HONZ in APU③ ライブラリーをみれば、その大学の知性がわかる!!

首藤 淳哉2018年08月10日 印刷向け表示
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のっけから一言、かますことをお許しいただきたい。

ライブラリー(図書館)をみれば、その大学の知的レベルがわかる!!

お前ごときが知性を云々するなとか、早くも四方からのツッコミが聞こえてきそうだが、何を言われようがへっちゃらである。なにせここ別府は、アウェーではなくホーム。怖いものなしなのだ。

でもあながち的外れでもないだろう。実際、ライブラリーをみるだけで、その大学の雰囲気はかなりつかめるからだ。いつ行っても閑散としている学校と、利用者であふれている学校とでは、どちらのレベルが高いかは明らかだろう。

その点、立命館アジア太平洋大学の「APUライブラリー」は一目瞭然。もちろんレベルが高いことは言うまでもない。お邪魔したのは週末だったにもかかわらず学生たちの姿が目立つのに驚く。これが平日だったらいったいどれだけ活気にあふれていることだろう。

ロビーにはウィークリーの推薦図書が並べられている
学生による推薦コメント。伊坂さん、幸せ者だなぁ

もちろん出口学長のコーナーも!

ライブラリーを案内してくれるのは、「ALRCS(アークス)」のみなさん。ALRCS(Academic Learning Resource Core Staff)とは、「学習支援スタッフ」のこと。もちろん彼らも学生だ。 

インド出身と自己紹介した学生に、挨拶もそこそこに「ねえねえ、バーフバリ観た? もう観た??」と笑顔で迫る編集長の内藤順。初対面なのに距離、詰めすぎであろう。

「まだ観ていないです」との返答にガックリ肩を落とす内藤。だが考えてもみてほしい。「パセラでバーフバリの上映会やるよ!」との呼び掛けに喜び勇んで集まるような連中が人口約12万の別府市にはたしてどれだけいるか。フェルミ推定で概算してみるといい。いや待てよ? そもそもバーフバリを10回も観る内藤のような人間がインド13億人の中に何人いるのかというと、えーと、えーと……面倒くさ!

ライブラリーは古代の大陸「PANGAEA(パンゲア)」になぞらえて、目的ごとに7つのスペースに分けられている。とても機能的で使いやすそうだ。2階に上がると、思わず「おおー」と声が出た。真夏の暑さに負けじと生い茂った緑が目に飛び込んでくる。秋になるとこの山が燃え上がるような紅葉で染まるという。こんな環境で本が読めるなんてなんと幸せなことだろう!ちなみにこのライブラリーは、一般の人も利用できるそうだ。大分県在住者と高校生は無料とのこと。マジ、引っ越したい……。

さすが日本語と英語を公用語に「混ぜる教育」を実践しているだけあって、蔵書はジャンルを問わず洋書が目立つ。各国の新聞もずらりと揃っている。ちなみに国際学生に人気の新聞は、日本の中学生新聞だとか。なるほどねー。

これ全部、ちくま文庫。圧巻の棚にみんな大コーフン

ライブラリーには本だけでなく映像メディアを観ながら学べる部屋もある。学生に聞くと、仲良く映画を楽しむカップルも多いらしい。その部屋をのぞくと、ムスリムの女生徒がヘッドホンで熱心に映画を鑑賞していた。モニターに映っていたのは、『天使にラブ・ソングを』。ヒジャブをつけた女の子の背中越しに見えるシスター姿のウーピー・ゴールドバーグ。マルチカルチュラルなAPUを象徴する光景として、この先もずっと心に残りそうだ。

さあ、ライブラリーを堪能した後は、APUの学生のみなさんと一緒に、本のワークショップ開催である。 

APUライブラリーのロビーが即席のイベント会場に早変わりし、ワークショップがスタート。出口治明明学長とHONZ代表の成毛眞、副代表の東えりかが、内藤編集長の司会のもと、HONZでの活動や読書の方法論などについて語り合った……などと一応、通り一遍の説明を試みてみたが、実際のトークは脱線に次ぐ脱線で、先の読めない展開となった。

