『ソーシャル物理学 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』 解説 by 矢野 和男

草思社2015年09月17日 印刷向け表示
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最後に本書の世界をさらに深めるための書籍を、読書ガイドとして紹介する。

正直シグナル―― 非言語コミュニケーションの科学
作者:アレックス(サンディ)・ペントランド 翻訳:安西 祐一郎
出版社:みすず書房
発売日:2013-03-23
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ペントランド教授の前著である。『ソーシャル物理学』が都市や社会に多くの紙幅を割いているのに対し、『正直シグナル』では、より個人や少人数の振る舞いに多くの紙幅を割いて丁寧に解説している。本書と合わせて読むと、教授の思考の全貌が理解できる。
 

職場の人間科学: ビッグデータで考える「理想の働き方」
作者:ベン・ウェイバー 翻訳:千葉 敏生
出版社:早川書房
発売日:2014-05-23
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ペントランド教授の研究室で、ソシオメーターを使って精力的に研究を行った聡明な大学院生が著者のベン・ウェイバー氏である。学位取得、卒業後、ペントランド教授が会長、ウェイバー氏がCEOとしてコンサルティング会社「ソシオメトリックソリューションズ」が発足した(現在は、社名をヒューマナイズに変更した)。ウェイバー氏の著者では、コンサル会社のCEOとしてよりビジネス視点から、事例が紹介されている。
 

人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動
作者:マーク ブキャナン 翻訳:阪本 芳久
出版社:白揚社
発売日:2009-06
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「ネイチャー」誌の編集者なども務めた著者は「社会物理学」という言葉を広めた人である。一見個人の自由な意思決定で行動しているように見える人間を物理学的な視点を通して見ることで、見通しがよくなる事例を挙げている。サイエンスライターの書いたものにふさわしく楽しく読める。
 

歴史主義の貧困 (日経BPクラシックスシリーズ)
作者:カール・ポパー 翻訳:岩坂 彰
出版社:日経BP社
発売日:2013-09-19
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「社会物理学」の背後にある科学哲学の古典(原著1957年)。ポパーは「科学」と「非科学」を反証可能性によって区別したことで有名。本書ではさらに社会科学の方法として、マルクスに代表される歴史的必然に頼る方法を徹底批判し、社会を対象にしても科学の方法は一切揺るがず、物理学と変わらないことを論じきる。
 

ペントランド教授やウェイバー氏と共同研究の後、我々は、ハピネスやフロー状態の定量化やビッグデータから儲けを自動で導く人工知能などに研究を独自に発展させた。人の身体運動のデータが、ハピネスの定量化につながったり、最適な時間の使い方や運の定量化などにつながる意外性が大きな評判になった。

矢野 和男 株式会社日立製作所研究開発グループ・技師長。早稲田大学物理修士卒、工学博士。1984年に日立製作所入社。ウエアラブル技術を用いたビッグデータの収集・分析により世界的に注目を集め、Erice Prizなど国際的な賞を多数受賞。本書著者と、本書の中でもとり上げられている人間行動計測の共同研究を行った。東京工業大大学院連携教授。文部科学省情報科学技術委員。IEEEフェロー。著書に『データの見えざる手―ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(草思社)がある。
ソーシャル物理学: 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学
作者:アレックス・ペントランド 翻訳:小林啓倫
出版社:草思社
発売日:2015-09-17
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決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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『決定版-HONZが選んだノンフィクション』発売されました!