著者インタビュー

著者インタビュー『オタクの息子に悩んでます』岡田斗司夫氏(前編)by仲野徹

土屋 敦2012年11月8日
オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)

作者:岡田 斗司夫 FREEex
出版社:幻冬舎
発売日:2012-09-28
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仲野徹が「古典的名著、デール・カーネギーの『道は開ける』 に匹敵すると言っても過言ではない」と絶賛し、HONZでも大きな反響があったのがこのレビュー。本の売れ行きも好調で、何度も重版がかかっているという。

 

レビュアーの仲野は、かねてから朝日新聞連載の人生相談「悩みのるつぼ」における岡田斗司夫氏の回答の大ファンで、本書の元になった、大阪のNHK文化センターで開催された「岡田式『悩みのるつぼ』実践講座~悩みは解決させるな!?」にも参加したという。そして、とうとう、大阪から東京まで出張ってきた仲野徹による、岡田斗司夫氏へのインタビューが実現したのである。話が弾みすぎて、終始笑いっぱなしのインタビュー。どこから紹介していいのか迷うところだが、まずはその第一弾、「愛」にこだわる仲野徹が岡田氏に迫ります!

 

最後に愛をふりかける

 

 

仲野:(相談に対して)一個一個、回答しながらこういう論理を身につけていかれて……。

 

岡田:そうです、はい。

 

仲野:人生相談を始められてから、性格、変わったとか、そんなことないですか?

 

岡田:変わりました。変わりました。

 

仲野:やっぱりそうですか。

 

岡田:ほんとに、こんなふうにものを考えなかったですもの。特に本の中に「愛をふりかける」ってあったじゃないですか?

 

仲野:はい。

 

岡田:あれ、最後のひと振りなんですよ。毎回毎回、愛のない回答を書いて、僕が身内の、FREEexっていう組織の中であげていると、愛がないってリテークがきて。

 

仲野:あぁ、みんな言って来るんですか。

 

岡田:そうです。で、最後の何行かで愛をふりかけるわけですよ。これ、どうやって愛をいれようかと……毎回毎回(笑)

 

仲野:もともと愛にあふれるタイプではなかったんですか?

 

岡田:いや、全然! 頭がよくて論理的な、これしかないだろうって、上から目線の回答を書くタイプなんですよ。

 

仲野車谷長吉さんみたいなカンジの、がまんしろとかそういう・・・

 

岡田:いえ、上野千鶴子先生タイプ。

 

仲野:あぁ、理屈で……

 

岡田:はい。で、新聞で読んだら、上野先生のがもう嫌で嫌で。お前だけ、いい気分になってんじゃねえよって(爆笑)

 

4週間で空っぽに?

 

仲野:でも講演のときにですね、かなり序盤で愛が大事とおっしゃってたから、私は愛がまず真っ先にあって、そこから……

 

岡田:いや、あれは、あのときは、ちょうど「るつぼ」の回答を書いた三日後ぐらいだったんです。

 

仲野:まだ愛にあふれてるとき?

 

岡田:愛にあふれてるっていうか、書き終わって、ああ、やっぱり最後に愛をふりかけないとダメなんだと、思っているときで。ところが次の原稿が1ヵ月先じゃないですか、だいたい愛はなくなってるんです。

 

仲野:4週間経ったら愛は……。

 

岡田:空っぽです(笑)、4週間経ったときは、もうすでに上から目線。「こんなのはこうだよこうだよ、なんでわかんねえんだよ」って。でもそのまま一度回答を書くと憑きものが落ちるんですね。おもしろいもんで。

 

仲野:愛が湧いてくる?

 

岡田:湧いてくるっていうか、まず、上から目線がなくなるんですよ、書き終わったところで。気が済むんです。で、そのまま一晩置いておく。すると、昨日の俺こんなん書いたけどやっぱこれじゃ「いけすかん奴」だよ、これを新聞の読者が読んだらどう思うだろう、っていうふうに考える。

 

仲野:質問者に対して答えるんじゃなくて背後にいる十万人の読者に向かって書く、っておっしゃってましたよね。やっぱ「嫌われたら嫌や」という気持ちが……。

 

