私の夫には私公認の恋人(既婚・子持ち)がいる。「婚外恋愛許可制」の夫婦を描く『1122』 『逃げ恥』よりも劇薬結婚マンガ!

宮﨑 雄2017年07月31日 印刷向け表示
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ライフイベントというものは、とかく持論を振りかざしやすいトピックだ。

誰もが経験があり、かつ、過去の自分の選択が間違っていたなんて思いたくないからだろうか。持論を正しいものとして、他人に押し付ける例は枚挙に暇がない。かくいうこの記事もその一種だ。

しかしその受け手となる側にも持論があるものだから、正しかろうが間違っていようが、それらが素直に受け入れられることはあまりない。受け入れられないから、話し手はまた伝えようとする。そうして不毛な持論での殴り合いはいつまでも続く。

なかでも「結婚」は殴り合いの中で最も使用頻度の高い武器だろう。「自分の頃は…」「そろそろいい年なんだから…」「良い人いないの…」などなど、使い古された各種ラインナップが大量にある。本当にやめてほしい。

去年『逃げ恥』のドラマがヒットしたのは、そんな“他人の持論”に対する声なきカウンターという側面があったんじゃないだろうか。結婚は恋愛のゴールではなく生活の一形態としての契約関係である、という斬新な切り口から、他人の持論へのもどかしい気分を代弁してくれたのだ。

今回紹介する『1122』もまた、結婚、ひいては夫婦のあり方に切り込む作品だ。しかも、『逃げ恥』よりもエグい形で

1122(1) (モーニング KC)
作者:渡辺 ペコ
出版社:講談社
発売日:2017-05-23
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私の夫には、私公認の恋人(既婚・子持ち)がいる

あらすじ。

結婚して7年目の夫婦の、いちこさんと、おとやん。 いちこさんにとっておとやんは、夫で、家族で、ズッ友で、相棒で、理解者で、一番信頼してる人。なんでも話しあえる人。おとやんにとってもいちこさんは、賢くて、まっすぐで、愉快で、一緒に暮らせて楽しくて、結婚できて幸せだと言える人だ。 だけど、おとやんには「恋人」(既婚・子持ち)がいる。しかも、いちこさん公認で…。

『1122』はそんな特殊な生活を送る夫婦の話だ。夫のおとやんは浮気、不貞行為をはたらいているのだけれど、妻のいちこさんは、それを認めている。いわく、”うちで生活、そとで恋愛”という合理的な生活形態。作中では「婚外恋愛許可制」と表現されている。

結婚は一種の契約だ。幸せな生活のための合理的なシステムだ。だったら徹底的にシステムとして向き合って、改善を繰り返すことでよいものになるはずだ、というのが『逃げ恥』だった。 『1122』はそこからさらに一歩進んで、不倫さえもシステムに組み込むことで、更に幸福な生活を追求することを選んだ夫婦の話と言えるかもしれない。

とはいえ、一歩進んだリスクもやっぱりある。家庭内で恋愛の幸せオーラを隠さないおとやんに対するいちこさん(こちらは“恋人”がいない)の感情のザワつきだったり、恋人の夫の存在であったり。『1122』はそんなリスクをはらみながらも、”いい夫婦”として結婚生活を営むふたりの感情の動きが丁寧に描かれている。

彼と彼女のあり方が良いとか悪いとかではなくて、生活がリアリティある形で描かれていることがすごいと思う。『1122』のリアリティは、彼ら彼女らと同じ状況に置かれたとき、果たして自分はどうするか? どう思うか? という問いを読者に突きつける。フィクションだけど他人事だと思えなくなる。

結婚生活、夫婦関係の維持に大事なのは、愛やお金や世間体とは限らない。『1122』には、自分にとっては何が一番大事なのかを改めて考えさせる、問いかけの力がある。 現在、既刊1巻。心当たりがある人に、ぜひ手に取ってほしい作品です。

1122(1) (モーニング KC)
作者:渡辺 ペコ
出版社:講談社
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