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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。メルマガ編集長の栗下直也です。恥ずかしながら帰ってまいりました。5週間ぶりに復帰です。まさか、麻木久仁子が1月6日のレビューに続く今年二本目のレビューを書く前に復帰するとは思いませんでした。とはいえ、先週まで編集長を務めた土屋敦がアナウンスしていたのでまさかでも何でもないんですが。このような電撃的とほど遠い、予定調和的な復帰を遂げられたのも皆様のご支持のおかげです。

解任時には両手の指で足りるほどのSNS上での大反響を頂き、個別にご丁寧に惜別のメールを送っていただいた方もいました。嬉しくて涙があふれてパソコンのモニーターを正視できませんでした。私が解任されたことで、「HONZメルマガはかつての品位を取り戻していく」なんて言われちゃったら、たまりませんね。もちろんメールは両手どころか片手どころかこの1通のみです。家宝として永久保存します。それにしても、こんなエログロナンセンスにしか興味がなさそうな男をわずか5週間で復帰させるなんて、HONZの人材層の厚さを天下に知らしめることになり、メンバーとしてはうれしい限りです。久々のメルマガですので文体が思い出せません。

さて、私事ですが、メルマガを書かなくて良いことにレビューもサボり、会社も休んで昨日まで九州旅行に出かけていました。「馬鹿野郎、個人ブログでもあるまいし、日記書いてるんじゃねー」とおしかりを受けそうですが、少しお待ちください。というのも、別にラーメンを食べに行ったわけでも、水炊きを食べに行ったわけでも温泉に行ったわけでもないのです。数年前に林真理子の小説『白蓮れんれん』を読んで以来、いつか行こうと思っていた、成金炭坑王の伊藤伝右衛門の邸宅を見に行ったのです。伊藤伝右衛門について詳しく知りたい方はwikipediaで調べてください。何を言いたいかって、本のパワーは凄いって話です。会社を休んで九州のよくわからないおっさんの昔の邸宅に、数年前まで全く興味がなかった人間を行く気にさせるなんて。ランドセルを背負っている頃は思いもしませんでした。それにしてもローマでもギリシャでもなく、福岡県飯塚市で歴史のロマンに胸をはずませるなんて、私、どんだけ安いんでしょうか。

とにかく、安い男と呼ばれても、数年来の夢が叶い大興奮。先週のメルマガで土屋敦に「変態」と罵られ、「さすがに変態はないのでは」と抗議しようか思っていたのですが、福岡県飯塚市で平日の昼間にベビーカーを押しながら鼻息を荒くして「おお、伝右衛門、おお、伝右衛門」とハアハアしている30男の姿は誰がどう見ても変態です。もちろんそれほど興奮していたので入り口近くの売店で伝右衛門グッズを買い漁ろうとしたのですが、悲劇的なことに入店するやいなや、左目の隅に伊藤伝右衛門関連の本がちらついてしまいました。もちろん、私の鼻息の荒さは新婚夫婦の初夜状態に達したことは言うまでもありません。amazonで取り扱っていなさそうな自費出版本も多く、そそられまくりです。その中の一冊の価格を見ると1200円。いい感じです。しかし、レジに持って行こうと奥付を見ると発行が2011年。咄嗟に、「なんだよ2011年の発行か」とひとり落胆して手に持っていた本を戻してしまいました。

我ながら謎な行動ですが、HONZの「レビューで取り扱う本は発行から3ヶ月以内」というルールが身に染みつきすぎてしまったようです。発行から3ヶ月を過ぎている本は純粋に楽しめないなんてもはや病気です。これはHONZのレビュアーが多く罹患している恐ろしい病です。全てレビューありきで考えてしまう職業病です。って職業ではないので単なる罹り損です。

結局、なぜか気落ちした私は本どころか何も買わずに伊藤伝右衛門邸を後にしたのですが、今となっては物凄く後悔しております。帰宅して、amazonを見ましたがやはり扱っていませんでした。ネットが普及しようが本との出会いはやはり一期一会ですので「欲しかったら買え」という鉄則を思い出した次第であります。みなさんもHONZメルマガを見て、欲しい本があったらクリックしちゃうほうがお金はかかりますが、精神面も考えれば健全です。そんなわけで今週のメルマガ、スタートです。

