『SHOE DOG』を読んでいるのは、どういう人たちなのか?

古幡 瑞穂2017年11月29日 印刷向け表示
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SHOE DOG(シュードッグ)
作者:フィル・ナイト 翻訳:大田黒 奉之
出版社:東洋経済新報社
発売日:2017-10-27
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今、『SHOE DOG』が売れています。なんと発売1ヶ月で13万部突破だとか。翻訳本としては珍しいくらいの売行きです。この本は、ナイキの創業者が自ら語る創業秘話…といっても実はこの「創業者自らが語る創業秘話」的な書籍はノンフィクション界には珍しくありません。その中でなぜこれが売れたのか、、データからその実態に迫りたいと思います。

まずは発売からこれまでの売行きを見ていきましょう。(オープンネットワークWIN調べ)

多くの書店さんに商品が並んだのが10/27、28あたり。発売からいきなりいい動きでしたが、ネット等でじわじわ拡散されいくつかの山が出来ていきます。大きく動いたのは11/17。実はこの前の日の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)「本屋で読書芸人」で取り上げられた事がこの売上の山を作りました。ちなみに選んだのは東野幸治さん、とのこと。

では読者層はどんな方々でしょうか?

80%が男性。ビジネス書、経営者の本ということで、40代50代が多めですが、それでもここまで若い男性層が購入しているのは珍しいことです。ファッション、文化といったことに興味がある方、スポーツに興味のある方などが幅広く読者として取り込まれているようです。普通、ビジネス書やノンフィクションを手に取る習慣がない方にも広くリーチしたこと、テレビ、それもバラエティで取り上げられた事が売上加速の要因になっていそうです。

続いて、併読本を見ていきましょう。表は『SHOE DOG』読者が過去2年間で購入したものランキングです。なんと1位はダントツで『陸王』。

これを見て「あのドラマの影響?」と思った方も多いかと思うのですが、実はドラマ開始後に期間を絞ると『陸王』はランキング10位以内から外れてしまうのです。この『陸王』併読者は『陸王』を発売すぐに読んでいて、その後『SHOE DOG』を読んだ方々だということがわかりました。陸上好き、シューズ好き、企業頑張る系好き、どの辺の層かが気になります。2位に同じ東洋経済の『LIFE SHIFT』が入ってくるのも面白いところ。HONZもそうですが、東洋経済オンラインなどネット上で本を選ぶ場所が決まっていて、そこで紹介された本はまず手にとってみる、という方は増えていそうです。

  銘柄名 著訳者名  出版社
 1  『陸王』   池井戸 潤 集英社
2 『LIFE SHIFT』  リンダ・グラットン 東洋経済新報社
3 『蜂蜜と遠雷』  恩田 陸 幻冬舎
3 『やり抜く力』  アンジェラ・ダックワース ダイヤモンド社
5 『応仁の乱』  呉座 勇一 中央公論新社
6 『言ってはいけない』  橘 玲  新潮社
7 『アキラとあきら』  池井戸 潤 徳間書店
8 『サピエンス全史』  ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社
9 『未来の年表』  河合 雅司 講談社
9 『騎士団長殺し』  村上 春樹 新潮社

『蜜蜂と遠雷』や『騎士団長殺し』といった今年を代表する小説がランキングに入ってきたのも面白いところ、ビジネス書には珍しく、併読本には小説が多く並んでいます。特に最近の併読本はアメトーーク影響からか、番組内で紹介された本が多めです。

続いて、注目の併読本をいくつか紹介していきましょう。

あの同族企業はなぜすごい (日経プレミアシリーズ)
作者:中沢 康彦
出版社:日本経済新聞出版社
発売日:2017-11-10
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企業ものの中でよく読まれているのがこちら。今春『あの会社はこうして潰れた』が売れましたが、同じ日経プレミアシリーズのタイトルです。お家騒動、身びいきなどの悪い印象もないわけでもありませんが、実はファミリーだからこその強さや経営の姿があるのだとか。星野リゾートや獺祭の話など身近な話題も多く興味がつきません。
 

ランナーズ 2018年 01 月号 [雑誌]
作者:
出版社:アールビーズ
発売日:2017-11-22

ビジネス誌と一緒に読んでいるという方が多かった中、『ランナーズ』の存在がキラリと光りました。さすが「ナイキ」。ランニング雑誌、ターザン、ナンバーといったスポーツ誌のランニング特集との併読が多く見られます。ナイキ自体はランニングシューズだけでなく、様々なスポーツのウェアを出していますが、ランナー人口考えてもここの反応が一番大きく出ています。
 

戦争調査会 幻の政府文書を読み解く (講談社現代新書)
作者:井上 寿一
出版社:講談社
発売日:2017-11-15
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幣原喜重郎内閣が敗戦直後に立ち上げた国家プロジェクト、戦争調査会の真相に迫ります。日本人自ら開戦や敗戦の原因を明らかにしようと取り組んでいたプロジェクトはGHQによって廃止を余儀なくされ、未完に終わります。プロジェクトは完成しなかったものの、そのために集められた膨大な資料や会議の議事録はそのまま残っているそうです。これを読み解くことは歴史の教訓を学ぶことそのものなのかもしれません。

レッド・プラトーン 14時間の死闘
作者:クリントン ロメシャ 翻訳:伏見 威蕃
出版社:早川書房
発売日:2017-10-18
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HONZでも次々にレビューされている話題の1冊はこちらにも登場。メイン読者は50代男性。『SHOE DOG』とそこが重なります。詳細は熱いレビューに譲りますが、まさに今年のベスト級ノンフィクション。平和について考えるためにも命について考えるためにも、世界情勢について考えるためにも読んでおきたい作品です。
 

90秒にかけた男 (日経プレミアシリーズ)
作者:高田 明
出版社:日本経済新聞出版社
発売日:2017-11-10
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タイトルだけ見て、『SHOE DOG』の併読本と聞けば、90秒何かをやっているアスリートの本ではないか、と思ってしまいますが、90秒にかけているのは「高田明」さん。そう、ジャパネットたかたの創業者です。カメラ店主だった高田さんがTV通販王としてお茶の間になじむまで、たった10年間。この急成長を支えた行動原理や考え方に迫る1冊です。

ドラマ「陸王」もそろそろクライマックスに突入。この『陸王』が注目されているタイミングで、『SHOE DOG』が発売されたのも何かの縁に思えてきます。靴作りの熱さに触れた人たちが、ナイキの創業物語に触れ、お正月の各種駅伝でランナーたちの足もとをチェックする、そんな流れになったら面白い事です。年末年始に向けどんな盛り上がりを見せていくのか楽しみでなりません。

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