ピュアな恋心と狂気は、きっと紙一重。死線を超える恋のゆくえ『青野くんに触りたいから死にたい』 無垢と狂気が混ざり合う異色のラブストーリー

岡本 真帆2017年07月14日 印刷向け表示
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周りが見えなくなるくらい、人を好きになったことはありますか?

私は去年の夏に映画『シン・ゴジラ』を観て以来、俳優の高橋一生さんに夢中です。

好きすぎて都合のいい夢ばかり見てしまうし、aikoのどんな恋愛ソングを聴いても高橋一生のことを思い浮かべてしまいます。大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』も、「星野源演じる平匡さんをもしも高橋一生が演じていたら?」という妄想フィルターを通して視聴していました。毎週、画面にいない高橋一生の架空の演技で、テンションがブチ上がっていたんです。我ながら、狂ってるな、と思います。

また、人混みの中を歩くときも、下を向いている暇はありません。だって、すれ違う人の中に高橋一生がいるかもしれない。芸能人とはいえ、あちらも同じ国で生きている生身の人間。極端な話、偶然街角でぶつかって恋に落ちる可能性もゼロじゃない。ゼロじゃないんですよ。0.0000000001%くらいは…あります。たぶん、ある!!!


ピュアな恋心と狂気は、きっと紙一重。

夢中になって周りが見えなくなるくらい好きになってしまう。みなさんも一度はそんな恋に落ちたことがあるのではないでしょうか。そう。盲目的な「好き」の気持ちは、ときに世界との関わり方をガラリと変えてしまうのです。


今回ご紹介する作品は『青野くんに触りたいから死にたい』。盲目的で狂気的な恋に落ちてしまう天然少女・優里ちゃんと、その恋愛相手である青野くんの関係性を描く、異色のラブストーリーです。

青野くんに触りたいから死にたい(1) (アフタヌーンKC)
作者:椎名 うみ
出版社:講談社
発売日:2017-06-23
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 <あらすじ>

図書委員の優里ちゃんは、少し地味で、クラスでも浮いている女の子。体育の授業でペアを組まなきゃいけないときも、一人だけ余ってしまいます。 人生で一度も男の子としゃべったことがなかったけれど、あるとき別のクラスの青野くんと話したことがきっかけで、あっけなく、恋に落ちてしまいます。
 

初めて男の子と喋っちゃった……わたし彼氏ができちゃうのかもしれない!!


優里ちゃんは自分のことを強く印象づけるため、勇気を振り絞って青野くんに告白。二人は恋人同士になり、ごく普通のお付き合いをスタートさせます。しかし幸せな時間は束の間。告白から二週間経った朝、優里ちゃんは担任から青野くんが交通事故で亡くなったことを聞かされるのです。お通夜にも行けないくらい憔悴し、「もう死んじゃいたい」とふさぎこむ優里ちゃん。自室にあるカッターで自分の手首を切ろうとしているところに、突然、幽霊の青野くんが現れて…。
 



好きな人が幽霊となって戻ってくる、というストーリーはこれまでにもいくつかありますが、この作品が他と違うのは、主人公の思考・行動とこの先のストーリー展開がまったく読めないところ。

触れることができない青野くんになんとか触りたい。枕をつかって抱き合ってみたり、携帯電話で他人と会話をしているかのように装いながら人前でも青野くんと会話をしたりと、コミカルでシュールなシーンが続きますが、幽霊の青野くんと過ごすうちに、優里ちゃんは“優しい青野くん”ではない、“もう一人の青野くん”の一面を見るようになります。


そのシーンの描写が、すごいんです。これはぜひとも見ていただきたいのですが、
正直恐ろしくて、ぞっとします。怖い。


優里ちゃんは、人間が超えてはいけない境界線をまたごうとします。 間違いなく、危ないゾーンへ足を踏み入れようとしているんです。青野くんとこのまま一緒にいたら、どうなってしまうのか。“もう一人の青野くん”を受け入れてしまって、本当にいいのか?

どうなってもいいよ 
青野くんの側にさえいられれば
他には何もいらない


優里ちゃんのまっすぐで盲目的な想いが、物語を不穏な方向へと押しやっていきます。誰かを想う気持ちは、他の誰でもない、その人自身のもの。 「好き」という感情は誰にも否定できません。たとえそれが、いつか終わりを迎える“いっときの感情”だとしても、今相手を好きであるということは誰にも邪魔できないのです。

 切なくて、コミカルで、恐ろしい。

異なる複数の感情が同時に押し寄せてきて、泣いたらいいのか、笑ったらいいのか分からなくなる作品です。
 

わたし青野くんに会う前は
どうやって生きてきたんだろう…

 

優里ちゃんと青野くんにとってのハッピーエンドはどこにあるのか?猛スピードで展開するストーリーから、目が離せません。

レビュアー:岡本真帆(@mhpokmt)

青野くんに触りたいから死にたい(1) (アフタヌーンKC)
作者:椎名 うみ
出版社:講談社
発売日:2017-06-23
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