ホリエモンVS井上純一 対談01:俺は「同人王になる」『中国嫁日記』井上純一のエロ同人時代 ネットマンガ実戦研究会

マンガHONZ編集部2017年07月17日 印刷向け表示
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マンガHONZを運営しているのは株式会社マンガ新聞という会社なのですが、この度、マンガ新聞が「ネットマンガ実践研究会」というオンラインサロンを始めることになりました。マンガというものが産業として成立した1950年代に新人漫画家のインキュベーターになったのが、書店だけでなく、荒物屋や駄菓子屋で30円程度で売られている「赤本」でした。いま、この新人漫画家のインキュベーターになりつつあるのは、あきらかにネットメディアです。

そこで、そのネットメディアでどうやってマンガを「創り・知らしめ・売る」のかを考え、実践していく場としてサロンをスタートします。堀江貴文や佐渡島庸平だけでなく、多彩なゲストを招待して楽しく熱い議論が起こり、有望な漫画家や編集者が生まれる場にしていきたいと考えています。

今回は、ネットマンガ実践研究会のスタートを記念して、ネットマンガ実践のパイオニアのひとりでもある、『中国嫁日記』の井上純一先生と堀江貴文が対談しました。マンガHONZにて、全5回でお送りします。

中国嫁日記 一
作者:井上 純一
出版社:エンターブレイン
発売日:2011-08-12
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堀江:本日はよろしくお願いします。なんか井上さんがぼくのメルマガ読んでくれているって聞いたんですが。

寺田:なんかさっきその話でもりあがってましたね

堀江:ありがとうございます。刑務所にいたときから(笑)

寺田:(笑)

井上:刑務所にいたときのほうが面白かったくらいですよ(笑)

ネットマンガ実戦研究会

堀江:あっ、そうですか?

堀江:やっぱり漫画家さんだとそのほうが面白いのかなあ

井上:いろいろ想像しますからね

堀江:あれマンガ化されたんですよ

井上:それも読んでますよ。また印象が違うんですよ。

堀江:あー、そうですか

井上:文章のほうがナマっぽかったというか。あのエッセイマンガはすごくよくできてて、まるで本人が描いてるようだったたんですが、文章のほうがナマっぽくて、いろいろな想像ができました

堀江:へー、ぼくはマンガになってうれしかったんですよ。

寺田:『刑務所なう』ですか?

堀江:そうそう。『刑務所なう』に収録されているマンガが全て一冊にまとめられて、本になってるんですよ。

井上:ちなみに両方もってますよ。集めたやつも、前の分厚かった時代のやつ(『刑務所なう』)も

堀江:あれ、すごい検閲がはいるんですよ(怒)。だから『刑務所なう』に書けなかったことを『刑務所わず』に書いたんですよ。例えば中の人間関係とか当然書けないし、

井上:ああ、そうだったんですか。だから歯の折れた理由とかも詳細に『刑務所わず』で書いたんですね 

刑務所なう。 完全版 (文春文庫)
作者:堀江 貴文
出版社:文藝春秋
発売日:2014-07-10
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刑務所わず。 塀の中では言えないホントの話
作者:堀江 貴文
出版社:文藝春秋
発売日:2014-01-14
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 菊池:堀江さん、井上さんのことをただの漫画家だと思ってるでしょ?

井上:もともとはゲームを作ってたんですよ

堀江:フィギュアとかやってるっていうのは知ってましたけどね

井上:フィギュアの会社もやってたんですけど

菊池:普通の漫画家さんではないんですよね

井上:マンガはね、描かないつもりだったんですよ

堀江:描かないつもりだったっていうのはどういうことなんですか?

井上:マンガっていうのはねえ、人生の全てを賭けないといけないんですよ。ありとあらゆるものを。昔の話ですよ、今は違いますよ。昔はねえ、例えばベタを塗るのでも、いちいち筆で塗るんですよ。こんな小さな面積を。そんなことしてごらんなさい、そうですねえ、1週間のうち6日くらい潰れますよ。まちがいなく。そのつぶれるというレベルは、マンガを書いている以外にテレビ観る時間くらいしかない、というようなレベルで潰れるんですよ。だから正直、漫画家にだけはなりたくなかったんですよ。

堀江:時間が取られるということですね

井上:だから中途半端なことばかりやってたんですよ。テーブルトークRPGが好きだったんで、そういうの作ったりとか。

菊池:そもそも堀江さん、テーブルトークRPGって知ってます?

堀江:もちろん、もちろん

井上:昔のパソコン雑誌とかに載ってたんですよね

寺田:昨日収録で、たまたまその話でましたね。

堀江:昨日たまたま日本ファルコムに行ってたんですよ。加藤会長とイースⅡをやりながら、あ、イースⅡじゃないや、ザナドゥだ。懐かしいゲーム特集、ナツゲーで。

寺田:そこでテーブルトークRPGの話もでましたね。

堀江:中学2年生のおれに伝えてあげたいよ。お前は将来、立川の日本ファルコム本社で加藤会長とザナドゥをやるんだって

寺田:お前は将来いっしょにゲームするぞと

堀江:ハンバーグ食べながらね

井上:ハハハハハ

菊池:井上先生、マンガ業界に入るきっかけになったのはどういう仕事なんですか?

