ホリエモンVS井上純一 対談02:『中国嫁日記』前夜、フィギュア作りを始めて「カネをドブ」に ネットマンガ実践研究会

マンガHONZ 編集部2017年07月18日 印刷向け表示
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中国嫁日記 (二)
作者:井上 純一
出版社:エンターブレイン
発売日:2012-03-10
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*:本記事は、マンガ新聞社が運営するオンラインサロン「ネットマンガ実践研究会」のイベントレポートです。

井上:当時は中国に行ってフィギュアを作るっていうのは夢物語だったんで

堀江:なんで中国に行ったんですか?

井上:なんでって、話が来たからですね。中国に工場があってフィギュアが作れるらしいぞって。当時フィギュアブームだったんで、この儲かったで売れないフィギュアを作って全部ドブに捨ててやろうと

寺田:当時、フィギュアって売れなかったんですか?

井上:何百万もする金型に投資した上に、それが売れるかどうかわからないという商売だったので、売れなければ一気に崩壊するという可能性があるわけですよ。ギャンブルみたいなもんですよ。

堀江:でも、このチャンネルでグッドスマイルカンパニー※に行ったことがあって、めっちゃ儲かってるじゃないですか、あの会社

※2001年松戸でバンプレストの社員だった安藝 貴範が創業。当初はタレント事務所だった。現在はフィギュア・玩具などの企画・製造・販売を行う。

井上:あのですねえ。それはですねえ(ため息)

井上:堀江さん、バイクメーカーってどれくらいあったと思います?バイクってものがうまれたときですよ。100社以上あったんですよ。それが今はどれくらいあるか?

堀江:3社とか4社とかですね

井上:だから、潰れていったバイクの会社はみんな「バイクは儲からない」「バイクで失敗した」って言うと思いますよ。でも今残っているバイクメーカーはそんなこと言わないと思いますよ。だって彼らは勝ってきたわけだから。

井上:そりゃ、グッスマは言いますよ、いくらでも、彼らは勝ってきたんだから(怒)

堀江:ハハハハハ

ネットマンガ実戦研究会


菊池:そうなるんだ!(笑)

井上:俺は敗退した身分だから言いますよ。「儲からない」って(怒)


寺田:めっちゃ面白い(笑)

井上:それでぼくが「フィギュアは儲からない」っていうと、「グッスマもうかってんじゃん」って言うやついるんですよ(怒)でも、中小企業が疲弊してるってことを言ってんのに、大企業が儲かってるっていうこと言ってもしょうがないんですよ。知ったことかって言うことです。

堀江:やっぱりやり方が違ったんですかね

井上:大きい会社はどんどん有利になります。金型に投資するじゃないですか。小さい会社はひとつにしか投資できないけど、大きな会社はいくつもの金型に投資できるから、1個や2個のフィギュアが外れても痛くないんです。

堀江:最初にガツンとそこに金をハッたんでしょうね

井上:そうなんですよ。グッスマの社長ってあまりフィギュアに詳しくない人なんでしょ?

堀江:そうですね、あまり詳しくないですね

井上:それができないんですよ。ちょっとでもフィギュアに詳しいとそんなことはできないって思うんですよ。

堀江:なるほどねー

井上:金型にこんだけ投資して一気にこれだけリリースしていくというのは、いまだったらそんなこと簡単に思いつくだろうと言うかもしれないけど、何百万もするものを、自己投資で回してたらそこに思いは至らないです。アタマのいいヤツですよね。※

堀江:なるほどねー。そういうことなんですねー。

※グッドスマイルカンパニーは、当初はチョコエッグなどの食玩の製造から出発している。その生産のソーシング先が国内では間に合わなくなって、中国での自社生産に乗りだしたという経緯がある。ロックフェラーが、油田を見つけ出して一攫千金で当ててやろうとする人と違って、オイルの精製とディストリビューションの事業から入り、自分の精製したものこそ「スタンダード」だということで、スタンダード・オイルを設立する。そこから、資金的な余裕が出てきてはじめて、油田というリスクの高い分野に投資した。グッスマも同様、フィギュアという一攫千金で湧く市場で、「製造委託」から入り、投資余力が出てきたころに、金型に投資して一気にマーケットを獲得する。ロックフェラーがスタンダード石油を作った経緯を研究したのだろうか(笑)

井上:そうです。ぼくはフィギュアで失敗したんですが、それはもっと後の話。フィギュアでは失敗したんですが、同人フィギュアでは儲かったんですよ

堀江:フィギュアと同人フィギュアの違い、っていうか同人フィギュアってどういう分野なんですか?

