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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。栗下直也です。先週はお休みを頂き、一読者として楽しみました。

と書きたいところですが、旅先でメルマガを読み、「何じゃこれは!!!」と絶叫しておりました。代打を頼んだ土屋敦に「休みでもどうせ家でいつもどおり酒を飲んでいるのだからメルマガ書け」と罵られ、10月発売予定の『ノンフィクションはこれを読め』の原稿の一本が「校閲から内容がなさ過ぎると指摘が入った」と本人も知らないことを白日のもとにさらされました。代打を頼むと、後ろから刺される恐ろしいHONZ内の人間関係を垣間見た瞬間です。

とはいえ、概ね事実なので仕方がありません。家では飲んでいませんでしたが、旅先でいつも以上に飲んでいましたし、内容がなさ過ぎると突っ込まれた原稿は、『ノンこれ』用に元の原稿の文字数を削る際に「恐ろしいほど削る場所がない」と頭を悩ませた記憶があります。

通常は対象となる本の中身に触れた重要な箇所を残して、周辺を切れば整いますが、切る場所がない。本の中身と関係ないことばかり書いているので、切ると文章がつながらない。「今日も酔っ払って大変だった」という内容のエッセイが束ねられた本の書評に重要な箇所も、重要でない箇所もないと思うのですが、それを2000字も書いた私が馬鹿なのでしょうか。暇な方は、ぜひ、自己満足が炸裂した「内容がなさすぎる」レビューをサイト内で探してみてください。

とはいえ、これはシラフ状態の感想でありまして、先週、メルマガが配信されたのは休暇中の午後5時。前後不覚な泥酔地獄の時に読んだのですから、まともな反応はできません。ここまで隠していましたがHONZの3年間の活動の中で一、二を争う自信作だったのです。土屋敦が書いていたように、一応、文章を書いてお金をもらっている私としては職業人としての危機を感じました。

思わず、隣にいた同業者の妻に「俺の書評って内容ない?」と35歳の男にしては今思い出しても恥ずかしい、決して聞いてはいけないことを口に出してしまったのです。「そんなことないよ!」という返答を淡くも期待した哀れな夫に、妻は「ない。マジでない。薄っぺらいわ。最近、生え際まで薄くなってるし」と恐ろしいほど残酷な答えを返してきました。書評よりも生え際が気になって、それ以降、鏡をにらむ毎日です。職業人としての危機より家庭の危機が迫っている気がしますが、今週もメルマガスタートです。

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今週の「読むカモ!」今週のレビュー予定です(変更されることもあります)


『イマドキの動物ジャコウネコ』『裏山の奇人』 編集者の自腹ワンコイン広告

裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学)
作者:小松 貴
出版社:東海大学出版部
発売日:2014-08-06

はじまりはいつも研究所や大学の研究室といった仕事場に出向き、打合せをする。内容はほぼ執筆の依頼で、初対面である場合が多い。その際、私は事前 に相手の方について下調べをほとんどしない。他の人から聞いたイメージをもって話をすることを避けたいからだ。なので、お目にかかるときには不安と期待で ドキドキする。それは何度経験しても、相手がどんな方であろうとも同じで、ここで紹介するフィールドの生物学シリーズの著者についてもそうだった。

ところで私は創刊時から本企画に携わってきたが、そもそもこのシリーズは、私のボスIと著者との話からはじまったものだ。宣伝チラシには「研究者が 自身の体験談をふまえ、その楽しさ、苦労、醍醐味など研究者でしか得られない自然界やフィールドの魅力を伝えていくシリーズで、この本を読んで、自然とそ こに棲む生きものたちに興味をもち、将来、私たちの後継者となってくれることを期待します。(著者を代表して:松浦啓一/国立科学博物館)」とあり、若手 研究者を対象としている。