井上:だから、一番最初はテーブルトークRPGですよ。『天羅万象』という和風テーブルトークRPGをつくったんですよ。メカと戦国時代が合体したやつです。ナムコで出てた『未来忍者』というOVAがあったじゃないですか。しらないか(笑)

天羅万象・零 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
作者:井上 純弌
出版社:エンターブレイン
発売日:2000-08
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未来忍者 慶雲機忍外伝 [DVD]
監督:雨宮慶太
出版社:バンダイビジュアル
発売日:2003-10-24
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井上:オーバーテクノロジーと日本風の文化がまざったようなテーブルトークRPGをつくったんですよ。当時は珍しかったんです。これは英訳されて、いまは向こうの人がやってるんですよ。英語で。だから『天羅万象』は海外で展開してるんですよ。

堀江:へえー

井上:そういうふうにして、テーブルトークRPGを山のようにつくったんですよ。本棚1本というといいすぎかもしれませんが、1棚、2棚くらいは埋まるんじゃないかな。全部ぼくの関係の書籍だけで、井上純弌っていうだけで。でも買ってる人間は1,000人から2,000人くらいしかいないですよ。でもそれぐらい分量がでてる

堀江:へえー。1,000人から2,000人のコアユーザーが必ず買うみたいな感じのものだったですか?

井上:ぼくのファン、純粋に買う人間は、2,000人くらいが限界だと思います。新作のテーブルトークRPGを出すとその2倍から3倍の人が買ってくれて、そのゲームで新たなデータを載せて、より高度な遊びができるというものを出すとだんだん客が減っていって、最終的に1,000人から2,000人レベルで定着する。そうしてまた新しいシステムを出してっていう繰り返し。どこのゲーム業界もいっしょだと思いますが。それのアナログゲームっていうのは狭い業界だったんです。

堀江:へえー。

井上:でまあ、それは置いといて。それとは別に、同人誌っていうのをやってたんですね。同人誌の方が儲かる。

堀江:同人誌っていうのはどういうのをやったんですか?

井上:エロ同人ですよ(キッパリ)。ありとあらゆる版権事業のうち、同人誌が一番儲かりますよ。だって無版権(権利に関するフィーを払わない)だから。無版権なのになんで捕まらないのか?訳がわからない(笑)

井上:そんな状態でも本が出せるんですよ。ぼく、まじめに同人やってたんですよ。昔は「評論系」って呼ばれてて。アニメを評論してた。でもある日気づいたんですよ。「これはなんにもならないぞ」って。この先はなにもない。ぼくが出した仕事で10年後、井上純一はこんなやつだっていわれることは絶対にない。そんな日はこない。じゃあお前がやっていることはなんだ?俺が心血を注いでつくってる本はなんだ?無版権で表立って出せない、知ってるやつは2,000人から3,000人くらいしかいない。そのためになんで命削ってんだって思ったときに、コミケやってる人には悪いんですが、こころに誓ったんですよ。

同人誌とは金儲けの手段だと。

堀江:ハハハハハ

ネットマンガ実戦研究会

 井上:いや、正確に言うと、そういうものだと思い込もうとしたんですよ。そしたらどこまでいけるか。俺は史上最大に金が儲かる同人誌をやろうと。そうしたらやることは簡単ですよ。同人誌っていうのはそもそもすっごい儲かるんですよ。簡単に。もちろん描ける人はですよ。

これはねえ、平野耕太(代表作は『HELLSING』『ドリフターズ』)がいいこと言ってて。「ボールを投げて、木の棒で打つだけで2億円稼ぐ人がいるんですよ。簡単でしょって言うやつがいるんですが、そのためにどんだけ血を流してるか」って話ですよ。同人作家もそうですが、マンガ描く技術っていうのは、確かに血反吐をはく技術ですけど、できるやつは野茂みたいにできるんですよ。だから俺はホームランバッターになると誓った瞬間から全ての修練を積んだわけです。

HELLSING 1 (ヤングキングコミックス)
作者:平野 耕太
出版社:少年画報社
発売日:1998-09-01
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ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)
作者:平野 耕太
出版社:少年画報社
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井上:普通の同人作家というのは簡単に儲かるから仕事をしないんですよ。薄い本っていうでしょ、あれなんで薄いか知ってますか?厚い本は出せないんですよ。

菊池:そろそろ寺田さんついていけてないようです

寺田:頑張ってます、いま(笑)

井上:薄いでしょ。同人誌は薄いんですよ。あれいくらでも厚くできるんですよ。でもしないんです。なぜなら、薄いほうが楽だから。だって量描くの大変でしょ。

堀江:はい、はい。

井上:でも薄くて売れるんだったら薄いほうがいいじゃないですか。だって楽だから。

堀江:なるほど

井上:だから俺は心機一転、厚い本をだそうと

堀江:ほうほう

菊池:ずいぶん飛びましたね(笑)

井上:厚い本を高値で売るとすごく売れる。なぜかというと、同人誌が普通の商業誌に勝てる点が一つだけあるんです。同人誌のエロが商業誌のエロに勝てるのは、シーンが長いっていうことですよ。いくらでも自分でシーンを増やせるんで。

堀江:エロシーンを増やすっていうことですか?