井上:商業フィギュアと同人フィギュアの違いはたったひとつしかなくて、それは「コミケに間に合わせる」っていうことですよ

堀江:コミケに間に合わせる(笑)

井上:コミケに間に合わせないとゼロなんですよ。商業フィギュアはいくらでも伸ばせるんですよ。半年でも一年でも。ところが同人フィギュアは「この日この時」までに商品がなければ死ぬんですよ。これがいかに大変なことか(笑)

堀江:なるほど。ハハハ(笑)

井上:そのために俺は中国に行き、工場の近くに住み、このサイクルを回し始めたんですよ、同人フィギュアの(笑)

堀江:なるほど(笑)

井上:いつかは潰れると思いながら、やるからには夢を叶えたいということで。なんの「夢」だ?ハハハ(笑)

堀江:ハハハハ

井上:それでも納得の行くフィギュアができたのは最後だけですね。同人フィギュアの。全部中途半端でした。それは本当に買ってくれた人ありがとうですよ。今聞くと、なんか有名な会社の社長とかが並んで買ってくれてたみたいですよ。あの人がって驚くような人が

堀江:で、エロ同人誌はやめちゃったんですか?

井上:それは、フィギュアをエロ同人誌に付けて売ったんですよ。エロ同人だけでも大変なのにそれにフィギュアをつけるという地獄のような日々を送ったんですよ。でもこれがまた儲かりましたね(笑)

寺田:結局儲かったんですね(笑)

井上:それが、『中国嫁日記』で描かれているように、たったひとりの人間のおかげで全部消えましたね(笑)

堀江:ぜんぶ騙し取られたんです

寺田:あ、騙し取られたんですか?

井上:どうなんだろうなあ、あれ、難しいっすねえ

寺田:わたしも『中国嫁日記』ちらっとは読ませていただいたんですが

井上:まあ、仲間がいて、その仲間にある意味裏切られたんですかね

寺田:あららら

井上:俺は本当はあまり裏切られたとは思ってないんですけどね

堀江:あー、なんかあれでしょ、使っちゃったんですよね

井上:あと、仕掛品※という生産できないものをたくさん作っちゃってたんですよ

※原材料から最終商品になる前の加工された原材料のこと。売り出せないにも関わらず、会計上は資産となり、倉庫に保管しておくといつまでたっても経費計上できない。業績の悪い工場にはたいがい仕掛品がたくさんある。

井上:フィギュアがうまくいかないから、新たに作ろうとするんだけどうまくいかない、そうやって仕掛品だけで6000万ありましたからね。
堀江:仕掛品はどうなってたんですか?

井上:塩漬け※ですよ。金型だけの状態とか、原型だけの状態とか。これが軒並み使えなかった。

※仕掛品を廃棄せずにそのまま残しておくこと。利益を嵩上げしたい上場企業や融資契約で債務超過になったら資金の引き上げになる中小企業が、損失を隠すためにやることが多い。

寺田:それはなんで使えなかったんですか?

堀江:失敗作だから

寺田:単純に失敗作だからなんですね

井上:僕にいわせれば、これで採算を取ることは不可能だという商品ばかりだったので

堀江:商品をつくれば損すると

井上:フィギュアって基本売れないもので、それを大量生産して販売できるようになったのは中国工場のおかげで、そうしたことに関わる過程で、中国工場の社長が冗談で井上純一を結婚させようという話になり

堀江:冗談だったんですか(笑)

井上:どうせこいつうまくいかないから、結婚させてみようぜって

堀江:ハハハハ

寺田:冗談なんですね

堀江:結婚する気なかったんですか?

井上:あの瞬間だけ。あの瞬間だけお金あったから気の迷いみたいなもんで(笑)

ネットマンガ実戦研究会

 堀江:へえー。じゃああんま興味なかったんですか、女性とかに

井上:いや、女性には興味ありますよ(キッパリ)。エロ漫画描いてたんだから。

堀江:あーそうですよね(笑)エロ漫画描いてたんだもんね。

井上:あーでも、一時期ぼく、ホモ説が流れてましたね。そういう話が一切なかったので。

堀江:なんでそんな感じだったんですか?

