人気最下位アイドルと女オタのプラトニック愛を描く『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

小沢 あや2017年07月01日 印刷向け表示
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人気最下位アイドルに全身全霊を捧げるオタクの物語

事前情報もないまま、そのタイトルだけで購入したマンガが最高だったので、全アイドルオタクにオススメしたい。『推しが武道館いってくれたら死ぬ』は、7人組地下アイドルグループ「ChamJam」のメンバー「舞菜」に全身全霊全財産を捧げるオタク「えりぴよ」が主人公の純愛物語だ。えりぴよは、ChamJamのライブを最優先に行動し、パン工場でバイトしている。そして、そこで得た収入の全てを舞菜に注ぎ込むのだ。自分自身にお金をかけることはなく、常に高校時代の学校指定ジャージで行動している。

口下手で内気な舞菜は、グループ内の人気は最下位。立ち位置も後列。握手会の列にも、えりぴよ以外のファンの姿はない。なかなか運営からもプッシュされない「干されメン」である。そんな舞菜を支えるべく、えりぴよは毎回握手券付きCDを買い占めるのだ(おかげで他の人が買えず、舞菜に新規のファンがつかないのだが……)。

推しが武道館いってくれたら死ぬ 1 (リュウコミックス)
作者:平尾アウリ
出版社:徳間書店
発売日:2016-02-13
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「いいんです。舞菜ちゃんの為のお金、舞菜ちゃんの為に使いたいだけですから」

この作品の魅力のひとつは、えりぴよのパワーワードであろう。一部紹介したい。

「いいんです。舞菜ちゃんの為のお金、舞菜ちゃんの為に使いたいだけですから」
「私の人生には舞菜の1分1秒が必要なんです」
「舞菜は生きててくれることがわたしへのファンサだから」

グループ内人気投票が実施された際にも、最下位の舞菜を押し上げるため、えりぴよは投票券付きCDを大量に「積む」のだが、そこに見返りは求めない。推しには少しでもいい立ち位置で輝いて欲しいし、少しでも大きなステージに立って欲しい。それが武道館に続くのであれば本望……。そんなえりぴよの極端な行動は、過激ではあるものの、アイドルオタクであれば共感出来るのではないか。

アイドルとオタク、という絶対的な距離で育まれる純愛物語

うっかり、街でプライベートの舞菜に遭遇してしまったえりぴよは「お金出してないのに会話なんかできないよ!」と、のたまう。アイドルとそのオタク、という線引きをきっちりと自分からひいているところに好感が持てる。CD1枚購入につき5秒という、推しとの時間。それを大切にしているからこそ、外で会っても過度に話しかけることはしないし、電車の中で遭遇した際には、きちんと車両を変えるという配慮も忘れない。

本作は百合でもあるが、アイドルとオタクという絶対的な距離がある関係だからこそ、精神的なつながりを軸に、ほんわかと読める内容になっている。自分を一生懸命支えてくれるえりぴよに対し、どんどん心惹かれだす舞菜。握手会で「塩対応」してしまうのは、えりぴよに対して緊張してしまうから。舞菜がどんなにえりぴよを求めても、アイドルだから自分から会いに行くことは出来ない。ただ、現場でえりぴよを待つしかないのだ。ふたりの精神的距離は縮まるのか? ChamJamは武道館に行けるのか? 等、今後の展開に目が離せない。

アイドルとオタクの関係は、多額の金が絡む疑似恋愛だとか言われることもある。しかし、そこにあるのは純愛である。個人的には、「オタクがアイドルを応援する」というよりは、「オタクがアイドルに応援してもらっている」のだと思う。彼女たちのステージを観ることによって、オタクは頑張れるし、多少の世知辛いことも乗り切れる。アイドルのおかげで、オタクの人生は煌めくのだ。

推しが武道館いってくれたら死ぬ 3 (リュウコミックス)
作者:平尾アウリ
出版社:徳間書店
発売日:2017-06-13
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