併せて読まれたこの一冊

今年最も本が売れた日は、いつだったのか? 2016.12〜2017.11

古幡 瑞穂2017年12月14日
ヲタクに恋は難しい (3)

作者:ふじた
出版社:一迅社
発売日:2016-12-23
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書店の店頭を「今年のベストセラー」が飾る時期となっています。この1年を彩った本の紹介は他所に譲るとして、今回は恒例(?)となった「今年一番売れた日はいつだった?」というテーマを取り上げたいと思います。

日販POS店のデータをもとに、2016年12月1日〜2017年11月30日まで1年間の日々の売上冊数(金額ではなく冊数です)を抽出しました。対象は書籍・雑誌全てです。
1年間の売上冊数の平均値を100%とし、それぞれの日について平均値との対比を行いました。その結果売上が大きかった日がこちら。

さらにその日に最も売れたものを抽出しています。 

日付 曜日 平均比 その日、もっとも売れたもの 1位商品の発売日
2016/12/24 169.1% ヲタクに恋は難しい 3 2016/12/23
2016/12/23 166.4% ヲタクに恋は難しい 3 2016/12/23
2016/12/17 153.9% 七つの大罪 24 2016/12/16
2016/12/10 149.1% 進撃の巨人 21 2016/12/9
2017/2/25 148.6% 騎士団長殺し 2017/2/24
2017/3/25 146.2% 思い、思われ、ふり、ふられ 5 2017/3/24
2016/12/29 144.8% 黒執事 24 2016/12/27
2016/12/3 144.6% ハイキュー!! 24 2016/12/2
2016/12/18 144.5% 七つの大罪 24 2016/12/16
2016/12/25 141.6% ヲタクに恋は難しい 3 2016/12/23

売れた日ランキング上位10位のうち、なんと8日が12月。土曜日が6日という結果でした。週末直前に発売されたビッグタイトルが最も売れたものになっていますが、ほぼコミック。その中で、村上春樹の『騎士団長殺し』唯一の書籍としてランクイン。この存在感、キラーコンテンツぶりが光りました。

しかしやはり12月の売上はすごい!クリスマスまでの3日はもちろん、その前の土曜日は全てランクインしてきました。せっかくなので、クリスマス時期〜年末年始の数字を見ておきたいと思います。

昨年は12/31に発売日が設定されましたが、その日も134.3%と好調。続く1/1も休日としている店舗が多い中にあっても95.7%となかなかの動きです。その好調ぶりは正月休み〜その後の連休まで継続しています。

今年の繁忙期はまさに今から!読者の皆さん、書店員の皆さん、気合いを入れて年末年始の本棚に向かい合いましょう!

2017年の正月といえば、HONZ読者にはおなじみの『サピエンス全史』が最も売れた時期でした。(*1/4放送のクローズアップ現代の放送影響)重厚な読み物はまさに年末年始向き作品です。
ところで、昨年の年末時期(12月~1月)に『サピエンス全史』を購入した方は、今どんな本を購入されているのでしょうか?読者の購入履歴から注目銘柄を紹介したいと思います。  

テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅

作者:児玉 博
出版社:小学館
発売日:2017-11-15
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先日逝去が報道された、元東芝社長の遺言といっていい1冊。崩壊のトリガーを引いた、戦犯とも言われている元経営者は何を告白しているのか。今最も注目を集めている企業ものです。

自動車会社が消える日 (文春新書)

作者:井上 久男
出版社:文藝春秋
発売日:2017-11-17
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今、自動車産業に100年に1度というパラダイムシフトが起こっているそうです。自動車はどんどんソフトウェアの塊に進化し、IT技術がものをいう世界になってきました。大手各社がどんなことを考えているのか、自動車会社は自動車会社として残っていけるのか。他産業としても目が離せないテーマです。

生命進化の偉大なる奇跡

作者:アリス ロバーツ 翻訳:斉藤 隆央
出版社:学研プラス
発売日:2017-10-31
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ヒト、生命関連の併読本が目立つ中、何人もの人が手に取っていたのがこちら。『人類20万年 遙かなる旅路』の著者の最新作。ヒトの発生という驚きに満ちたテーマについて語った生命進化の歴史がわかる1冊。

138億年宇宙の旅

作者:クリストフ ガルファール 翻訳:塩原 通緒
出版社:早川書房
発売日:2017-11-21
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著者は、ホーキングの元で物理学を学び、その後共著者もつとめたサイエンスライター。フランスのベストサイエンスブック・オブ・ザ・イヤーを受賞した注目の科学解説本!

年末年始は歴史、それも宇宙や人体といった長大なテーマに挑むにもいい時期です。お気に入りの1冊を見つけてください。

話は戻りますが、せっかくなので、売上が悪かった日の方もみておきましょう。上記と同じように平均比をとって、悪かった日上位5日を並べてみました。その日がどんな日だったか思い出すように、当日の朝日新聞のトップ記事も紹介しておきます。

日付 曜日 平均比 その日の朝日新聞一面記事
2017/5/16 70.9% 東芝半導体売却「中止を」 米WD、国際仲裁裁に 入札は続行
2017/9/12 70.5% 北朝鮮に石油、上限設定へ 全面禁輸から後退 制裁決議案
2017/10/16 69.7% 首相、アベノミクス前面 野党、増税や格差を批判 選挙サンデー、党首ら演説
2017/6/13 68.5% カフェイン過剰摂取注意 中毒、5年で101人搬送 学会調査
2017/11/14 66.6% 南シナ海、対中融和鮮明 ASEAN、「懸念」の表現なし 議長声明案

最も数字が良くなかったのは11/14。これまではこういった売上の悪い日は天気、天災が要因になっていることが多かったのですが、この日は全国的な雨。一部地域では激しく雨が降ったところもあったようです。天気で言うと、5/16以外はほぼ全国的に雨の区域が多かったようです。

ちなみに、6/13は上野動物園のパンダの赤ちゃん(シャンシャン)誕生の翌日でした。この日は数字が悪かったものの、それ以降はパンダの写真集や絵本が好調に動いています。

悪い要因が見えてこないのは気持ち悪いものですが、一方でそれであれば逆転は可能とも考えられます。事件があった日も、めでたい日も、もちろん面白い新刊が出た日も、考え事をしたい日も、本屋さんに足を運ぶことの多い年末年始、そして2018年になることを祈っています。