ホリエモンVS井上純一対談05:『中国嫁日記』から漫画家がマンガを描く以外のマネタイズを考える ネットマンガ実戦研究会

マンガHONZ 編集部2017年07月21日 印刷向け表示
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中国嫁日記 (五)
作者:井上 純一
出版社:KADOKAWA/エンターブレイン
発売日:2015-12-26
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 菊池:今日のテーマは、井上さんがこれ以上やるならどんなことをやったらいいかというテーマなんですけど(笑)

井上:実は、ぼくは(堀江さんの)メルマガとってるから、質問で送ろうと思ってたぐらいですよ(笑)

堀江:有料メルマガはそれはそれでありだと思いますよ

井上:でもそれ、自分でコンテンツ作らなければいけないんでしょ?

堀江:まあ、でもそんな手間でもないですよ。僕が有料メルマガのコンテンツのフォーマット作ったようなもんですから。Q&Aコーナーを入れるとか、時事ネタを解説するとか、近況報告書くとか、あと、編集後記っていうのを発明したんですけど、

井上:あれ面白いですね。このメルマガって、悪い意味でよく出来てて、編集後記の前に読者からの声っていうのがあるじゃないですか。あそこって読み飛ばすんですけど、あそこには「感謝」しか書いてないじゃないですか。素晴らしいメルマガです、面白かったですとか。だから読み飛ばすときに洗脳されてるんですよ。最後に編集後記がズバッときて、そのときには「次も読むか」となってる(笑)。あれねえ、多くの人がマネするべきですよ(笑)

堀江:それもそうなんですよ。確かに読者からの声っていいコンテンツだなって思ったんですよ。僕、刑務所に入ってるときに雑誌をよく読んでたんですが、読者からの声って意外と面白くて、よく読んでたんですよ。新聞とかでも、そういうのよく読んでたから、「私の意見」とかも素人臭くて意外と面白いんですよ。

井上:面白い、面白い

堀江:それで、編集後記も面白いんですよ

井上:なんでだろ、編集後記読んじゃうんだよね

堀江:正直、両方とも、俺は全然手がかかんないんですよ

井上:おー、それもそうだな

堀江:読者からの声に反応してるのは編集者だし、編集後記を書いてるのも編集者なんですよ。僕は出す前に、その内容をザラッと読むだけです。だから、僕の手をかけずにコンテンツが出来るっていうのが一番いいんですよ。

井上:そう。それが漫画家では一番難しい、まずマンガ描かなければいけないので(笑)

堀江:でも、僕は漫画家じゃないんで勝手なこと言いますけど、ここでマンガアプリのトリガーっていうのを、「マンガのセレクトショップ」っていうコンセプトでやってんですけど、そのパーティーに東村アキコさん※に来てもらったんですよ。彼女はネームもものすごい早くって。「なんでこんなに仕事できるの?」って聞いたら、「私、メッチャ速いから」って。

東京タラレバ娘(9)<完> (KC KISS)
作者:東村 アキコ
出版社:講談社
発売日:2017-07-13
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※『かくかくしかじか』でマンガ大賞受賞。『東京タラレバ娘』はドラマ化もされた。

井上:うらやましい

堀江:彼女、いま4つか5つくらい連載やってますよね。

菊池:そうですね

井上:なんであれはできるんですか?

堀江:うん、だからネームを描くのが速いんですよ

菊池:月刊のもので、1話3時間くらいでネーム切れるみたいですね

堀江:それに、絵を描ける人はいっぱいいるわけじゃないですか。

菊池:20人位アシスタントいるみたいですよ

堀江:本宮さんの話が面白くて、どういうふうにアシスタントを募集したかというと、求人広告に「俺とそっくりな絵を描くやつ募集」って書いたらしいです

井上:田中圭一※が応募しろって話ですね(笑)。あーそんなことしてたんですか(笑)

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち
作者:田中 圭一
出版社:KADOKAWA
発売日:2017-01-19
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※田中圭一は手塚治虫などの有名マンガのタッチを模倣して、自分の作品を創作する漫画家。自身の体験を語った『うつヌケ』は20万部を超えるヒットとなった。

堀江:そんなことで集めてたんで、要は本宮さんそっくりな絵を描ける人がいっぱいいる訳ですよ(笑)。だから東村プロでも同じだと思うんだけど・・・

井上:えっ、あの人自分でも結構描いてるんじゃないですか?

