おすすめ本レビュー

『アスペルガー症候群』

成毛 眞2009年10月26日
アスペルガー症候群 (幻冬舎新書 お 6-2)

作者:岡田 尊司
出版社:幻冬舎
発売日:2009-09-30
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以前、ある有名大学で自分のビジネス体験について講演した。具体的なエピソードのひとつとして、ビル・ゲイツがアスペルガー症候群である可能性があり、それゆえの常人ならざる仕事ぶりを紹介した。授業後のアンケートを読んでみたところ、ある学生が「自分の上司だった人の病気をあからさまにすることに気分が悪くなった」というのがあった。

なるほど、世の中には若くても狭量な人もいるのかと感心した。ボクの話し方が悪かったのかもしれないが、ビル・ゲイツの才能が尋常ではないことの説明であった。当時流行っていた「日本にもビル・ゲイツを誕生させよう」というバカバカしい教育プロジェクトに水を差したかったのだ。どんな努力をもってしても、ある種の才能を超えることはできないことを知るべきだと思ったのだ。その特殊な才能を得るためには、ある種の犠牲もあることを語りたかった。

本書はそのアスペルガー症候群について「不幸でもあり幸福でもある」実例を挙げて、症状・診断法・原因・改善法・特性を生かす方法などについて取り扱う本格的なガイドブックだ。

アルペルガー症候群は「シリコンバレー症候群」ともよばれ、シリコンバレーでは10%もの人が可能性を疑われている。つまりこの症候群は人生にとってデメリットばかりでないばかりか、とんでもないメリットになりうる特性ということにもなる。

本書で実名をあげて紹介されているのはビル・ゲイツ、チャールズ・ダーウィン、キルケゴール、ダ・ヴィンチ、ジョージ・ルーカス、本居宣長、チャーチル、アンデルセン、チューリング、アインシュタイン、ウィトゲンシュタイン、グラハム・ベル、西田幾太郎、ガンジーなど多様だ。全員がアスペルガー症候群だと断定しているわけではないのだが、タイプ別に分類するとそれを疑うことができるというものだ。

すべての身体的障害と精神的障害に共通するのは、それぞれの人の障害の程度が細かく異なるということだ。重大な心身障害を複合的に抱えているひともいるし、軽い障害だけでその障害以外は健常者よりも優れているという人もいる。線引が非常に難しいのだ。逆にいえばどこかに線を引いてはいけないのである。アスペルガー症候群はそのことを良く理解できる精神疾患だ。障害もある意味で個性であるという社会になることが望ましい。差別も区別も分離もするべきではない。その第一歩は案外この症候群などの理解から始まるのかもしれない。

ちなみにボクの手の指は薬指が人差し指より圧倒的に長い。このタイプの人はSタイプの脳を持っているという。Sタイプ脳とは男性に多く、システム化の能力が高いという。反対はEタイプ脳は女性に多く、共感する能力が高い。アルペルガー症候群を包括する概念である自閉症スペクトラムを持つひとは、Sタイプよりさらに極端なSタイプ脳であることが多いという。妊娠中に男性ホルモンのテストステロン濃度が高かったことを反映しているらしい。

そのためか、ボクは極端に授業や講演を聞くのが苦手だ。小中高大とほとんどの課程を独学で学んだと思われる。授業中はまったく授業と違うことをしていたのだ。一方通行の「お話」は退屈の極みなのだ。

時間の管理が下手だ。あらゆる種類の遅刻は子供のころから常習だった。その程度が普通ではなかった。人の目を見ることは非常に困難だ。いまだに朝起きて家族とすぐに目を合わすことができない。子供のことから食事やトイレに行くのも忘れるほどあることに熱中してしまうし、それが何カ月も持続してしまう。ネトゲなど本当に禁物だ。

すべてアスペルガー症候群の特徴に一致するのだが、おそらくボクは残念ながらというべきか、幸いというべきか、そうではないだろう。つまり程度の問題であり、ボクの場合はそのケがあるというだけだ。強迫性神経症についても同様で、外出時にふと不安がよぎることがあるのだが、本当に駅からもどって施錠を確かめたりはしない。ともあれ、強迫性神経症にしろ、アスペルガー症候群にしろ、きちんとした医学的な知識を得ておくことが重要だと思う。自分の衝動などに対処できるようになるからだ。