おすすめ本レビュー

みうらじゅん『ムカエマの世界』(ちくま文庫)

東 えりか2011年3月10日
ムカエマの世界 (ちくま文庫) ムカエマの世界 (ちくま文庫)
(2011/02/08)
みうら じゅん

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私たちの世代は、全共闘から一回り下で、共通一時試験はまだなく国立大学が一期校、二期校と2度受験できた時代だ。思えば遠くに来たものだ、と感慨深いが、それといって特徴のない世代だとも言われてきた。「しらけ世代」だの「新人類」だのと呼ばれたが、人ごとのように聞いていた。校内暴力で学校の窓ガラスを全部割った世代を子供だなあ、と見ていたし、今ほどではないが就職難の時代でもあった。

50歳を過ぎ、ふとまわりを見渡してみると、私たちの世代で一番元気なのは「元祖・おたく」たちだと気が付いた。大塚秀志、岡田斗司夫などおたく系評論家を筆頭に、山田五郎、喜国雅彦、堀井健一郎などなどサブカル系の物書きを多く輩出している。

そして、その筆頭に上げられるのがみうらじゅんだ。彼は、もう何十年も自分のスタンスを崩すことがない。ヘタウマなマンガと脱力した文章は、誰も真似できない、今となってはチョモランマのように屹立した存在になってしまった。われらが世代のスターである。

新刊『ムカエマの世界』も彼独特のユーモアとペーソスが感じられる本だ。「ムカエマ」とは「ムカつく絵馬」のこと。神社の絵馬場で何気なく見てしまった願い事が「可愛い彼女が欲しいです、別にどんな女でもいいっス」と神さまにタメ口で書かれていたり、「武道館でライブがやりたい!今年こそバンドが組めますように!!」とどこまで遠い希望なんだ、というものがあったりで、ムカつきながらもみうらと一緒に楽しんでしまう。

「元気にフライドチキン食べられますように」

「いんせきがおちてきませんように」

「すべて上手になれますように」

いやはや、神さまも大変だ。

「ムカエマ」のような、みうらじゅんの造語はたくさん存在する。

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しかし、全部出版物にになっているところがすごいな。

本書には「ムカエマ」とともに、みうらが「これは変だ」と思ったものを激写した数々のネタが収録されている。何もしたくない日、昼間からビールを飲みながらへらへらと読むのにぴったりの一冊である。