岡田:ありますあります。嫌われたら嫌だというのもありますし、朝日新聞は、僕が連載を持っている全メディアの中でもっともメジャーなものなんで、「ここでいい奴に思われなかったらどうすんだよ!」って(笑)。「伊集院光戦略」って呼んでるんですけど、伊集院光はラジオでえげつないこと言って、テレビでは好かれることを言ってるそうなんですよ。それを聞いて、「人間こうでなきゃいかんよ」(笑)。

 

仲野:なるほど、すごく戦略的ですね。

 

仮想敵は「普通の人生相談」

岡田:いや、それは今になって、自分で上から俯瞰で眺めて言ってるから戦略的に聞こえるだけで、実際に回答に取り組んでいる最中はまたちょっと違う。たとえばある悩み。16歳の女の子が年上の人ばっかり好きになりますってやつなんですけども、それに対して、皆が言いそうなことがもうわかるんですよね。「そんなの本気じゃないよ」とか「相手の男は……」とか「恋愛に年齢は関係ないんだから」とか「若いころはなんでも……」とか。そういう、わかったようなツラが嫌でしょうがないです。仮想敵はこれなんですよ。仮想敵は「普通の人生相談」です。相談者の女の子は、まわりにそういうことはきっとさんざん言われている。だから、彼女の味方になって、そういう「普通の回答」をへこませつつ、彼女のやる気をかき立てるにはどうすればいいのか、っていうふうに考えるわけなんですよ。まず「彼女はそれまでどんなことを言われてきたんだろうか」と考えていると徐々に彼女の側に立つことができる、ってことですかね。

実は、あの講演のときに「やっぱ愛が」って言ってたのは、講演やる前に最初の6〜7回分の自分の回答を読んだらまったく愛がなかったからなんですよね。ただ単に分解して回答して、「はい、これで良し!」っていう手際のいい職人仕事をしてるみたい。で、そんときに講演でテンパってたので、「こういう回答はいかんですよ!」みたいな感じで始めたから、講演では最初から全開で「愛でいきましょう」っていうことに。

 

仲野:講演の一番初めのほうで、「同じ温度の風呂に入る」というのをすごく強調しておられたので、これは愛の人かなあと思ったんですけど。

 

岡田:あれはねえ、自分がやってるSNSの中で誰かが悩んでたら、みんな、その悩みを共有するようにそうやって回答してるんで。で、そのSNSで、僕のファンの人たちとか、僕の部下の人たちに対して「みんな同じ温度の風呂に入りやがらない」と思っている。彼らが怒って答えるもんだから「まず同じ温度の風呂だろう」って言ってる。

 

仲野:同じ温度の風呂という言い方がすごく良かったんですけどね。

 

岡田:ですけどね(笑)。

 

背後にいる十万人に対する答えを出す

 

仲野:私、中島らも頼藤(和寛)先生の人生相談がすごく好きやったんです。けど、おもしろかったですけど、ときどき、すごく突き放しますよね。岡田さんは突き放すことがない……まあたまにありますけど」

 

岡田:あります(笑)、でもやっぱね、その背後にいる同じような悩みを持った十万人に対しての、聞いたこともないような、実用的な回答を出したいってことだけははっきりしてるんですね。なので、読んでるうちに「そうだよ、俺が悩んでたのはこれだよ!」ってその人が再発見できるようなことをやりたいわけじゃないですか。その人がまったく思いつかないことじゃなくて、心の底で考えていたんだけども、「それはなしだろな」って思ったものを出していって、「そこ、気が付いてるよね」っていうふうにポンと言っちゃう。本の冒頭に使った「お父さんが嫌いです」っていう相談でも、相談した女の子は、お母さんが変だっていうのは、絶対どこかで気が付いてるはずなんですよ。それをどうやって、浮かび上がらせるか。ただ、母さんを嫌いにしてしまったら、「お父さんも嫌いでお母さんも嫌い」となって、よくないので……。

 

仲野:そりゃ彼女だって自分でも怖いんでしょうね、そうなるのが。

 

岡田:だから自分で封をしてるだけなんですよ。なので新聞に投書するときにあんな微妙な書き方になっちゃうんです。お父さんを徹底的に否定する。それだけだったら投書するはずがないですよ。「お父さんが嫌いです。でも……」となる。「でも」の理由は何かって言うと、本当に自分の心の中を暴いちゃったら、「お母さんも嫌いだ」っていうのが浮かびあがってしまう。で、それを浮かび上がらせて終わりだったらどうしようもないから、どうすんのかっていうと「あなたはもう十分に強いんだからお母さんを助けましょう」っていうゴール見せないと、やり場がないんですよ。