井上:そうです。だって商業誌のエロ漫画っていうのは、20ページくらい、長くても30ページくらいで終わっちゃうわけですよ。ところが、同人誌ではこれを60ページや100ページにできるんですよ。それができるのは同人誌だけです。そんな描き下ろしで100ページを相手に投げつけられるのは同人誌だけなんで。それをやったらねえ、これがびっくりするぐらい儲かる。

堀江:へえー

井上:井上純一は最初は評論系って呼ばれてたのが、壁側に追いやられる※わけですよ、列がいっぱいできて。で、金が儲かると、目的は「海賊王に俺はなる」って言っておきながら、本当は海賊になってなにするっていう希望はないわけですよ。俺はルフィに聞きたいですよ、君は海賊王になって何がしたいのかって?みんなを救いたいなら「俺は人を救いたい」って言うべきでしょ(笑)、単に海賊王になっても意味ないじゃないですか(笑)

※壁側に追いやられる→壁側は人気サークルが行列をさばきやすくするために優先的に配置されるポジション

井上:似たようなもので「同人王に俺はなる」って言ってたけど、それで得たお金で何をするかは全く考えてなかったんですよ

堀江:なるほど。それいつ頃ですか?

井上:それが、電子書籍とかが出てくる前の、同人誌がピークと言われている時期

堀江:2000年ぐらいですか

井上:そうですね、ちょうどハルヒ※がでてきたころがぼくのピークでしたね。

※涼宮ハルヒシリーズは2003年スタートの『涼宮ハルヒの憂鬱』などのシリーズからなるライトノベル。マンガ化、アニメ化もされた。累計800万部。最も成功したライトノベルのひとつ。

堀江:ぼくだから、実はその頃にはライブドアで「DLサイト」っていう会社を買収してたので同人誌がメチャクチャ儲かってんのはその会社を見てたんでわかります

井上:だって、元手がほとんどタダで儲かるわけですから。取り締まられないわけですから。取り締まれ(笑)俺も取り締まられろ(笑)

菊池:井上さんが薄い同人誌をつくってたのは90年代ですよね。そんときのエロ同人で10数ページで500円とか1,000円だったんですか?

井上:1,000円は大手のサークルで絵がものすごいうまいやつとか。1,000円がいいんですよ。列ができたときにさばきやすいので。1,000円か500円。

堀江:ハハハ

ネットマンガ実戦研究会

 

井上:だったら1,000円で、ここにさえ並べば絶対に外さないというサークルを作れば儲かるんですよ。もちろんこれは過去の文法で、今は通用しないと思いますけど。あとこれだけは言いたいんですが、売れる同人屋になるためにやることは、じつは真面目に同人誌をやることなんですよ。決して手を抜かない。目的のために全てを削ぎ落として、野球選手のように、ホームランを打つ体をつくらないと上まで登りつめられないんですよ。すべてを捨てて。

堀江:そのときに全てを捨てて絵がうまくなったと

井上:いまでもそんなに絵は上手ではないけど、エロ漫画としてはかなり水準のところまで行けた思いますよ。当時としてはですけどね。エロ漫画の絵はムーブメントがあるので今はもうだめですけど。

堀江:そのあとフィギュアに行くんですか?

井上:そう、儲かったお金がどうしようもないので、ドブに捨ててやろうとおもって(笑)

堀江:ドブに捨ててやろう(笑)

(続きます!)

中国嫁日記 (六)
作者:井上 純一
出版社:KADOKAWA
発売日:2016-12-28
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続きはこちらです

ホリエモンVS井上純一 対談02:『中国嫁日記』前夜、フィギュア作りを始めて「カネをドブ」に

ホリエモンVS井上純一 対談03:『中国嫁日記』がどう始まり、いかにしてヒットしたか?

ホリエモンVS井上純一 対談04:『中国嫁日記』とマンガの新しいマネタイズについての話

ホリエモンVS井上純一対談05:『中国嫁日記』から漫画家がマンガを描く以外のマネタイズを考える   

【告知:サロンイベント8/25】
田中圭一・佐渡島庸平トークライブ
「漫画家のこれまで、今、これから」

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出版社:中央公論新社
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