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大型犬ラブラドール・レトリバーと暮らす幸せ『犬(きみ)がいるから』

東 えりか2018年10月16日

 

犬(きみ)がいるから

作者:村井 理子
出版社:亜紀書房
発売日:2018-08-24
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 琵琶湖の畔に住む翻訳家の村井理子さんの家に、生後3か月の雄の黒いラブラドール・レトリバーがやってきたのは2017年の春のこと。1年前に長年連れ添った愛犬を亡くし、ペットを失う強烈な悲しみに再び耐えることはできないと思っていたのに、突然の出会いはやってきた。

ハリーと名付けられた子犬は、食いしん坊でやんちゃ。小学5年になる双子の息子たちとじゃれあううちに、あっという間に巨大化し、物凄い力の破壊王となった。

大型犬を飼ったことがある人なら覚えがあるだろう。スリッパや靴を手始めに、テーブルや椅子の足、ソファ、果てはベランダの床板まで齧る。そんな終わることのないイタズラに最初は怒っていても、なぜかだんだん寛容になっていく。そんな村井さんの姿は滑稽でもあり羨ましくもある。

子犬から成犬まではあっという間だ。村井さんはハリーのエッセイと写真でハリーの幼い姿を記録した。私がハリーを知ったのもブログからだ。ネットで知ってファンになった人は多いだろう。

琵琶湖で双子の男子と泳ぐハリー、食べ物をねだるハリー、村井さんに目を注ぎつつ眠りにつくハリー。大型犬って、どうしてこんなに人の気持ちがわかるのか、不思議だ。

だがハリーが村井家の一員として落ち着いたころ、村井さんに病気が発覚する。職業柄、在宅で仕事をしている村井さんに、完全に依存していたハリーは1か月の入院の間どうしていたのか。そして再会したとき、彼はどんな態度をとったのか。

私も、以前勤めていた先に雌の黒いラブラドールがいた。天寿を全うするまで一緒に仕事をしていたことを思い出す。頭が良いだけに人の気持ちがわかりすぎるくらいわかる、最高のパートナー犬だった。

ハリーはまだ1歳9か月。楽しいことがいっぱい待っているだろう。その姿をずっと見ていたいと思う。

(週刊新潮10月11日号より転載。写真は著者からお借りしました)

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