 

仲野:(回答が)極めて論理的ですよね。論理的で愛がある。なかなか難しいですよね。

 

岡田:論理的でないと答えられないというか、そうでないと自分の信念とか答えちゃいますよね。自分の信念を答えると、普通の人生相談になっちゃうから、その人が人生の他の悩みに関しても応用可能な範囲で答えようと思って。そうなると……。

 

仲野:納得できないですよね。論理的でないと。

 

岡田:でも論理的だけだったら言いくるめられたみたいになっちゃうし、「なんでこれに気が付かなかったんだ、馬鹿だ私」ってなっちゃいますよね。そうじゃなくて、なんか「あんたのことを真剣に心配してるよ」ってメッセージさえ伝わったら、あとはトンチンカンでも大丈夫。子どものころ、おじさんとかおばさんからよくされる助言で、言ってることはトンチンカンなんだけど心配してくれていることがわかるからほっとする、みたいなことあるじゃん。で、けっこう中学とか高校になっても、そんときの言葉にすがってた思い出があるんで、とりあえず真剣に心配している、というニュアンスだけは伝えるぞって思います。

 

紙面一面丸々よこせ!

 

仲野:われわれが子供のころには大阪で融紅鸞さんの人生相談が。

 

岡田:えっ、知らない。

 

仲野:ご存じないですか、夫婦仲が悪いと言われると「とりあえずあんさん別れなはれ」って。

 

岡田:ああ、あれですか。「へーへー」ってやつでしょ。

 

仲野:そうそうそう、大阪ではずいぶん有名やったんです。「とりあえず別れなはれ」って。あれはカタルシスなんでしょうな。

 

岡田:あれは、「別れなはれ」って言われて「ええっ」って反論するところで、対話的な人生相談を作るという、占い師的な手法だと思いますけど。

 

仲野:占い師ですか、本には「劇薬」って書いてありましたね。あれは何回も通用しないですか?

 

岡田:いや、あれは本人を前にやってるとできるんですけど、僕は相談文しかなくて。

 

仲野:ああなるほど、あれはラジオでしたから。

 

岡田:おまけに文字数の制限もありますから。朝日新聞が紙面をこの三倍くれたら、絶対もっと書けるんです。他のコーナー見たら、つまんねえのがいっぱい載りやがって、一面丸々よこせ! とかって(笑)

 

仲野:じゃあ4週間に1回ですから。4回に分けて4倍書いてもろて他の回答者に辞めてもらうってのは?

 

岡田:ひどい(笑)。だからほんとにね、3倍ぐらい書くんですよ。で、これを2倍ぐらいに収めてさらに5行あふれに抑えて、そこからぴったりの行数に収めるというのをやる。編集の方がいつも「今回もぴったりでした」って言うから、どうもぴったりに書いてないらしいんですよ、他の3人は。「なんで?」って(笑)。

 

百人組手?

 

仲野:私は岡田さんが「人生相談が天職ではないか」とおっしゃっていたのに、ちょっと感銘をうけてですね。

 

岡田:自分でもそう思いますね。こんなに上手いやついないんじゃないかって(笑)

 

仲野:そう思います?

 

岡田:思います。他の仕事ってのは全部これをするためのパーツに過ぎない。

 

仲野:そこまで?(笑)

 

岡田:はい、完成品としての岡田斗司夫は、とりあえず54歳の今は人生相談の性能がもっとも高いから、はやくもうみなさんもっとこれを使ってほしいと(笑)。

 

仲野:4週間にいっぺんじゃ少ないんじゃないですか。

 

岡田:いやもう毎日3人ぐらいに答えていて、腕が落ちないようにして4週間に1回の公式試合に出るぐらい。

 

仲野:日々筋トレがすごかったりする。

 

岡田:やってると一番いいんです。さっきも土屋さんで筋トレさせていただきましたんで(実は、HONZ土屋敦はこっそり岡田斗司夫に人生相談をしていた!)。

 

岡田:これを朝日新聞の講演でもやったんですよ。そのときは、会場にいる人にポストイットに相談を書いてもらって。それをばーっと貼って片っ端から答えるというのをやったんですけども、それもやっぱり楽しいんですよ。「悩みのるつぼ」は1週間ぐらいかけた、吟味した答えなんですけれども、その場で答えるのもめっちゃ楽しいんですよ。僕、戦闘思考力って呼んでるんですけど、その場で聞かれて答える力って使う筋肉が違うんですよね。

 

仲野:ほお、頭の使う場所違いますか?

