『「おカネの天才」の育て方 一生おカネに困らないために、親が子供に伝えるべき「おカネの話」』 訳者あとがき by 関 美和

日経BP2018年01月17日 印刷向け表示
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「おカネの天才」の育て方 一生おカネに困らないために、親が子供に伝えるべき「おカネの話」
作者:ベス・コブリナー 翻訳:関 美和
出版社:日経BP社
発売日:2018-01-13
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金融業界にいたというのに、自分のカネ勘定となると恥ずかしいくらいにいい加減にやってきた。自分がドンブリ勘定なので、子供にも偉そうなことが言えない。私ほどひどくはなくても、子供とはおカネの話はしにくいし、おカネについて何をどう教えたらいいかわからないという親は多いのではないだろうか。

この本は、そんなダメ親でも、子供をおカネの天才にすることはできると教えてくれる。「おカネの天才」と言っても、たとえば株や不動産投資で大儲けするような投資のプロを育成しようという話ではない。自分のおカネに責任を持ち、身の丈にあった生活を送り、まさかの時のために蓄え、できるだけ賢くその蓄えを育てていけるように、小さな頃からいい習慣をつけようという、しごく当たり前の話だ。だが、この当たり前が意外に難しい。

著者によると、子供は大人が思うより幼いうちからおカネの概念を理解すると言う。そして、大人の言うことを聞いてくれる小さなうちから習慣をつけさせておく方が、大人になってから無理やり自制心を働かせようと努力するよりも、はるかに効率がいい。幼い時からおカネに関心を持たせることにはふたつの大きなメリットがある。

ひとつは「時間」。もうひとつは「複利」だ。時間と複利の相乗効果は、予想外の大きな違いをもたらす。少額でも10歳から貯蓄を始めるのと、30歳から貯蓄を始めるのとでは、20年間の違いがある。その20年間に複利でおカネが増え続けると、恐ろしいほどの差が生まれるというわけだ。

本書では、子供におカネに関するいい習慣をつけさせるためのコツを年齢別に分けている。各章で、就学前、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人と6段階に分類し、それぞれの年代に合ったアドバイスを与えてくれる。ただし、内容はアメリカのおカネの事情をもとにしていることに注意してほしい。

アメリカと日本の家計の事情は、ふたつの分野で大きく異なっている。ひとつは教育費。もうひとつは医療費だ。アメリカの大学の学費は、日本に比べると、ざっくり3倍から5倍高い。アイビーリーグの大学では年間500万円以上の学費がかかる。ほとんどの家庭は奨学金と学資ローンを組み合わせて大学の学費を賄う。その負担は親だけでなく子供にものしかかる。

一方、医療制度は州によって違い、日本に比べて医療費そのものも高いが、保険料も高い。保険が適用されない治療も多い。盲腸で入院しただけで数百万円も請求されたという話も聞く。アメリカでは自己破産の6割以上が、医療費の未払いが原因だと言われている。そんな背景を知ると、子供の頃からおカネを貯めなさいという説教がますますもっともに聞こえてくる。子供を将来アメリカの学校に行かせたい親たちには特に、本書のアドバイスは役立つだろう。

とはいえ、今どきの「自己責任」の世の中で、アメリカの事情は他人事ではない。おカネの知識があるかないかで、これからますます格差は開いていく。日本の子育て中のカップルやこれから社会に出る人には必須の知識が本書にはまとめられている。私のようないい年をした大人に役に立つアドバイスもある。たとえば、確定拠出型年金には今すぐ加入した方がいいこと。運用はある程度分散させた方がいいこと。株式はほかの資産クラスを長期的にはアウトパフォームすること。一般的には個別銘柄よりインデックスファンド(またはETF)の方が運用成績がいいこと。かならず運用手数料に気をつけること。すでに金融に明るい人には当たり前かもしれないが、そうでなければかならず知っておいた方がいいことばかりだ。

著者のベス・コブリナーは、パーソナルファイナイスの専門家としてオバマ大統領の金融教育諮問委員会のメンバーに選ばれた人物だ。本書『 「おカネの天才」の育て方 一生おカネに困らないために、親が子供に伝えるべき「おカネの話」 』はニューヨーク・タイムズのベストセラーになり、コブリナー氏自身もマスコミにたびたび登場して、いいおカネの習慣を早いうちから身につける重要性を説いている。

本書がご家族のおカネに関する会話のきっかけになれば幸いだ。

関 美和 翻訳家。杏林大学外国語学部准教授。電通、スミス・バーニー勤務の後、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA を取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経て、クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。主な翻訳書に、『ゼロ・トゥ・ワン』(ピーター・ティール、NHK出版)などがある。 
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