女性作家が描くED男子の物語が密かなブーム?
なぜ女は勃たない男に萌えるのか

和久井 香菜子2017年07月29日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

男性にとって深刻な悩みであるはずのED。これが今、女性漫画家の間で密かなブームになっています。

『やわらかい。課長 起田総司』はすでにここでもご紹介しました。

やわらかい。課長 起田総司(1) (モーニング KC)
作者:カレー沢 薫
出版社:講談社
発売日:2015-02-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

 仕事もできるイケメンED課長が、女性たちに次々とチンを狙われる話です。腹がよじれそうなほど笑えます。

また女性向けのエロコミック・ティーンズラブでもED男子が登場します。

失楽園に濡れる花 1 (恋愛宣言)
作者:冬森雪湖
出版社:大都社/秋水社
発売日:
  • Amazon Kindle

 

 イケメンに騙され何もかも失った英愛は、優しげで決して彼女を傷つけない馨に強く惹かれていきます。だけど彼女の思いを受け入れてくれない馨。
その理由を彼は「僕は……ED……勃起不全…なんだ…」と告白します。
男性からしたら、かなり思い切った告白ですよね、特に若いのに。しかもエロ漫画のキャラなのに。真性役立たずじゃないですか。

しかし英愛の返事はこうです。「そんな理由で、どうやって馨のこと嫌いになれっていうの……?」。
男性には死活問題であろうEDを「そんな」扱いですよ。エロ漫画なのに。
英愛は続けて「…セックスなんかどうでもいいの。あなたが側にいてくれさえすれば」言っています。エロ漫画なのに。
いろいろ前提がおかしくて大好きな作品です。

『カカフカカ』にもED男子が登場します。

カカフカカ(1) (KC KISS)
作者:石田 拓実
出版社:講談社
発売日:2014-08-12
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

 

 同棲していた彼が心変わりし、家を飛び出した寺田さん。シェアハウスに住んでみたら、初めての相手だった元カレがEDになって住んでいた、という話です。EDなのに、なぜか寺田さんには勃つんです。そこから、二人の微妙な関係が発展していきます。寺田さんにしか勃たないのなら、もう迷うことはないんじゃないですかね。

『ケッペキさんとEDくん』は、「めちゃコミ」で連載中のコミックです。元カレからDVを受けた沙絵が、会社で注目の九鬼さんと、トラウマを乗り越えるべくリハビリに励むという物語。もちろん九鬼さんはEDです。どうやら1年前から勃たないらしく、仕事も上手く行ってないそうです。彼曰く、「勃たなくなったから立ち上げたモノが不発なんだって」だそうです。誰がEDに引っかけて面白いことを言えと?

同じく「めちゃコミ」には『セクサロイドはED。』という、男性とロボットのBL作品があります。ノンケ男子にEDのロボットが襲いかかるという、もう何が何だかよくわからない斬新なお話です。

 

ざっと見ただけでも、これだけの作品が並べられます。ちゃんと調べたらもっとあるかも。

『やわらかい課長……』はともかく、ほかの作品を見ると、女たちの間ではEDは一定の萌えみたいなんですよね。 これだけの作品に取り上げられる理由のひとつは、女にとってEDが身近ではなく、その苦しみがピンとこないというのがありそうです。だから「そんなこと」とか言ったり、EDで面白いセリフを言ったりできるんです。

そしてもう1つ。『失楽園に濡れる花』も『カカフカカ』も『ケッペキさんとEDくん』も、男で痛い目に遭った女子たちの物語です。それは彼の浮気だったり、弄ばれた経験だったり。こうした「男性の性欲」に傷ついた女性たちが安心して関わることができるのが、ED男子だったりするわけです。

勃たないんだから、身体を傷つけられることもないわけですよ。EDという事象は、男子たちが冷静で草食で繊細だという象徴のように扱われているんです。

『カカフカカ』はさらに、自分だけに勃つことで、浮気の可能性もなく、かつ彼にとって自分は特別なんだというスペシャル感を醸し出しています。男性機能のオンオフをみごとに利用した萌えパターンです。

EDに悩んでいる男性にはまったく意味のわからない萌えかもしれません。女たちによるとても無責任な表現かもしれません。でもこれらは元気な男性たちに傷つけられてきた女子たちの密かな復讐なのかな、なんて思ったりもします。

記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら

人気記事