 

岡田:はい、そういうのもやりたいんですよ。

 

仲野:将棋の百人指しと名人戦みたいなもんですかね。

 

岡田:百人組み手に近いですね『空手バカ一代』とかに出てくる。次から次と現れて、それに答えて、で前のやつに戻っちゃいけないんですよ。「しまった! もっとこう答えたらよかった」となっても、どんどん次から次にやっていく。すると、初めて聞いている人は、「思考パターンが分解されて教えられる」というこの本の教え方ではなくて、頭の中に水路ができるんですよね。すごくいいものが伝わるから、その場で人生相談に答えていって、それを10人、20人って繰り返すの、好きなんですけど。

 

仲野:それってみんながいるところでばーっとおっしゃっていかれるわけですか。

 

岡田:はい、そうです。

 

仲野:本に載っていた「11個のツール」を使って答えていくんじゃなくて、まず直観的な答えがあって、その直観的な答えをポンポンポンと言っていかれるというふうな感じに……。

 

岡田:そうですね、まず答えを言ってから、なんでまず自分はそう考えちゃったのだろうっていうのを、「11個のツール」を使ってざーっと考えたり、どう説明をすればいいんだろうって考えたりする。

 

仲野:じゃやっぱり日々筋トレを積みながら、いろんな筋肉を使いながら。

 

岡田:でもそれ、ものすごい疲れるから月に2回ぐらいですね。

 

仲野:月に2回もですか!

 

岡田:いや、それぐらいやりたいなあって。そんな仕事こないかなあー。

 

仲野:大阪での講座のときも、一人か二人で人生相談受けておられましたけど、みんなけっこう手を挙げられますよね。

 

岡田:でも手を挙げる方式より、ポストイットに書いてもらって貼るほうが、悩みを分類できるんですよ。ポジショニングだけ書いて。毎回違うポジショニングマップを書くんですけども、縦軸に「私の悩み」「他人をこうしたいという悩み」、横軸に「つらい悩み」「思い悩んでいる悩み」みたいに、適当にポジショニングマップを使ってそのポストイットを分けていくんです。こうやって分解しているとなんか軸が見えるから、軸書いて、そうやって固まりで見ると、みんな急に思いついたりするんですよ。

参加している全員が、実はこの問題群は同じカテゴリーに入ってるんだって思うと頭の中がすーっと整理される。それ見るのが快感なんですよ。「うわっ!君らもわかるよね、このカテゴリーの中で共通のものがあるって。これは親子、これは金、でも全部同じだよ、自分がこうなりたいという悩みだよ」ってなったら、うわーって、分かってきて、それで、1個か2個答えていくと、その応用で、もうそれぞれの人ができるようになるから全部答えなくていい。

 

仲野:視点を変えてちょっと下がって見たら、似たやつがいっぱい、うようよおる、ということなんですか。やっぱりそれ、名人の域に達してきてますよね。

 

 

他の三人はこれがなくても食っていける人ですけど(笑)

 

 

岡田:「悩みのるつぼ」って僕にすればほんのちょっと背伸びしてるんですよ。で、このほんのちょっとの背伸びが自分としては気持ちがいい。

 

仲野:背伸びってどういう意味ですか? 高さが違うというより、ベクトルが違うというような、向きが違う感じですか?

 

岡田:普段だったらここまで実は考えないよなってところまで、ほんのちょっと深く考えるんです。だから回答するときも、自分が普段答えるより、ほんのちょっと優しい言葉を使う。お客さんがいるものだし、あと面と向かっていたら、笑いながら言ったりして、ニュアンスが伝わるじゃないですか。

 

仲野:やっぱり書くのは大分違うんでしょうなぁ。

 

岡田:新聞の活字で見たらすごく冷たく聞こえるだろうから、ちょっと気を付ける。だからほんのちょっと背伸びしてるんですよ。テレビに出るときってヘアセットされたり、メイクされたりするじゃないですか。あれ、僕、いやだなあと思ってたんですけど、あれをやらないと見るに堪えないんですよね。それと一緒で、ほんのちょっとメイクしてるんですよ。メイクしてヘアセットしている。見るに堪えるものにするのはお客さんに対する礼儀だから。