日頃ラジオで番組をつくっているのでよくわかるのだが、台本に書いてあることをなぞるのははっきり言って誰でも出来る。「トークの神髄とは、これすなわち雑談にあり」(俺の格言)で、用意していたパワポの資料などおかまいなしに出演者がしゃべりまくるこの展開は、ある意味、トークショーの正しい姿ともいえるのだ。

たとえば、質疑応答で、ある学生が「本の選び方」について尋ねたときのこと。成毛が「妄想力」について語り始めた。書店で見知らぬ本を手に取った時、そこで問われるのは妄想力だと。つまり、面白いかどうかもわからないのにその本を読もうと決め打ちできるのは、まったくゼロの地点から(読む前から)、本の中身をイメージする(妄想する)からである。本との出会いというのはその繰り返しなのだ。

成毛はさらに現代における妄想の大切さについて語り始め、その代表的な人物としてイーロン・マスクを挙げる。火星への移住のような一見、荒唐無稽な妄想でも、現代ではそれを実現可能にするテクノロジーがある、などと語りは止まらない。

すると、黙っていられなくなった出口学長も参戦。「連想と妄想は違うって、わかります?」と学生に問いかける。「連想は平凡やけど、妄想は違うんですよ」。なるほど、連想は前の発想をただ受け継いでいくだけだが、妄想は0から1を生み出すものだ。

ふたりはなかなかハイレベルな話をしている。というかこれは、これからの時代にますます求められる能力についての話ではないだろうか。

次々に繰り出される言葉の応酬と行き先が予測できない論理展開。ふと思ったのだが、これ、学生たち(特に日本語を学んでいる国際学生)にとって、とても良い授業になっているのではないだろうか。見るとみんな熱心に耳を傾けている。いま君たちは、まさに「談論風発」という日本語がどんなものか、実際に体験しているんだよ、言葉をぶつけあうことで思いもよらなかった意味が生成する現場に立ち会っているんだよ、と声をかけたくなった。

そんなことに思いを巡らせていると、成毛がいきなり「“妄想”ってさぁ、四字熟語で言い換えられるよね。誰かわかる人いる? えーと、じゃ刀根!」とまさかのムチャ振り。

急に振られた刀根明日香。しばし考えた後、ひねり出した答えは、
「……起承転結?」。
学生たちが誤った日本語を覚えてしまわないかと危惧するような答えをかましてくれた。さすがである。

成毛の答えは、「反実仮想」。創作でもっとも反実仮想力(妄想力)を問われるジャンルといえばSFである。だからイーロン・マスクやマーク・サッカーバーグのように妄想力に優れた人間はこぞってSFが好きだ。

成毛によれば、妄想力は国家にも当てはまり、いまそのトップランナーは中国であるという。だから今後、中国からは面白いイノベーションがどんどん生まれる可能性が大だ。中国の妄想力を示す証拠に、最近は中国発のSFがかなり面白くて……という話になったあたりで、ようやく成毛も気がついたらしい。

「あれ?きょうって、ノンフィクションの話だったよね? なんでこんな話になっちゃったんだろう……。(間あって)ま、いっか、みんな中国のSFを読め、ってことで!」 

まさかのオチ!吉本新喜劇であれば、全員ズッコケるところである。ということで、学生のみなさんには、日本語による雑談の妙と、上方大衆演芸の笑いの間(ま)を学んでいただいたところで、めでたくイベントはお開きーー!みなさんありがとうございました!!

結論は、ノンフィクションよりも「中国のSFを読め!」。そこで今回の推薦本は、現代中国SFのアンソロジー『折りたたみ北京』ケン・リュウほか(早川書房)である。みんな妄想力を鍛えよう! 

さあ、この後はいよいよ、別府ナイト観光である。みんな、後に続けーー!! 

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)
作者:郝 景芳 翻訳:中原 尚哉
出版社:早川書房
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