堀江:そう、東村さんは手も速いから、自分でも結構描いてるんですけど、背景とか、自分で描かなくてもいいところがいっぱいあるじゃないですか。そういうところはちゃんと分業してますよね。

井上:生活マンガはそこが難しくてね―(笑)。わかります、最近僕もはじめてアシスタント雇ったんですけど、その人が真顔で言うんですよ。

「なんで井上さんは『中国嫁日記』を量産しないんですか?」
「たくさん描けばいいじゃないですか?」

僕はたくさん描くという意識がなかったもんだから、「あ、そうか?背景人に任せてもっと描けばいいんだ」と。なんなら2,3人雇って描けばいいんだと。どうもそういうふうにならないんですよね。言われて初めてそういう意識になったんです。

堀江:なんなら、今は、会場をお借りしているメディアドゥの子会社で、背景とかカラーとかをやってくれる会社があるんですよ。

井上:そんな会社あるんですか?

堀江:簡単な指定で『インベスターZ』のポスターまで作っちゃうんですって

井上:へえ~

堀江:だから、そこにアウトソーシングすればいいんですよ

井上:その「アウトソーシング」という概念が「生活漫画家」には無いんですよね。よーく考えたらやればいいんですよね。

堀江:僕の刑務所マンガは、毎日書いてた日記を、編集Sが面白く脚色して、いっしょにネームを考えて西さんが作画するっていうかたちで作られてたんで、僕がやったのは原稿チェックだけですよ。「この便器のかたちが違う」とか(笑)。そういう作り方どうですか?

井上:やってみてもいいかもしれないです

井上:もう一本、『中国嫁日記』の他に描いてるマンガがあるんですが。日本は医療制度とかが素晴らしいので、中国人に「日本に住んでます」っていうと、いいですねっていう話になります。中国に誇りをもって住んでいる中国人はかなり微妙ですよっていうくらい中国はキツイ。この話も自分でマンガ描いて、『中国工場の琴音ちゃん』っていうマンガですけど。これも結構うれてるんですけど。これを載せているサイトも問題あるんですよ。週に1回4コマを載せてる僕が一番PVを稼いでるんじゃダメだろっていう(笑)

中国工場の琴音ちゃん
作者:井上 純一
出版社:一迅社
発売日:2015-07-15
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中国工場の琴音ちゃん 1 (ダンガンコミックス)
作者:井上純一
出版社:ダンガン
発売日:2016-06-05
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堀江:あー

井上:今だったら自分で作ったと思う。簡単に作れる。なぜ出版社のサイトでわざわざマンガ描いてるんだっていう。訳がわからない。自分でやりゃーいいんだよ(笑)

堀江:ハハハハ(笑)。それは俺もそう思いますよ。

井上:でしょ。

堀江:それが一番稼げると思います。つまり、みんな最初の資本がないんですよ。このあいだ三田紀房※さんとそういう話をしたんです。

「三田さんはなんで商業誌で描いてるんですか、三田さんだったら自分のメディアでやってもメチャクチャ売れるでしょ。固定ファンもいるし、1000万なり2000万なりを自分で出資してやれば、ブログでも稼げるし、出来上がって本になっても売れるでしょ」って話をしたら、三田さん的には週刊連載で追い立てられてるのがすごくいいみたいです。

インベスターZ(18)
作者:三田紀房
出版社:コルク
発売日:2017-06-23
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※『ドラゴン桜』で講談社漫画賞受賞。『インベスターZ』や『アルキメデスの大戦』など代表作多数。

井上:あー、うん

堀江:いま三田さんは『アルキメデスの大戦』っていうのをやっていて、すごくいいマンガなんですよ。

アルキメデスの大戦 1-6巻セット
作者:
出版社:
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井上:知ってます、知ってます。

堀江:だけど、やっぱり途中でどんどん変わっていくらしいんですね。コンセプトが。

井上:わかる、わかる。あの人のマンガはいつもそうだ(笑)あれ?こんな話だっけ?っていうのがよくある(笑)

