではあるが、なんとお涙ちょうだいの感動ものだったりするのが、本作のゴイスーなところ。ただし、著者である巻来功士の世界がそんなに「生ぬる~い」わけがない。「ゴッドサイダー」や「ミキストリ」で壮絶な悪の存在を描いてきた巨匠がSMを描くと、それはそれはおぞましいモンスターを作り上げるわけで。

浮世絵の無惨絵に取りつかれて殺人を繰り返す画家。怖っ。
家族への独占欲が溢れかえって娘をテレビアンテナに縛り付ける男。やばっ。
全ての女への復讐を誓い、女をクスリ漬けにするヤクザ。ひぇ~。

 

↑実はこのヤクザは元優等生。どうしてこんなに歪んでしまったのかをこの後、本人が自ら赤裸々に語りだす(笑)

『瑠璃子女王の華麗なる日々』より引用 ©巻来功士/Beaglee

彼らは、スターウォーズでいうところの「シス」のようなもので、完全にダークサイドに堕ちきっている。いわゆる「悪のサドマゾ」だ。巻来功士ワールドのくせものキャラたちの暴走が止まらない怪作となっている。時に瑠璃子女王とその暗黒面に堕ちきったものたちとの会話が、「カヲル君、何を言ってるのかわからないよ」のレベルに達しているときもあるが、それもまぁ魅力の一つかと。

女王の身を呈しての熱い指導の後で涙を流して改心する人々の笑顔を見て、「まさか、そんなに~?」とウケること間違いなし。巻来功士が読者の心にがっつりと爪痕を残した問題作にぜひ挑戦していただきたい。

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