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今週の「読むカモ!」今週のレビュー予定です(変更されることもあります)


『弱くても勝てます』 編集者の自腹ワンコイン広告

弱小野球部のユニークな戦略と部員の素顔をどう描き、いかに読者に伝えるか。難度の高いこの命題に挑んだ「チーム・ヒデミネ」を野球にたとえるなら……。

1回表に、1番・巧打者「小説新潮」編集者葛岡がきわどい球を選んでフォア・ボール、2番・出版部単行本担当ベテラン今泉の鮮やかな三遊間ヒット、 3番・指名打者髙橋秀実が豪打のポテン・ヒットで満塁、知将青木秀憲監督(開成高校硬式野球部監督)が見守る中、スタンドの応援団やチア・リーダー、装画 北村ケンジさんや装幀デザインの只野さんたちの声援を受け、4番・助っ人のHONZ土屋敦さんが走者一掃のランニング・ホームラン(外野手のトンネルあ り)を打ち、いきなり先取点(=ベストセラー)! 

さらにたたみかけるように2月28日に文庫版を発売、あの桑田真澄さんをチームに迎え、鮮やかな「作品解説」で追加点を挙げました――。

さらにさらに、4月からはこの本を原作に TVドラマが始まります 。主演はジャニーズ「嵐」の二宮和也(教師・監督役)、ほかに「あまちゃん」で人気を博した福士蒼汰(野球部員役)、有村架純(マネージャー役)、薬師丸ひろ子(マネージャーの母親役)など豪華キャストが登場、新たな作品世界が広がります。

タイトルと文体の「ゆるさ」で読者を惹きつけ、一気にたたみかけて読ませる<ヒデミネ流>――これぞまさにドサクサに紛れて勝つ兵法!? 「開成高校野球部のセオリー」を地で行くような気がするのは、僕だけではないでしょう。

たとえば2012年10月、 HONZのレビュー で土屋敦さんは、「『弱くても勝てます』超進学校の異常なセオリー」と題して、こんな風に書いています。

いきなり言い訳になってしまうが、髙橋秀実作品の面白さをレビューで伝えるのは、実は難しい。構成は徹底的に練られ、すべての章、すべての文が有機 的につながっていて、その一部を取り出したところで、本全体が醸す、なんともいえない、そこはかとない面白さを伝えることができず、もどかしい気分にな る。なので、こう書くしかない。本書はとびきりに面白い。近年の作品の中では、一番ではないだろうか。……。

<守備練習はほとんどしない/グラウンドは「実験と研究」の場である/エラーで相手の油断を誘う/空振りOK、何が何でも思い切り振る/ピッチャーは甘い球を投げろ……そしてドサクサに紛れて勝つ!>

これが本書に紹介されている開成高校野球部の常識をくつがえすセオリーの一例ですが、<文庫版・解説>の桑田真澄さん(元読売巨人軍・元ピッツバーグ・パイレーツ投手)も一読して最初は驚いたようです。

しかし「野の球を追って」と題した解説文で、自らの体験と野球哲学に照らして、こんな風に語っています。

「最初はかなり奇抜な野球やなあと思って読み始めましたが、読み進めていくと、守備を捨てた練習や思いきりバットを振れという一見無謀に見える戦術も、僕の眼から見て合理性を感じました」

そしてこんな金言も……。

「野球には代打があり、リリーフがあります。でも自分自身の人生に代役はいないんです。だからこそ、若い世代は常識にしばられずに自分で考え、何事にも挑戦してほしいと思います」

球春到来、今年も春のセンバツ高校野球大会が始まります。

目からウロコが落ちる発想法を教えてくれる『弱くても勝てます』は、高校野球だけでなく、春風のように読者の心に新風を吹き込んでくれるでしょう。新潮文庫をポケットに、野球場に行きましょう。

寺島哲也  Terashima Tetsuya
新潮社・部長職編集委員。1979年、慶應義塾大学経済学部卒。文芸・ノンフィクション・海外翻訳などで多くのベストセラーを手がける。出版部次長、国際情報誌「 フォーサイト 」編集長、広告部長など経て現職。水泳レッスンの傑作ノンフィクション、髙橋秀実『 はい、泳げません 』や寮美千子『 空が青いから白をえらんだのです――奈良少年刑務所詩集 』文庫化などユニークな企画も多い。

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