堀江:もっというと『沈黙の艦隊』とかもそうじゃないですか。最初は「潜水艦マンガ」描くかって感じだったのが、いきなり独立するとか言い出して。

沈黙の艦隊 (1) (モーニングKC (192))
作者:かわぐち かいじ
出版社:講談社
発売日:1989-12
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井上:国家の話になりましたよね

堀江:そう。潜水艦が国になるって話になっちゃって

井上:国家とは何かっていう話になりましたね

堀江:最初っからそのコンセプトを考えてて、すげえなかわぐちかいじさんって思ったら全然ちがってて(笑)

井上:ええーっ(笑)

堀江:最初っからそんなコンセプトは無くて、流れでそうなっちゃったらしくって(笑)

井上:あいつシーバットに乗って、最初っからあれを企んでるんだと思ってましたよ

堀江:僕もそう思ってたんですよ。ただ、この前、『モーニングを作った漫画たち』※っていう連載があるんですけど、それにかわぐちかいじさんが出ていて衝撃の事実を知ってしまった俺は、みたいな。

※かわぐちかいじの『沈黙の艦隊』のエピソードは、2017年4月20日(木)発売のモーニング21号に掲載されている。作者はコージィ城倉。

モーニング 2017年21号 [2017年4月20日発売] [雑誌]
作者:二宮志郎
出版社:講談社
発売日:2017-04-20
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井上:ぜんぜんそうは思えないです。

堀江:今やってる『空母いぶき』もすごい面白いんですが、きっとあれも試行錯誤して、コンセプトが変わってるんじゃないかと思うんですよ。何がいいたいかっていうと、週刊で追い立てられて、編集者といっしょにストーリーを作っていく部分が必要なんですよ。

空母いぶき 1 (ビッグコミックス)
作者:かわぐち かいじ
出版社:小学館
発売日:2015-09-30
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井上:そうなんですよ。だからそれが無くて済むのが「絵日記マンガ」なんですよね。結局そういうのがあまり必要ないじゃないですか。

堀江:僕はね~、エッセイ漫画だと最近はやっぱり『やれたかも委員会』※ですよ

※cakes で連載されていた吉田 貴司の「あのときSEXが出来たかどうか」という後悔を、現在から振り返って検証するマンガ。6月28日に双葉社から書籍が発売された。

やれたかも委員会 1巻
作者:吉田 貴司
出版社:双葉社
発売日:2017-06-28
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堀江:この作者の人も、出版社の編集者にものすごいトラウマがあるらしいですよ。

井上:あ、そうなんですか?こんなにマンガ上手いのに?

堀江:そう、こんなにマンガが上手いのに、俺のことを理解してくれないっていうようなのがどうもあったらしいですよ

 井上:それでねぇ、つい「編集者に僕のこと理解させなければいけない」って思っちゃうんですよ。習性で、「この人がいなければ俺のマンガは発表できない」ってつい思っちゃうんですよ。

堀江:あ、なるほど。

井上:もしくは、「この人が僕のことを好いてくれると何かいいことがある」って思うんですよね。

堀江:僕の場合は「編集S」は僕が雇ってるんで、ぜんぜんそういうことを思わないですね。

井上:そう、本当はそうあるべきなんですよ。だって作家のほうがエライんだから(笑)

堀江:僕の本はずっとそういうふうに作ってきたんで、マンガじゃなくて字の本。出版社から企画がきても、この企画つまんないんで、こんな本つくらせてくださいとか言いますもん。

井上:世の中、堀江さんが考えているような方向に変わらないかなあ。実際、そっちが真実だと思うんですよ。ネットでマンガを発表するのは、変化球でも奇襲戦法でもなくて、「沢山の人が見ているところにマンガを投入する」っていう、実は王道なんですよ。なんでそうならないんだろう(笑)。

堀江:「漫画家マンガ」を描かないといけないんじゃないですか。ツイッターでマンガをやってすごく儲かってるみたいな(笑)

堀江:それと、もうひとつ面白いなと思ってるのはクラウドファンディングなんですよね

井上:あーそうそう。それは思う。

堀江:連載にかかる資本がないっていう話だったじゃないですか。漫画家はお金がないからそこに資本投下できないっていう。あと編集者に追い立てられないからっていうのもあるんですけど。最初にファンの人達からこうやってお金を集めてしまえば、アシスタントや編集者を雇う費用にあてられるじゃないですか。っていうシステムも、井上さんにぜひやってもらいたい。