井上:そんなことよりも、命を懸けることがあったので。エロをやるよりはエロを描いているほうがいい。みんなをエロい気持ちにさせている方がいい。

堀江:ちょっと名言ぽい

寺田:名言ぽいですね(笑)

堀江:迷いの方かもしれないですね(笑)

井上:これが何が面白いかって言うと、もうこれってエロじゃないんですよね。極めていこうとしているものって。エロって生産活動じゃないですか。ところが俺のやっているものは、人類を増やすとか家庭を幸せにするとか、そういうものから切り離されている崇高な概念のようなものを、修行僧のように突き詰めていくと、周りが「おーエロい」といって群がってくるわけですよ。

何言ってんだ俺は(笑)

井上:だから僕はグラビアアイドルとか見ると親近感が湧くわけですよ(笑)。彼女たちはそれによって自分が幸せになろうじゃなくて、俺と同じようなことを考えてると思ってるんですよ。より多くの人をエロい気持ちにさせてやろうと。

堀江:どうですか元グラビアアイドルとして?

寺田:あっはい。絶対その質問来ると思ったんですけど(笑)。正直そこまでは考えてなかったですね。芸能界で食べていくための登竜門としか考えてませんでしたね(笑)。

井上:登竜門か。じゃあ違うな。

寺田:最近で言う、セクシー女優の方たちはそういう気持ちかもしれないですね

井上:そうか、じゃあセクシー女優とおなじ(笑)。そういうことを極めていった暁に、結婚したら、井上純一はだめになってしまったんですね。

堀江:えっ、ダメになっちゃったんですか?

井上:女房ができると一番がエロじゃなくて女房になってしまうんですよ

堀江:なんか、まともなこといいますね(笑)。今までとぜんぜん違う、まともな話になってきてますが(笑)

井上:つまんない男になったなあ(笑)。俺のことを同人誌時代から知っている、生粋の同人屋からしてみれば、井上純一はいつになったらエロ漫画を描くんだと思っているんじゃないかと

堀江:生粋の同人屋!!

井上:俺の相手にしていたような奴らのことですよ(笑)。あの巨大な会場の中で、真っ先に俺の本を買いに来てくれるようなありがたい人のことです(笑)。あいつは腑抜けたなと思ってると思います。そうやって普通になっていく過程で、あまりにも嫁が面白いので、これをマンガにしようと。

堀江:へえー

井上:ここがまた俺の悪いところで、「これやったら儲かるぞ」って。普通にマンガを出して儲かるぞと。今みたいにブログで儲かるぞとかは思ってなかったんですね。当時は、多くのマンガ家がそうでしょうけど、雑誌に持ち込まないとマンガって出ないぞと思ってるわけですよ。何にびっくりしたかって、今でもその思い込みは続いてるんです。

堀江:このマンガ新聞をいっしょにやっているコルクって言う会社の佐渡島くんが言ってたんですけど、NHKのプロフェッショナルの企画で、若者が佐渡島くんのところにマンガを描くために修行に来るみたいなのをやったんですよ。その子達にTwitterで1000人フォロワーを獲得しようというのを言ったら、まったく響かないらしいんですよ。Twitterは素人がやることだから、プロのマンガ家はTwitterなんかやったりしないみたいな感じで。

井上:いまでも、僕のことをバカにするプロの方っていますよ。そういう感じで。「まあ井上くんのやっていることは・・・・」みたいなところがあるわけです。

堀江:あっ、そうなんですか!

井上:まあ正確に言うと、本が出るまではそうだったんですよ。本が出て、あれだけブレイクしたあとは、「ぼくあれ好きでね」っていう、手のひらくるーっていうのが始まりましたけど。自分自身もそうですけど、手のひら返したいわけですよ、人は。だから、僕の前で手のひらを返してくれる人は基本的にはいい人だなと思うようにしてますから。「お前、むかし俺のことバカにしてたろ」なんてことは思わない。くるっと手のひらを返してくれた時点でその人のことを好きになりますから。で、みんな手のひらをかえしてくれたわけですよ。

井上:で、俺思ったわけですよ。本出さないとダメなんですね。いくらPV数があろうとも、Twitterでフォローされようともダメ。本出て、何冊売ったではじめて手のひらがかえるんですよ。

堀江:へえー、でも手のひらはそうかもしれないですね

井上:そうなんですよ。よっぽど最先端の人間はフォロワー数言うだけで、手のひら返すかもしれないですが

続きます!

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ホリエモンVS井上純一対談05:『中国嫁日記』から漫画家がマンガを描く以外のマネタイズを考える  

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