2009年11月にスタートし、5年が経過した現在14冊が刊行されている。クマにモグラ、サイチョウ、ハムシ、テングザル、腕足動物と多種多様な生きものが取りあげられ、今後もクマムシ、フジツボ、ムシコブなどが控えている。ちなみに売行きベスト3は『 孤独なバッタが群れるとき 』(前野ウルド浩太郎 著)、『 アリの巣をめぐる冒険 』(丸山宗利 著)、『 右利きのヘビ仮説 』(細 将貴 著)だ。

さて、ここからは最新刊2冊について一編集者の視点から、著者とのやりとりの一端を「フィールドの生物学の裏側」として紹介する。

まず、第13巻の『イマドキの動物ジャコウネコ』である。著者の中島啓裕先生は本企画対象のど真ん中の80年代生まれの研究者だ。東南・南アジアに 生息し、小型で、夜行性、肉食目でありながら、じつは果実食という謎の多い動物で、一般には麝香やコーヒーのコピ・ルアクの主として有名なこの生きものを 研究対象としている。中島先生とは別の本の著者から推薦いただいたのが縁で、執筆をお願いすることになった。

京都の大学研究室でのお会いしたときの印象は、クールでクレバーなイマドキの研究者像(若者)そのものだった。打合せでは当然研究の内容についても 話が及ぶわけなので、あまり的外れことを言って怪訝な顔をされるとマズいなと思った。ところが話をはじめると、その印象は一瞬で変わった。とても熱いハー トの持ち主で、おまけに大の本好きだとわかった。そこから話は盛り上がっていった。すでに何冊かバックナッバーを読んでいただきていて、全体の構成を提案 された。

また、こちらから執筆の要項を説明するなかで、いくつか細かい部分の質問をうけた。ここまで突っ込んだ話ができることは少なく、これは大いに期待で きると帰りの電車中でひとりごちた。イマドキではない?研究者がイマドキ?野生動物ジャコウネコについて語る内容については本書の中でお楽しみいただきた い。

つぎに第14巻の『裏山の奇人』である。専門書でありながら発売前にすでに話題になっていた本である。こんなことはこれまでに経験がない。もしかしたら先に挙げたベスト3を抜きさってしまうかもしれない、そんな勢いである。(※HONZのレビューは こちら

さて、この話題主、小松 貴先生であるが、 すでに別の本(『 アリの巣の生きもの図鑑 』) の共著者としてお付き合いがあった。ただし、正直なとこと何名かいる著者のなかでも引き立つ存在ではなかった。じつにおとなしいく、失礼ながら研究者とし て生き残っていけるのだろうかと思っていた。それからすこし時間がたち、2013年4月東京ビックサイトで開催されたニコニコ学会β「 むしむし生放送 」で再び小松先生にお会した。そこで4名の登壇者の一人として登場されたのだが、その服装はハリーポッタよろしく魔法使いの姿(変身)だった。それぞれ個性豊かな講演者のなかでも異彩をはなっていた。とりあえずつかみはOKというところだろか。

ただ肝心なのは講演である。しかし、そんな心配も後悔させるようなエンターテイメントに富んだ観客を終始飽きさせることのない講演だった。こちらが 本当の顔で、人見知りがちな姿はよそゆき?の顔なのかもしれないと、私は感じた。本当のところはまだわかないでいるが、本のなかでは奇人と称して自身のう ちに秘めた思いが描かれているので、ぜひ、そのあたりも注目してもらいたいたい。

なお、最新刊の刊行に合わせて小冊子「Discoveries in Fild Work Serie+(フィールドの生物学プラス)」を作成した。内容は本シリーズの著者の方々に、自身の推奨する自然科学書・人文書・文芸書に音楽を選んでいた だき、紹介したもので、研究者たちがどんな本に影響をうけ、どんな音楽を聴いてきたのかが窺える。とても興味深い内容になっている。都内他の大型書店店頭 (現在)で本とともに手にすることができるかと思うので、こちらにも期待してもらいたい。

東海大学出版部田志口克己
広島生まれ、カープファン。フィールドの生物学シリーズの他では、吉田 武先生の「新装版オイラーの贈物」「素数夜曲」など、おもに理工系の書籍を担当。

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