 

仲野:うーん、やっぱり愛とサービス精神がすごいですよね、親切心というか。

 

岡田:だってそれぐらいしか他の三人に比べて売りがないです。他の三人はこれがなくても食っていける人ですけど(笑)。

 

なるなる詐欺

 

 

仲野:今までで、失敗したなって答えあります? あとご自分で一番好きな、「決まった!」っていう回答とか。

 

岡田:後半になればなるほど「好き率」が高くて、前半は「好きじゃない率」が高いです。

 

岡田:あとは自分なりの好きなフレーズが出たら。幸せとは「不幸の回避」ではなく、「乗り越えるのが楽しい不幸」とか、そういうフレーズとかが出てきた回なんかは、自分でもラッキー、いいこと言ったよ、もうこれはカレンダーかなんかに刷ってくれって(笑)。

 

仲野:(爆笑)岡田斗司夫の人生相談カレンダー、売れるんじゃないですかね。

 

岡田:いや、売れない(笑)。

 

仲野:わたしはあれが好きでしたけど。「なるなる詐欺」が。

 

岡田:あれもねえ楽しかったです、あの言葉を思いついた瞬間に「勝った」と思いましたよ。

 

仲野:あれなんでしたっけ、漫画家でしたっけ?

 

岡田:漫画家です。「孫が漫画家になりたいって言ってます」「おばあちゃん『なるなる詐欺』に騙されてますよ」

 

仲野:あれは応用範囲広いですよねぇ。

 

岡田:あの言葉はすっごい楽しかったですよ。

 

仲野:あれこそね、やっぱ「御教訓カレンダー」みたいなのにあればいいかなあと。

 

岡田:あれはツイッターでもすごい広まりましたから。「なるなる詐欺」って言葉聞いただけでなんとなくみんなわかって。

 

仲野:わかりますよね。

 

岡田:「なるなる詐欺」のツイートを見たら、みんな「俺もなるなる詐欺だ」、「俺、今真っ最中」とかいうのが。楽しいですよね。

 

勝てたのに負けた試合はない

 

仲野:失敗はないですか、失敗というか、後から見てこれはちょっと悪かったなあとかいうのは。

 

岡田:やっぱり理屈だけで答えちゃった回はだいたい失敗です。でも、それも今から考えてもっとマシなものが出せるかっていうとその最後の「ひとふりかけの愛」みたいなものがあるかないかぐらいですから、本質はそんなに変わらないですよね。だから、失敗した試合ありますかって言われても、負けるべくして負けた試合はあるけど、勝てたのに負けた試合はないですね。

 

仲野:「野村(克也)と一緒ですね、「負けに不思議の負けなし」というやつ。

 

岡田:そうですそうです。そこまでしかないから、ここまでしか答えられないということと、あと僕がいつも思うのは、上野千鶴子でもここまでは無理だという……。あれよりマシだ(笑)。

 

仲野:上野千鶴子さん大人気ですね(笑)。

 

岡田:内田樹先生を連れてきたら、これよりいい答えが出るかも、とはときどき思いますけどね。あと、全盛期の橋本治さんだったらもうちょっといいの振り出してきたかなあとか。ただあの人たちだったら、この文字数では無理だろうと思いますね、橋本さんも内田先生も文字をふんだんに使って、IQ110以上の読者対象で、限定的の兵器なんです。汎用性が高い兵器じゃないですね。なのでこの戦場では俺が一番使い勝手があってリーズナブルだよ、と。

 

仲野論理と理屈の違いというもんかもわからへんですね。文章が長くてもこうきちっと組み立てていくのが論理で、理屈はちょっと情に訴える。それこそ愛情をふりかけたりとかアジテートしたりというふうな。

 

岡田:橋本治のほうが理屈っぽいんです、で、内田先生のほうが論理立ててます。内田先生の場合、その結果文字数がかかって、橋本さんの場合はそこに書いてる人間の好き嫌いが微妙に見えるから、文学性が高くなっちゃうんです。文章として明らかにおもしろくなるんですけれども、やっぱり長くなっちゃう。もっと僕に文字数くれたら、とかいいながらも、今の文字数がたぶん僕のベスト戦略なんだろうな……。って、ああ悔しい(笑)。

 

後編に続きます! 

 

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