井上:ハハハハ(笑)。そこでいくつか問題なんですけど、「自分が儲かってるマンガ」を描くのはすごく難しいんですよ。すごい才能が必要。なぜかっていうと、儲かってるやつはムカつくからです(笑)。それに比べて「貧乏マンガ」はすごい簡単(笑)。ありとあらゆる共感が得られますから。だから手法的な問題ですね。

あと、俺がやるのは、俺の時間を投資するのは今できないのでキツイ。俺がもっとネームが速ければとかっていう話になる。なら、一番簡単にお金になる方法って、『中国嫁日記』を描くことで、その最短の道をとったほうがいい。ただ、やっぱりクラウドファンディングはありだと思います。俺がやれるかどうかは別にして。

堀江:なるほど、なるほど。だったら僕、(ブログで成功する)「漫画家マンガ」考えてみますよ。

井上:おー、ぜひお願いします。でね、それが典型的な作り方になるべきだと思います。「漫画家マンガ」っていうと、雑誌に載ったとか、単行本が売れたとか、そういう話ばっかりになるじゃないですか。それ以外のマンガがないから、「ブログから成り上がって成功した」っていう徒手空拳でやるストーリーのマンガを描いたほうがいいと思います。

菊池:じゃあ、ちょっといい話題になってきたところで。今もう10分押してるんですが、井上さん、最後にひとことよろしいですか。

堀江:もうそんな時間ですか。ずっと喋ってたい(笑)

井上:もうこれを言うのも何度目かになるんですが、今はマンガ制作の新しいシステムができる過渡期なのですが、もうすぐマンガというのはこういうものだという常識が更新されるはずです。ヤンマガやスピリッツに載せているよりも、俺は自分のメディアを持ってマンガを作り、もっとお金を取れるぞ、ということが常識になります。だって現実がもうそうなってる。俺が言えばいいんだけど(笑)。でもその時代はすぐそこに来てると思いますよ。俺じゃないやつ誰かが言え(笑)。今が過渡期なので、マンガを描いている人は、編集者に持っていくよりも、自分でやってみたらいいと思います。失敗したら失敗したでいいじゃないですか。

 堀江:そうですね。ということで、今話題の「ネットマンガ実践研究会」でそういうのやるんですね。

菊池:ホリエモンサロンのマンガ版です。マンガ新聞で運営していこうと思ってまして。例えば井上さんプロジェクトとして、堀江さんが考える方向で、井上さんのマンガをもっと売れるようにするとか、新しい制作方式を実践したりするという場になればと考えています。

堀江:みんなで儲けましょうという場ですね

井上:確かに、俺にあさりよしとおさんが言ってくれたようなひとことが、他の人にもあれば、もしかしたら変われるかも

堀江:だって、今日、2,3個名言でましたよ。「自分の作品に注目させる方法を考えろ」とか、「編集に掲載する理由を与えろ」とか結構いい話が。そういうのってやっぱり対話をしないと出てこないじゃないですか。違う視点からものを見る人と交流したほうがいいんですよ。だから、実際に売ってる人たち、編集者とか作家さんとかをゲストに呼んでやっていこうかなと。

井上:なるほど。それなら「ネットマンガ実践研究会」はいいですね。こっから出てきますよ、有望な新人や作品が、そのうち。

堀江:ここからそういう作品が出てきても面白いかなーと思ってます。

井上:素晴らしい。応援します。これが常識になるといいですね。

菊池:それでは皆さんありがとうございました。

【以前の記事はこちらです】

ホリエモンVS井上純一 対談01:俺は「同人王になる」『中国嫁日記』井上純一のエロ同人時代

ホリエモンVS井上純一 対談02:『中国嫁日記』前夜、フィギュア作りを始めて「カネをドブ」に

ホリエモンVS井上純一 対談03:『中国嫁日記』がどう始まり、いかにしてヒットしたか?

ホリエモンVS井上純一 対談04:『中国嫁日記』とマンガの新しいマネタイズについての話

 

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田中圭一・佐渡島庸平トークライブ

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